24.二対の花
「……私に振られたくて探してたってわけ?」
ついつい呆れたような声になってしまった。
アレンは小さく首を振って否定する。
「そうではない。叶うのなら添い遂げたい」
そう言い切るアレンの眼差しは熱がこもっている。
ああ、苦手だ――と心底思った。
こういう真剣な目を向けられると、こちらも真剣に決断しないといけなくなる。
逃げ出したい衝動を堪えながら、話の続きを促してみた。
「だが、無理強いしたいわけではないんだ。望みがないなら、断ってほしい」
「……断ったら諦めるってこと?」
「そう考えている」
アレンは真剣に言っている。
だが、そう簡単に決心できるものなのか。
まじまじと見つめてしまったけど、アレンは本気らしい。
「……それはレティのため?」
レティがいるから、未練を断ち切るつもりでいるのか。
そう思って聞いてみたのに、アレンは首を横に振った。
「違う、私自身のためだ。私は長らく君に捉われてきた」
アレンは少し慎重に言葉を選んでいる様子だ。
「リングを返したかったことも、君への好意も事実だ。だから……君から言葉を聞けない限り、私はずっと君のことを考えてしまう」
「諦めるために断ってほしいのね」
私が嘆息気味に言うと、アレンは困ったように眉を下げた。
この人は私のことが好きだと、レティに対してもそう言った。
本当に私――魔法使いレヴィリアのことが好きなのだろう。
だからといって私に断るように迫られても困る。困る、けど。
(……ずっと縛られていた、ってことね)
幼い頃の恋心を忘れられなくて、でも、今こうして想いを断ち切ろうとしている。
「正直、君には一生会えないことも覚悟した」
アレンは静かに言った。
「無論、私の立場では婚姻関係を結ぶこと必要だと理解している」
「それで、後腐れない娘を紹介するようマリアにお願いしたのね?」
「……ああ。君に心を寄せている状態のままでは、妻となる女性に申し訳ない」
私に振られないと諦めきれない。
だから、会えない状態だと諦められない。
諦めていない状態でも結婚は求められる。
諦めていない状態で結婚したら相手に申し訳ない。
だから、条件を飲む相手が必要で、それがレティだった、と。
指折り数えつつ頭の中で状況を整理した結果、アレンが不器用で言葉足らずだってことがわかった。
(――考えようによっては、誠実なことなんだろうけど)
ちらりとアレンを見てみると、彼はじっと私の言葉を待っていた。
「考えが足りないわ」
「……考え?」
「もし、もしもよ? 私があなたの気持ちを受け入れると言ったら、レティのことはどうするつもりなの」
私が了承することは想定していなかったらしい。
アレンは言葉を失った様子で、その場で固まった。
アレンは、レヴィリアとレティを別人だと思っている。
それなら、レティのことをどうするのかは考えているものだと思った。
(……私も大概ワガママね)
返されたばかりのリングに視線を落とした。
こういった代物は、きちんと管理されていなければ劣化が早いものだ。
しかし、このリングはあの日のまま――というほどではないにしろ、とても状態が良い。
大切に保管されていて、きちんと管理されていたのだろうとわかる。
「レヴィリア、私は――」
アレンが何かを言おうとしたとき、室内にノックが響いた。
反射的に扉を振り返ったアレンから離れた私は、窓から外へ出てすぐに空へと踏み出した。
そして――
「――マリアー!」
私はアレンのもとを去った直後、急いで王室付き魔法使いマリアの温室に飛び込んだ。




