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第33話 宅配はじめました

「おでんを、家で食べられたらと思うんですが……」


 ゲルハルトは、もらったばかりのポイント札を両手で包んでいた。


 夕方の店内には、まだ客はいない。けれど、ここまで歩いてきただけで、彼の額には薄く汗が浮かんでいた。


「お持ち帰り用に包むことはできますよ」


 ミアが答えると、ゲルハルトは申し訳なさそうに笑った。


「持ち帰る前の話でね。暗くなると、家からここまで来るのが怖いんです。昼なら杖で歩けるが、夜道では窪みが見えない。転んだら、隣人にも迷惑をかける」


「迷惑ではありません」


「そう言ってもらえるのはありがたい。でも、助けてもらうたびに頭を下げるのも、なかなか疲れるものですよ」


 私は、すぐに「無料で届けます」と言いかけた。


 それでは、ゲルハルトは商品を買うたび、私たちの好意まで受け取らなければならない。


「では、店の仕事としてお届けするのはどうでしょう」


「仕事として?」


「配達料を決め、頼む側も運ぶ側も、無理なら断れる仕組みにします。まだ試していないので、今日すぐとは約束できませんが」


 ゲルハルトは、ほっとしたように息を吐いた。


「代金を払えるなら、頼みやすい。年寄りにも、買い物を選ぶ権利は残してほしいからね」


 その言葉が、胸へズキリと刺さった。


 私は危うく、笑顔と勢いでゲルハルトの選ぶ権利まで包んで持ち帰るところだった。


『困っている人を発見! 無料宅配で即解決! 私、いい店主!』


 ……いやいやいや。


 助ける私が気持ちよくなってどうする。届けるのはおでんであって、恩ではない。


「ゲルハルトさん。料金も時間も、先に全部お見せします。頼まない月があっても理由は聞きません。『今日は自分で行けそうだから』でも、『今月は銅貨を使いたくない』でも、どちらでも構いません」


「そこまで言ってくれるなら、安心して注文したり、断ったりできますな」


 注文できるだけでは足りない。


 断っても関係が変わらないと分かって初めて、買い物になるのだ。


 助ける側の満足より、頼む側の選びやすさ。


 宅配の最初の条件は、そこで決まった。


◇◇◇


「店へ来られない方に、こちらから商品を届けたいと思います」


 準備台へ村の地図を広げると、ロウが真っ先に手を挙げた。


「俺にやらせてください! 道は分かるし、荷物を運ぶのも得意っす」


「元冒険者の経験が生きそうですね」


 ミアがうれしそうに言う。


「村中を回るくらい、魔獣を背負って山を下りるのに比べれば――」


「その比較は禁止です」


 アンナの静かな声に、ロウの背筋が伸びた。


「配達する品は食べ物です。揺らさず、決めた温度と時間で運ぶ。体力自慢だけでは務まりません」


「はいっす」


「それに、煮汁を一滴もこぼさず運ぶ魔獣なんていません。おでんは討伐対象より繊細です」


「お、おでんの方が強敵……?」


「倒したら駄目な相手ですからね」


 ミアが吹き出し、ロウは急に真剣な顔で籠を見つめた。


 笑い話のようだが、重要である。元冒険者の「持てる」と、配達員の「安全に届けられる」は別物だ。


「それに、配達した後で午前四時まで店に立つつもりですか?」


「それくらいなら平気――」


「平気かどうかを、疲れる前のあなた一人に決めさせません」


 私も、冒険者だった頃のロウを知っている。


 傷を隠し、仲間の荷物まで持ち、自分が役に立つことを確かめるように笑っていたという。


 店の仕事で、同じことを繰り返させたくない。


 試行は週三日。一日最大四軒。夕方六時から七時半まで。配達担当になったロウは、その夜の通常勤務から外す。


 荷物は片手で持てる重さまで。重い品や暗くなってからの遠い家は二人で運ぶ。大雨、雪、強風の日は中止し、料金を取らず別日に振り替える。


「四軒だけっすか?」


「最初は二軒でもいいくらいよ」


「困っている人が五人いたら、一人は断るんすか」


「受けられない約束をして遅れるより、空いている日を伝える。そのための予約です」


「でも、目の前で困ってるって言われたら……『五軒目なので無理っす』なんて、俺には言いにくいです」


「分かるわ。私も売切れの商品を欲しいと言われるたび、床下から生えてこないかしらと思いますもの」


「生えませんよね?」


「おでん大根が床板を突き破ったら、うれしいより先に衛生事故よ」


 ロウの口元が緩んだところで、私は地図の端へ大きく書いた。


『満員は、見捨てることではない。次に安全に届けられる日を伝える』


「自分の言葉だけで断れない時は、店の決まりを盾にしていいの。私が決めた上限です、と言ってください」


「怒られたら、リリアーナ様のせいにしていいんすか?」


「ええ。店主の肩書きは、そういう時に使うものよ。王女の肩書きより、よほど実用的でしょう?」


 地図は、住んでいる人の年齢や家族構成では分けなかった。


 坂道、石畳、橋、夜になると暗い道。運ぶ時の安全と距離で四つの区域に分け、同じ方向の注文を同じ日にまとめる。


 高齢だから、子育て中だから、と家の外に印を付ければ、その地図を見た誰かに暮らしぶりまで伝わってしまう。


「住所は必要ですよね?」


 ミアが尋ねた。


「配達には必要。でも、宣伝や薬の販売には使わない。注文札は鍵の掛かる箱へ入れ、配達が終わって代金確認も済んだら、定期便を希望する人以外は一か月で処分しましょう」


 注文方法は、店頭のほか、村役場と診療所に置く封筒にした。


 名前、届け先、希望日、商品、受取方法だけを書く。症状や、なぜ外出できないかは書かなくてよい。文字を書くのが難しい人は、守秘を確認した役場の担当者が代筆する。


 締切は前日の正午。変更は当日の仕込み前まで。緊急配達は受け付けない。


「急に具合が悪くなって、薬が必要な人は?」


「それは町医者と決めた医療連絡です。通常の配達へ混ぜません」


 医療用品を届けられるのは、診療所の反復札がある封緘品など、あらかじめ対象になっている物だけ。配達先で「これも効く」と勧めることもしない。


 料理はふたを固定できる容器へ入れ、保温布で包む。調理終了、出発、受け渡しの時刻を札に書き、時間を越えた物は渡さない。


 留守なら軒先へ置かず、店へ持ち帰る。代金と品数は客と一緒に読み上げ、領収札を渡す。


「決まりが、店で売る時の倍くらいありますね」


 ミアが束になった紙を見て言った。


「店なら、商品を渡したところまで見えるもの。離れた場所ほど、見えない分を決めておかないと」


 紙は増え、私の理想の宅配は、どんどん軽やかさを失っていった。


 前世の記憶では、注文すれば商品がスッと届く。魔法みたいに簡単だった。


 けれど、魔法の裏にも、作る人、詰める人、運ぶ人、待つ人がいたのだ。


『宅配革命、キター!』と叫ぶ前に、革命へ靴を履かせ、雨具を持たせ、休憩まで取らせなければならない。


 地味。とても地味。


 でも、この地味さがなければ、温かいおでんは誰かの火傷や疲労の上に届く。


◇◇◇


 配達料の話では、意見が割れた。


「最初くらい無料でいいんじゃないっすか?」


 ロウは、ゲルハルトの家一軒なら歩いてすぐだと言った。


「今回だけなら無料にできる。でも、二度目から料金を取る時、急に冷たくなったと思われないでしょうか」


「困っている人から配達料をいただくの、ちょっと嫌な感じがするっす」


「ロウの働きへお金を払わない方が、私は嫌よ」


「でも、歩くだけですし」


「歩くだけ、ではないでしょう。品を確かめ、道を選び、時刻を守り、代金を預かって戻る。途中で転べば、まず自分より籠を守ろうとする。そこまで分かっていて無料の善意へ押し込めたら、店があなたの気持ちを食べてしまうわ」


 ロウは何か言い返しかけ、唇を閉じた。


「感謝は受け取っていい。でも、感謝だけを給金にはしません」


「初回のお試しだと、先に伝えるのは?」


 ミアの案を採り、最初の一回だけ配達料を免除することにした。


 二回目からは、近い二区域が銅貨一枚、橋を越える二区域が銅貨二枚。注文額によって無料にはしない。多く買わなければ損だと思わせないためだ。


 計算すると、それでもロウの配達手当、容器の洗浄、保温材の交換をすべて賄うには少し足りなかった。


「外出が難しく、料金も負担になる世帯には、村の生活支援から一部を出せます」


 グリムが村役場の制度を確認してくれた。


「ただし、店員が見た目で無料にする相手を選ばないこと。本人が希望し、役場が同じ基準で決めます」


「ゲルハルトさんだけ特別扱い、にはしないのですね」


「ええ。親切を受けるために、店員と親しくなる必要があってはいけないわ」


 ポイント札は店頭と同じ条件にした。一回の配達で一印。一度に多く頼んでも増えない。


 ゲルハルトの「来られない人にも」という言葉が、ようやく形になった。


◇◇◇


 最初の配達日。


 ロウは、おでんの容器を入れた籠を何度も確かめていた。


「ふた、固定。受渡札、二枚。領収札。釣り銭。保温の時刻。よし」


「帰ってから私と確認するまで、注文札をポケットへ入れっぱなしにしないでくださいね」


「はいっす」


「それから、頼まれていない部屋へ入らない。ほかの商品を勧めない。長く話し込んで次を遅らせない」


「分かってるっすよ、リリアーナ様」


「本当に?」


「……もう一回、復唱します」


「頼まれていない部屋には入らない。追加商品を勧めない。長話で次を遅らせない。ゲルハルトさんが『悪いね』と言っても、俺が勝手に料金を安くしない」


「よろしい。それから?」


「絶対、無事に帰ってくる」


 最後だけ、決まりの紙には書いていない。


「ええ。それが一番大事です」


 私が頷くと、ロウは籠を背負った。


 扉がチリンと鳴る。


 見送るだけなのに、妙に胸が落ち着かない。初めて子どもを使いへ出した親は、こんな気分になるのだろうか。


 いや、ロウは立派な大人だ。魔獣だって担げる。


 でも、おでんは倒してはいけない強敵である。頼むから全員、無傷で帰ってきて。


 ロウが出発してから三十分ほどで、伝令石が一度光った。


『一軒目、受け渡し完了。容器も熱すぎず、時刻内。これから戻ります』


 やがて扉が開き、ロウが空の籠を抱えて帰ってきた。


「どうでした?」


「喜んでくれました。すごく」


「それだけ? ふたは? 温度は? 道で転んでない? ゲルハルトさんはちゃんと受け取れた? 代金は合った?」


「リリアーナ様、質問が渋滞してるっす」


「三十分待った店主を甘く見ないで。頭の中では、あなたが橋から落ちるところまで想像しました」


「橋は渡ってないっすよ」


「だから無事だったのね!」


「たぶん道選びのおかげです。落ちる予定は最初からないっす」


 ミアが堪えきれず笑い、私もようやく肩の力を抜いた。


 声は弾んでいたが、初回の緊張が解けたのか、肩を大きく落とした。


「代金は?」


「商品代だけ受け取り、互いに数えて領収札を渡しました。ポイントも一つ。それから、ふたを開ける時に蒸気で火傷しないよう、ゲルハルトさん自身に説明を言い直してもらいました」


「完璧です」


「隣の家の方にも、私も頼めるかって聞かれたっす」


「何と答えました?」


「今ここで注文は受けられないから、役場の申込封筒か店で予約してください、と。あと、来週までは空きがあるって」


 片っ端から助けます、と言わなかった。


 それが、私はうれしかった。


 翌日、ゲルハルトから短い手紙が届いた。


『誰かへ借りを作った気持ちにならず、温かい物を食べられました』


 ありがとうより、その一文が胸に残った。


◇◇◇


 試行から十日が過ぎ、利用は八世帯まで増えた。


 一人暮らしの人、幼い子を育てている家庭、足を負傷している職人。事情はさまざまだが、理由を注文札へ書く必要はない。


 ロウは配達のたび、明るい顔で帰ってきた。


「今日は『あなたが来ると安心する』って言われたっす」


「それはうれしいですね」


「次の家では、昔の冒険者の話を聞かせてもらいました。あと、隣の家の夫婦が喧嘩してるらしくて――」


「そこから先は、店で話す必要がありますか?」


 アンナに問われ、ロウは口を閉じた。


「……ないっす」


「配達員は、家の中や暮らしが見えます。客があなたに話したことを、店のみんなへの土産話にはしないでください」


「悪気はなかったんです」


「分かっています。悪気がない人へ話したことほど、どこまで広がるか客には見えません」


 ロウはその晩から、報告を『受渡完了』『留守』『商品の問題』『安全上の連絡』だけに変えた。


 けれど、別の問題が起きていた。


 週三日のはずが、ロウは空き時間に二軒、三軒と注文を引き受けていたのだ。


 ある夕方、四軒目から戻った彼は、入口の段差へつまずいた。籠は守ったが、膝を床につき、領収札が散らばった。


「大丈夫っす。ちょっと足がもつれただけで」


「今日は三軒の予定でした。四軒目は?」


「帰り道に近かったから。困ってるって聞いたら、断れなくて」


「昨夜も、店の荷下ろしを手伝いましたね」


「眠れば戻ります」


 私は彼の籠を受け取った。


「冒険者の頃も、そうやって傷を隠したの?」


 ロウの笑顔が止まった。


「……俺が持てば、ほかの人が楽になるんです」


「あなたが倒れた後の荷物は、誰が持ったの?」


 答えはなかった。


「感謝されると、次も応えたくなるっす。魔獣を倒しても、怖がられることの方が多かった。でも配達なら、来てくれてよかったと言ってもらえる」


「その言葉がうれしいことまで、否定しないわ」


「じゃあ――」


「でも、倒れるまで運ばなければ価値がないと思うなら、仕事があなたを助ける前に傷つけます」


 私は散らばった領収札を拾い、順番どおりに重ねた。


「今夜は休んでください。次の配達はアンナと私で振り分けます。明日、上限を越えそうな時に断る言葉も、一緒に決めましょう」


「俺、役に立てなくなったわけじゃないっすか」


 強がっているのに、声の最後だけが情けなく揺れた。


「四軒も運んだのに、休めと言われたら……結局、俺は足りないんじゃないかって。もっとできる奴なら、五軒でも六軒でも笑って帰れるんじゃないかって思うんです」


「誰と比べているの?」


「分かりません。でも、昔から俺より剣が強い奴も、頭が回る奴もいた。俺は荷物を持つくらいしか――」


「その『くらい』を禁止します」


 今度は私が、アンナの口調を借りた。


「道を覚え、崩さず届け、相手が断れるよう話し、領収札まで持ち帰った。あなたが『くらい』で捨てた仕事を、私は店の仕組みにするため何枚も紙を書いたのよ。勝手に軽くしないで」


 少し強く言いすぎたかもしれない。


 けれど、ロウの目から、張りつめていたものがゆっくり抜けた。


「休む判断までできる配達員になってほしいんです」


「それも仕事なんすか」


「ええ。倒れないこと、帰ってくること、明日も同じ品質で届けられること。全部、給金のうちです」


 ロウは長く黙った後、小さく頷いた。


◇◇◇


 翌日の見直しで、一日最大四軒を「空きがあっても越えない上限」と書き直した。


 追加依頼への返事は、『今日は安全に届けられる枠が埋まりました。次は何日に伺えます』。


 店へ戻るまでが配達時間であり、報告と容器の確認も勤務に含める。


 さらに、商品配達と見守りを分けた。


「毎週顔を見るなら、安否確認にもなるのでは?」


 村役場から提案されたが、商品を買っただけで生活を監視されると感じる人もいる。


 見守りを希望する人だけ、訪問時の合図と、応答がない時に連絡してよい相手を登録する。店員が医療判断をせず、決めた相手、村の担当者、必要なら医師へつなぐ。


 最初の見守り登録者となった一人暮らしの女性は、翌週の配達日に合図の鈴へ応じなかった。


 ロウは戸を勝手に開けず、登録どおり隣人と村の担当者へ連絡した。


 女性は裏庭で足をひねり、声が届かない場所に座り込んでいた。村の担当者がエルウィン先生を呼び、家へ運んだ。


「俺が助けた、って言っていいんすかね」


 報告を終えたロウが尋ねた。


「決めた手順を守って、助けにつないだ。それで十分よ」


「英雄ではない?」


「毎回英雄になろうとする人より、毎回決まりを守って帰ってくる人を、私は信頼します」


 ロウは照れたように鼻をこすった。


「じゃあ、明日も普通に帰ってきます」


◇◇◇


 一か月の試行で、定期利用は九世帯。配達は合計三十一件。留守による持ち帰りが二件、容器のふたの緩みが一件、時間超過による販売中止が一件あった。


 配達料と村の補助を合わせても、最初に用意した容器代までは回収できていない。けれど、配達手当と日々の洗浄費は賄えた。


「続けるなら、週三日、一日四軒のままですね」


 アンナが収支表を閉じた。


「申込が増えても、ロウ一人の件数は増やさない。配達員を増やせるまで待ってもらいましょう」


「俺も、その方が長く続けられると思います」


 ロウは今度こそ、迷わず答えた。


 その返事は、初日に「何軒でも行ける」と胸を張った声より、ずっと頼もしかった。


 隣村から方法を教えてほしいと相談が来た時、私たちは地図の引き方だけでなく、断る条件を先に渡した。


 配達員の手当。休息。重量。悪天候。食べ物を渡せる時間。住所を誰が見るか。見守りを望まない自由。医療連絡との境界。


「売上を増やすための声かけは、教えていただけませんか?」


「注文されていない品を家で勧めると、客は断りづらくなります。必要な物の一覧は注文前に見られるようにしますが、玄関先で追加を迫らないのが私たちの決まりです」


 便利を届けるために、断りにくさまで届けてはいけない。


 その夕方、グリムが二通の封書を持ってきた。


 一通は、来月開かれる第二回夜祭りへの出店依頼だった。期間中だけ、事前注文を会場近くまで届けられないかという相談も添えられている。


 もう一通には、王都商会の紋章があった。


『本年の夜祭りへ、王都商会直営店を出店する』


「視察ではなく、出店……」


 ロウが封書をのぞき込む。


「格安販売を予定する、とも書いてあります」


 アンナの声が低くなった。


 祭りへ商品を届ける準備を始める前に、私たちは別の荷物まで受け取ったらしい。


 便利さだけでは運べない、王都からの思惑という荷物を。


「この荷物、受取拒否できないかしら」


 私が封書をつまんで言うと、アンナはスン……とした顔で首を振った。


「すでに開封なさいました」


「政治には返品制度がないのね」


「祭りの出店規則には従わせられます」


 その一言で、愚痴が作戦へ変わった。


「なら、価格表示、衛生、廃棄、働き手の条件。全出店者へ同じ規則を確認しましょう」


 おでんは届ける。


 面倒な思惑には、透明な決まりを届けて差し上げよう。

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