第5話 内装スタート、職人と握手
夜間営業許可証を手に入れた翌朝。
私は日の出より早く目を覚まし、寝台の上で両腕を組んでいた。
「床、壁、厨房、棚、会計台、窓、魔道具。それから――」
「まだ増えるのでございますか?」
閉じた扉の向こうから、アンナの声がした。
「どうして起きていると分かったの?」
「先ほどから床板が4度鳴りました」
ギィ。
「5度目です」
「……店より先に、ここの床を直した方がいいかもしれないわね」
「その前に、お顔を洗ってください」
扉が開き、アンナが朝食の盆を運び込んでくる。
「見えない請求書だけが、私より先に店の棚を占領している気がするの!」
「商売人として健全な幻覚です」
最優先は建物の安全確認と改装。つまり、本日は大工探しである。
村で腕のよい職人を尋ねると、返ってくる名はオルフ・バッカスだった。
「口が悪くて値段もまけない。気に入らない仕事なら貴族でも断る。だが、あの人が直した家は20年経っても歪まない」
「私と相性がよさそうな要素、最後だけじゃない?」
「仕事が確かです」
「昨夜、『安全だけは値切らない』とおっしゃったのはリリアーナ様です」
「昨日の私の正論が、今日の私を容赦なく殴ってくる!」
槌の音をたどって村の端へ行くと、木の看板を掲げた工房が見えた。
カン、カン、カン。
規則正しい音が、私たちの姿を認めた途端、ピタリと止まった。
「歓迎されていない音の止まり方ね」
鞄の中の図面を確かめる。
職人には、私の夢へ付き合う義務などない。
「よし」
頬をパンッと叩く。
「道楽じゃないって、仕事で分からせるわ」
◇◇◇
作業台の向こうにいたのは、40代ほどの大柄な男だった。
日に焼けた腕は丸太のように太く、掌には硬い皮が重なっている。
鋭い目で私たちを見ると、削りかけの板から手を離した。
「客か?」
「改装をお願いしたくて伺いました」
「どこだ」
「街道沿いの元雑貨屋です」
「あの廃屋か。依頼主は?」
「私です。リリアーナ・フィオーレと申します」
「どこかで聞いた名だな」
工房の奥から、若い弟子がヒョコッと顔を出す。
「親方。王都から来た、元王女様ですよ」
「王女?」
「元、です。今はスノーベル村の住民です」
オルフは私の外套から靴まで、値踏みするように眺めた。
そして、フンと鼻を鳴らす。
「王女様の道楽につき合うほど暇じゃねえ」
ズキッ。
「あの建物は、きれいな棚を置いて、お姫様が3日笑って終わりって仕事じゃない。床下から見なきゃならねえ。梁も壁も傷んでる。遊びなら他を当たれ」
悔しい。
カッと頬が熱くなり、反論が喉まで駆け上がる。
誰が3日で飽きるって!?
こっちは追放されて、村長に一度断られ、それでも許可を取ったのよ! 図面だって、目をショボショボさせて何度も描き直した!
前へ出かけたアンナを、そっと片手で制した。
怒鳴って「私は王女よ」と返したら、オルフの疑いを自分で証明するだけだ。
「どの部分が、一番大きな仕事になりますか?」
「……何?」
「昨日見た限りでは、床板、窓枠、厨房の仕切りが必要だと思いました。でも私は建物の専門家ではありません。見落としがあるなら、教えてください」
オルフの眉が動いた。
「俺は断ったんだぞ」
「道楽なら断る、と聞きました。ですから、道楽かどうかを決める材料を見てから断ってほしいんです」
「口が回るな、お姫様」
「元です。それと、口だけだと思われるのは……ものすごく悔しいです」
「本当は今すぐ図面を机へ叩きつけて、『これを見なさい!』って叫びたいくらい。でも、それでは仕事を頼む態度じゃない。だからお願いします。せめて中身を見てから、駄目だと言ってください」
オルフは黙った後、作業台を顎で示した。
「5分だ」
「10分ください」
「図々しいな」
「図面が4枚あります」
「7分」
「ありがとうございます!」
勝ったわけではない。でも、最初の7分を確保した。
私は鞄から図面を取り出した。
◇◇◇
オルフは面倒そうに1枚目を受け取った。
入口、会計台、商品棚、通路、倉庫、厨房、照明、冷却魔道具の予定位置。
2枚目へ移る頃には、オルフは作業台の削り屑を腕で払い、図面を平らに広げていた。
「入口の右に会計台。背は低めで、店内と外の両方を見えるようにします」
「客が入って、反時計回りに棚を見る形か」
「通路は、大人2人が荷物を持ってすれ違える幅。棚は向こうまで見通せる高さに」
「防犯と、品出しのしやすさを兼ねてるわけだ」
オルフの太い指が図面の線をなぞる。
「会計台の奥行きが足りねえ。釣り銭箱と包み紙を置いたら、商品を渡せんぞ」
「では、こちらへ広げる?」
「その分、入口が狭くなる」
「入口は荷物を持つ人も通るから、狭めたくないわ」
「なら、台を鉤形にする。内側へ作業面を伸ばせば、客側の通路は残る」
「それよ!」
思わず身を乗り出し、オルフの肩へ額をぶつけそうになった。
クイッ。
アンナに襟を引かれる。
「近いです」
「ご、ごめんなさい。いい案を見ると、身体が先に!」
「客の前でも毎回それをやる気か?」
「努力して止めます」
「絶対に止めろ」
弟子が背を向け、肩を震わせている。
笑われた。でも、さっきの突き放す笑いではない。
「棚は商品を前後2列に置く想定です。ただ、実際の板の厚みまでは分かりません。倒れないことを優先して、寸法は直してください」
「図面どおり作れと言わねえのか?」
「配置には理由があります。でも、この世界の木材や建物に合う作り方は、オルフさんの方が知っている」
「理由ってのは?」
「棚を低くするのは店中を見渡し、困っているお客様へすぐ声をかけるため。通路を広くするのは、旅人と店員がぶつからないためです」
私が知っているのは「なぜ、その配置が便利だったか」まで。この世界で「どう作るか」には、職人の知恵が必要なのだ。
「照明は棚の間へ均等に。ただし、客の顔と会計台が影にならないようにしたいです」
「冷却の魔道具をここに置くなら、裏の導管は1本にまとめられる。厨房の熱源とは離せ」
「では、壁をこちらへ動かして――」
「駄目だ。倉庫への道が狭くなる。荷運びのたび、腰と口から悲鳴が出るぞ」
「私、口からは今でもよく悲鳴が出るけど」
「自慢するな」
「自慢じゃないわよ!」
「棚を半尺縮めろ。売り場の品数は少し減るが、補充が止まらん」
「品数を減らすのは悔しいわ……」
「客へ見せる棚だけ立派で、裏から運べなきゃ、もっと悔しいぞ」
「ぐっ。正しい。採用!」
「俺の案だ」
「店に採用するって意味!」
図面の上で互いの案が行き交い、約束の7分はとっくに過ぎた。弟子まで木材を提案している。
「面白えな、これ」
オルフが初めて、はっきり笑った。
「飾るための図面じゃねえ。客と働く奴が、毎日どう動くかまで考えてある」
道楽ではないと、ようやく伝わった。
「毎日使う店ですから」
平静を装った声が、少し上ずる。
「本当に、あんたが描いたのか?」
「はい。でも、完成させるのは私一人では無理です」
私は深く頭を下げた。
「私の知っている店へ無理やり合わせるのではなく、この村で長く使える店にしてください」
「頭を上げろ。まず現場を見るぞ」
「はい!」
◇◇◇
元雑貨屋へ移動すると、オルフは床を一枚ずつ槌で叩いた。
コン。コン。ゴン。
「今の、音が違う」
「床下の湿気だ。開けてみなきゃ、どこまで傷んでるか分からん」
梁を見上げ、窓枠へ指を滑らせ、井戸と排水まで確認する。
私が棚と商品を夢見ていた場所を、オルフは壊れる可能性から見ていた。
「傷んだ床板の交換。壁の補修と塗装。窓枠。厨房の防火壁。商品棚、会計台、倉庫棚。魔道具の導管を通す穴と覆い」
「安い木で済ませる所と、毎日手が触れるから丈夫にする所を分けても――ざっと200金貨だ」
「にひゃ……」
声が途中で死んだ。
200金貨。
財布ごと巨大な鳥にさらわれ、空の彼方へ消えていく金額よ!
「高いか?」
「正直に申し上げると、今、心の中で私の財布の葬儀を執り行っています」
「そりゃご愁傷様だ」
「参列者は私とアンナ。故人の思い出は、昨日の営業許可証です」
「勝手に殺さないでください。資金は残ります」
アンナが帳簿を開き、冷静に訂正した。
弟子がブフォッと噴き出す。
オルフは笑わない。
金額へ責任を持つ、職人の顔だった。
払えなくはない。けれど、支度金を工事へ使い切れば、仕入れも賃金も払えない。
「材料費はいくらですか?」
「半分より少し上だ。注文した時点で払ってもらう。俺も材木屋へ『王女様の夢だから待ってくれ』とは言えねえ」
「材料費は先に全額払います」
アンナを見る。
彼女は帳簿を確かめ、短く頷いた。
「工賃は、床と壁が終わった時に一部。棚と会計台の設置時に一部。完成検査の後に残りを。最後の分だけ、開店後3か月に分けていただけませんか」
オルフの顔が険しくなった。
「店が潰れたら?」
胸がズキリと痛む。けれど、商売を始める側が失敗の危険を負わなければならない。
「私個人の借金として残します。店の売上がなくても、支度金の残りと、私物を売って払う。ガレオ村長にも条件を確認していただき、書面にします」
「宝石を売る気か?」
「必要なら」
アンナが小さく息を呑んだ。
母から贈られた品もある。手放したくない。それでも、私の夢の危険だけをオルフへ押しつける方が嫌だった。
「そこまでして失敗したら、悔しくねえのか?」
「悔しいに決まってるでしょう!」
思わず声が跳ねた。
「たぶん3日は泣く! 4日目にはローランの悪口を言う! 5日目には別の商品を考え始めるわ!」
「立ち直りが早えな」
「追放された翌日に店を思いついた女よ。そこだけは自信がある!」
オルフの口元が、わずかに動いた。
「でも、失敗したときだけ親方が損をする約束よりはましです。職人の時間も、弟子の給金も、材木屋への支払いも、私の挑戦とは別の生活でしょう?」
沈黙が落ちる。
オルフはアンナの帳簿へ目を落とした。
支払日。材料費。工賃。生活費。仕入れの予備費。
「最後の工賃を3回払い。それ以上は延ばさん」
「受けていただけるの?」
「材料費は先に全額。途中の検査で追加が出たら、勝手に工事を進めず見積もりを出す。あんたも、追加を口約束で頼むな」
「はい!」
「まだ全部聞け」
「はいっ」
「手抜きはしねえ。あんたの無茶な寸法には遠慮なく駄目を出す。工期を急かして安全を削れと言ったら、その場で降りる」
「望むところです」
「それと、作業中の弁当で工賃をまけさせようとするなよ」
「お弁当とお茶は用意します。でも代金は工事費と分けます。贈り物と取引をごちゃ混ぜにはしません」
弟子がまた吹き出した。
「親方。この人、王女様らしくないっすね」
「元よ!」
反射で返すと、工房じゅうに笑いが広がった。
オルフが大きな手を差し出す。
「気に入った。引き受ける」
差し出された手を両手で握る。何年も木を削り、槌を握ってきた手は、ざらりと硬い。
「よろしくお願いします、オルフさん」
「親方でいい」
「ではオルフ親方。世界初のコンビニを、世界一使いやすい――」
「世界一は知らん」
言葉を途中で切られた。
「村で一番使いやすい店にはしてやる」
世界一と言いたかった。でも、村で一番を本気で作る人の言葉の方が、今は頼もしい。
「望むところです!」
図面の上で、最初の工事日が決まった。
頼れる職人仲間、獲得。棚より先に、私の背筋へ丈夫な柱が通った気がした。
◇◇◇
工房を出た後、私たちは村の南にあるロバートの畑へ向かった。
畝には朝露が残り、根菜の葉が風にサワサワ揺れている。
ロバートは鍬を置き、布で額の汗を拭いた。
「夜のお店に使う野菜を、継続して仕入れたいんです」
「うちの野菜を?」
「スープ用の根菜、添え物にする葉物、日持ちさせる漬物用の野菜。最初は少量ですが、毎週決まった日に買い取りたいと思っています」
ロバートは喜びかけ、すぐに畑を見渡した。
「根菜は安定しています。ただ、葉物は天気で量が変わる。毎週同じ量と言われると、約束できません」
「不作でも同じ量を出せ、とは言いません。足りない週は別の農家や、別の商品で補います」
「形の悪い物でも構いませんか?」
ロバートが、曲がった根菜を1本抜いて見せる。
「市場へ出すと値を下げられます。でも、味は変わらない」
「切ってスープにするなら、形より鮮度と安全です。傷みがなく、味に問題がなければ買います」
「それは助かる」
ロバートの顔が明るくなった。
「ただし、『形が悪いから何でも安く』にはしません。市場の相場を基準にして、選別や洗浄をこちらで行う分だけ相談しましょう」
「元王女様なら、『王女の店へ納められるんだから安くしろ』と言われるかと思いました」
冗談めかした声だったが、その不安は本物だ。
「安く買えても、来年作っていただけなくなったら困るわ。店だけ儲かって、畑が続かなくなる値段では意味がないもの」
「店としては、安い方が嬉しいでしょう?」
「短い間だけね。私、追放されてから『長く続ける』って言葉に敏感なの。ある日いきなり『もう必要ない』と切られる痛さを知ったから」
ロバートの表情が、少し変わった。
作物を買いながら、生産者の明日を削る店にはしたくない。
「なら、こちらも長くお付き合いしたい」
土のついた手と握手を交わす。
「それと、娘のミアが……店で働くことに興味を持っていまして」
「ミアさんが?」
「人と話すのが好きな子です。畑の帳簿も手伝っている。ただ、農作業以外の仕事は初めてですし、夜となると親として心配で」
人と話すのが好きで、帳簿も分かる。心の中で「ぜひ!」が三段跳びした。
でも、口からそのまま飛び出させてはいけない。
「本人から、なぜ働きたいのかを聞かせてください。仕事内容、時間、賃金、安全について説明して、それでも希望するなら適性を一緒に確かめます」
「今夜、連れて伺っても?」
「お待ちしています」
採用候補、現る。
まだ候補よ、私。落ち着いて。今すぐ制服の寸法を考え始めない!
◇◇◇
午後は、週に2度開く小さな市場を回った。
並ぶ魚は、近くの川で獲れた物が中心。
肉は豚と鶏が多く、牛は時々。
穀物商には小麦と大麦だけでなく、前世の米によく似た穀物もあった。
「これなら、おにぎりを作れる」
「握り飯とは違うのですか?」
「似ているけれど、具と握り方を工夫するの。夜でも片手で食べられて、手を汚しにくい。温かい汁物と合わせたら、もう最強よ!」
「価格を確認する前に、献立を完成させないでください」
「あっ」
危ない。
頭の中では、もう衛兵が湯気の立つスープを飲んでいる。現実の私は、まだ米を一粒も仕入れていない。
値段だけでなく、産地、入荷日、雨や雪で遅れた場合の代替品も尋ねた。
雑貨の露店には、石鹸、歯磨き粉、櫛、布、紙、インク、小さな裁縫道具が並んでいる。
「夜中に針が折れた。紙が必要になった。石鹸を切らした。そういう『今ほしい!』にも応えたいわ」
「何でも置くと、また資金が足りなくなります」
「うぐっ。財布の葬儀、第2会場を設けるところだったわ」
「最初は少量ずつにしてください」
「ええ。見本を少量だけ仕入れて、売れた物を増やす。魚も肉も穀物も、棚と献立が決まってから正式な数を頼みましょう」
商人たちは興味を示したが、大量注文はしない。工事日も棚の数も未定だ。約束を急がないことも、長い取引には必要だった。
◇◇◇
夕方、家へ戻ると、今日決まったことを紙へまとめた。
「改装はオルフ親方。材料費を先払いし、工事の進み具合に合わせて工賃を払う」
「野菜はロバートさん。市場価格を基準に、週ごとの量を相談する」
「魚、豚肉、鶏肉、時々の牛肉。それから米、小麦、大麦、石鹸などは候補を確認。正式な数量は、棚と商品計画が決まってから」
アンナが読み上げ、私が支払日を横へ書き込む。
「1日で、ずいぶん進みましたね」
「ええ。でも、私一人で進めたことは一つもないわ」
ガレオ、オルフと弟子、ロバート、商人、衛兵。そして私が夢だけを見て走らないよう、足元を照らすアンナ。
店は、違う仕事をする人たちの約束が結ばれる場所なのだ。
「ミアさんは、どんな方でしょうね」
「ロバートさんの話では、明るくて、人と話すのが好き。それから、畑の帳簿を手伝っているそうよ」
「リリアーナ様は、もう採用するお顔です」
「まだよ。本人の話を聞くまでは決めないわ」
「では、その緩みきったお顔を鏡でご覧になりますか?」
「アンナは時々、私に厳しすぎない?」
「共同事業者ですので」
その言葉が嬉しくて、一瞬、返事ができなかった。
私一人で始めたつもりの夢を、アンナは共同事業者として背負ってくれている。
「……ありがとう」
「何のことでしょう」
「何でもない。さあ、面談の準備をしましょう」
「はい。浮かれて即採用なさらないよう、私が条件を読み上げます」
「そこまで信用がないの!?」
コンコン。
扉を叩く音がした。
「リリアーナさん、ロバートです」
扉を開けると、ロバートの隣に、茶色の髪を三つ編みにした少女が立っていた。
緊張しているのだろう。背筋を伸ばし、両手を身体の前でギュッと結んでいる。
それでも私と目が合うと、パッと明るい笑顔になった。
「は、初めまして!」
声が大きすぎたことに自分で驚き、少女は頬を真っ赤にする。
「ミア・クラウスです! 夜のお店のお仕事について、どうしてもお話を聞きたくて来ました!」
声が、家へ響いた。
私は笑って、扉を大きく開ける。
「いらっしゃい、ミアさん。まずは、あなたの希望を聞かせて」
胸がパッと明るくなる。
――と同時に、隣からアンナが採用条件を書いた紙をサッと差し出した。
労働時間。賃金。休憩。夜道の送迎。試用期間。
夢に浸る隙が、1秒もない。
「共同事業者が優秀すぎて、私の見せ場を片っ端から現実に変えてくる……!」
「何かおっしゃいましたか?」
「いいえ。頼りにしていると言ったのよ」
「では、その頼れる共同事業者も同席いたします」
「逃げ道まで塞がれた!」
ミアが目を丸くした後、クスッと笑った。
その笑顔を見て、私の緊張も少しだけほどける。
「どうぞ、中へ」
店の棚は、まだ1本もない。
それでも人と人の間には、最初の通路ができ始めていた。




