第17話 屋外出店デビュー
冒険者ギルドとの提携が軌道に乗り始めた頃。
ガレオ村長が嬉しそうな表情で店にやってきた。
「リリアーナさん、良いお知らせがあります」
「どのようなお知らせでしょうか?」
「来週、村の夜祭りが開催されるんです」
村長が説明してくれる。
「年に一度の収穫祭で、夜通し行われる大きなお祭りです」
『夜祭り...面白そう』
前世でも、お祭りでの出店は良い宣伝機会だった。
「それで」村長が続ける。
「お店も出店してみませんか?」
「出店ですか?」
「はい。村人からの提案なんです」
村長が嬉しそうに話す。
「『リリアーナさんのお店にも参加してもらいたい』という声がたくさん上がりまして」
『村人からの提案...嬉しいわね』
◇◇◇
「ぜひ参加させていただきます!」
私は即座に答えた。
「本当ですか?ありがとうございます」
村長が喜んでくれる。
「でも、屋台での営業は初めてです。どのような準備が必要でしょうか?」
「基本的な設備は村で用意しますが...」
村長が考え込む。
「調理設備などは、各店舗で準備していただくことになります」
『移動式の設備が必要ね』
前世の屋台を思い出しながら、必要なものをリストアップしていく。
「移動式の加熱炉と保温器があれば大丈夫です」
「そんなものがあるんですか?」
「魔道具商人に相談してみます」
『きっと何とかなる』
◇◇◇
その日の午後、早速準備に取り掛かった。
「ゼルドさん、移動式の調理設備はありませんか?」
仕入れ業者のゼルドに相談してみる。
「移動式ですか...ちょっと珍しいですね」
「屋台で使いたいんです」
「なるほど。でしたら、魔道具商人のガンダルフに聞いてみましょう」
ゼルドが伝令札で連絡を取ってくれる。
数時間後、返信があった。
「『特注になりますが、3日で製作可能』だそうです」
「お願いします!」
『これで設備は確保できそう』
次は、祭り限定メニューの開発だ。
◇◇◇
「屋台メニューは、何が良いでしょうか?」
ミアちゃんと一緒に検討する。
「手軽に食べられて、美味しくて、見た目も良いもの...」
前世の屋台を思い出すと、やはり串ものが定番だった。
「焼き串はどうかしら?」
「焼き串!いいですね」
「肉と野菜を串に刺して、特製のタレで焼く」
私は前世の焼き鳥を参考に、レシピを考案していく。
「それと、温かいスープも欲しいわね」
「寒くなってきましたからね」
「出汁ベースの温かいスープ。体も心も温まる」
『祭りの雰囲気に合う、楽しいメニュー』
◇◇◇
翌日、オルフが様子を見に来てくれた。
「祭りに出店するって聞いたが、本当か?」
「はい。でも屋台設営が初めてで...」
「屋台設営?」オルフの目が輝いた。
「それなら俺に任せろ」
「本当ですか?」
「ああ、祭りの賑わいに貢献だ」
オルフが腕まくりをする。
「どんな屋台にしたい?」
「機能的で、でも見た目も良い屋台を」
「任せとけ。3日で完璧な屋台を作ってやる」
『さすがオルフさん、頼もしい』
◇◇◇
移動式の調理設備が届いた日。
「これが移動式加熱炉ですね」
コンパクトだが、十分な火力がある。
「保温器も完璧です」
スープを温かく保てそうだ。
「電源...じゃなくて、魔力供給はどうしましょう?」
「魔石を交換式にしました」魔道具商人が説明してくれる。
「4時間使用可能な魔石を5個用意しています」
「20時間分!十分ですね」
祭りは夜通し行われるが、これなら余裕で対応できる。
『設備面は完璧』
◇◇◇
屋台設営の日。
オルフが朝早くから作業を始めてくれた。
「まず骨組みから...」
手際よく木材を組み立てていく。
「次に調理スペース...」
「客席側の配置も考慮して...」
オルフの職人技が光る。
「おお、すごい屋台ですね」
見学に来た村人が感心している。
「機能的なのに、見た目も美しい」
「さすがオルフさんの仕事」
『本当に素晴らしい出来栄え』
機能性と美観を兼ね備えた、理想的な屋台ができあがった。
◇◇◇
祭り限定メニューの試作も完了した。
「焼き串、完成です」
鶏肉、豚肉、野菜をバランス良く串に刺し、特製タレで焼き上げる。
「いい匂い!」ミアちゃんが興奮している。
「味も抜群です」
アンナも試食して太鼓判を押してくれる。
「出汁スープも完璧ね」
野菜の旨味が凝縮された、体が温まるスープ。
「これなら、お祭りの雰囲気にぴったりです」
『準備万端!』
◇◇◇
夜祭り当日の夕方。
村の中央広場が会場となり、各店舗が屋台を設営している。
「リリアーナさん、準備はいかがですか?」
ガレオ村長が激励に来てくれた。
「おかげさまで万全です」
「素晴らしい屋台ですね」
村長が感心してくれる。
「オルフさんの力作です」
「さすがですね。きっと大盛況になりますよ」
『期待に応えなければ』
私は気持ちを引き締めた。
◇◇◇
午後7時、夜祭り開始。
太鼓の音と共に、祭りが始まった。
「いらっしゃいませ!」
ミアちゃんが元気よく声をかける。
最初は様子見の人が多かったが、焼き串の香りが漂い始めると...
「あ、いい匂い」
「何の屋台?」
人が集まり始めた。
「焼き串とスープの屋台です」
「試食もできますよ」
私が試食を勧めると、恐る恐る食べてくれる。
「美味しい!」
そこから口コミで広がり始めた。
◇◇◇
午後8時頃には、予想以上の行列ができていた。
「これは大盛況!」
私は嬉しい驚きを隠せなかった。
普段夜営業に来ない客層も多数来てくれている。
「こんなお店があったのね」
「知らなかったわ」
「今度本店にも行ってみましょう」
『新規客の認知拡大、大成功』
「すみません、焼き串3本とスープ2つください」
「はい、ありがとうございます」
ミアちゃんが忙しそうに接客している。
「外での接客も楽しい!」
彼女が新しい経験に興奮している。
『普段とは違う雰囲気で新鮮ね』
◇◇◇
午後9時、客足はピークに達した。
「すごい人気ですね」
隣の屋台の店主が感心している。
「焼き串の香りに釣られて、うちにも客が来ますよ」
「お互い様です」
祭りならではの相乗効果が生まれている。
「それにしても」店主が続ける。
「あなたの接客は勉強になります」
「どういうことですか?」
「試食で興味を引いて、本店への誘導も自然にやってる」
『マーケティング効果も出てる』
◇◇◇
実際、多くの客が本店に興味を示してくれた。
「本店にはもっと色々あります」
私が案内すると、皆さん興味深そうに聞いてくれる。
「夜営業してるんですよね?」
「はい、午前0時から6時まで」
「今度利用してみます」
「夜勤の時に助かりそう」
新規客の獲得につながっている。
『屋台出店の戦略的効果』
単なる売上増加だけでなく、宣伝効果も抜群だ。
◇◇◇
午後10時、一時的に客足が減ったタイミングで休憩。
「すごい売れ行きですね」
アンナが売上を確認してくれる。
「焼き串150本、スープ80杯完売です」
「え、もう完売?」
「追加分も用意してありますが...」
「すぐに準備しましょう」
予想以上の需要だった。
『嬉しい誤算ね』
「ミアちゃん、疲れてない?」
「全然大丈夫です!むしろ楽しくて」
彼女の笑顔が、何より心強い。
◇◇◇
午後11時から深夜1時まで、第二のピークがあった。
「夜が深くなるほど、温かいものが恋しくなりますね」
客の一人がスープを飲みながら言う。
「寒くなってきましたからね」
「このスープ、体の芯から温まります」
「ありがとうございます」
夜祭りならではの需要を実感した。
「普段の夜営業とは、また違った客層ですね」
ミアちゃんが観察している。
「そうね。家族連れやカップルも多い」
「本店にも来てもらえそうです」
『新しい市場の開拓』
◇◇◇
深夜2時、祭りも終盤。
最後の客を見送って、片付けを始めた。
「お疲れ様でした!」
村人たちが労いの声をかけてくれる。
「美味しかったです」
「また来年も出店してください」
「本店にも絶対行きます」
嬉しい言葉をたくさんいただいた。
「ありがとうございました」
私は深々とお辞儀をした。
◇◇◇
片付けを手伝ってくれたオルフが感想を述べる。
「大成功だったな」
「本当におかげさまで」
「屋台も好評だったようだし」
「オルフさんの技術のおかげです」
「それに」オルフが続ける。
「君たちの接客も素晴らしかった」
「初めての屋台だったのに、完璧だった」
『チーム一丸となっての成功』
◇◇◇
翌朝、夜祭りの結果を集計した。
「売上は通常の夜営業の3倍」
「新規客との接触は200人以上」
「本店への誘導効果も上々」
数字だけ見ても大成功だった。
「でも一番嬉しいのは」私は続ける。
「村の人たちに喜んでもらえたことよ」
「はい!皆さん本当に喜んでくれて」
ミアちゃんも満足そうだ。
「『村の一員として認められた』って感じがしました」
『確かにそうね』
屋台出店により、村のコミュニティとの結びつきがより強くなった。
◇◇◇
午後、早速夜祭りの効果が現れた。
「昨夜の屋台で焼き串を食べました」
新しい客が来店してくれる。
「本店も見てみたくて」
「ありがとうございます。ごゆっくりご覧ください」
店内を案内すると、予想以上に興味を示してくれる。
「夜営業って、こんなに充実してるんですね」
「はい、常に新鮮な商品を用意しております」
「今度、夜勤の時に利用します」
『新規客の常連化、順調に進行中』
◇◇◇
夕方、ガレオ村長が成果確認に来てくれた。
「昨夜は大盛況でしたね」
「おかげさまで」
「村民からも大好評でした」
村長が嬉しそうに報告してくれる。
「『リリアーナさんの屋台が一番美味しかった』という声がたくさん」
「ありがたいことです」
「それに」村長が続ける。
「他の店主たちも刺激を受けたようです」
「どういうことですか?」
「『あんな接客をしてみたい』『新しいメニューを考えよう』と」
『村全体の活性化にも貢献』
◇◇◇
その夜の営業では、夜祭り効果をさらに実感した。
「昨夜の焼き串、すごく美味しかったです」
「ありがとうございます」
「本店のメニューも試してみたくて」
新規客が次々と来店してくれる。
「夜営業って、こんなに便利なんですね」
「初めて利用しましたが、感動しました」
「今度から定期的に来ます」
新規客の常連化が順調に進んでいる。
『屋台出店の戦略的成功』
◇◇◇
営業終了後、今回の出店を総括した。
「屋台出店は大正解でしたね」
アンナが感想を述べる。
「はい。新しいことへの挑戦って、やっぱり価値がありますね」
ミアちゃんも成長を実感している。
「売上効果、宣伝効果、コミュニティ効果...」
私は三つの成果を確認した。
「すべてが期待以上でした」
屋台出店という新しい挑戦が、事業にとって大きなプラスになった。
『これからも、積極的に新しいことに挑戦していこう』
追放された王女は、また一つ新しい経験を積んで成長した。
そして、村との絆もより深まった。
屋台出店の成功は、さらなる可能性への扉を開いたのだった。