5話 『再誕する悪魔』
どれほどの時間が過ぎたのか。
Cは、重い瞼をゆっくりと押し上げた。
視界に映るのは、鉄屑の山。
油の臭い。
そして――すぐ傍で翅を休めるLの姿。
「……目覚めたか、バグ」
湿った声。
Cは顔を歪めながら、身体を起こそうとする。
その時、視界に入った。
Lの腕。
――削げている。
肉が無惨に抉れ、そこから透明な液が滲んでいた。
「……その腕、どうした」
低く問う。
「お前の治療に使った」
あっさりとした返答。
「なぁに、心配するな。これくらい、すぐ生える」
そう言って、翅で傷を隠す。
何事もなかったかのように。
Cは、言葉を失った。
胸の奥に、妙な感覚が残る。
「……そうか」
短く返す。
「すまない――」
礼を言いかけた、その時。
違和感。
喉の奥が、熱い。
「……っ」
息が詰まる。
内側から、何かが押し上げてくる。
「う……あ……」
嫌な感覚だ。
さっきと同じ。
いや――それ以上だ。
「が、あ……ッ!!」
弾けた。
骨が、軋む。
内側から突き破る。
角が伸びる。
肉を裂いて、鋭く。
牙が変わる。
丸みを帯びた歯が、裂くための形へと歪む。
戻っていたはずの身体が、
――否定される。
汗と血が混ざる。
青い皮膚が、再び禍々しく光る。
止まらない。
選べない。
“人”ではいられない。
――壊れる。
殻を突き破るように、
それは、現れる。
悪魔。
紛れもなく、
それが、今の自分だった。




