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【書籍発売中】あの日の恋(×3)が終わってくれない!~思い出の美少女たちと再会したら、恋の続きが始まりました~  作者: 柚本悠斗@小説家
二章 一色夏鈴

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第34話 古民家カフェ

「菫さん、大丈夫ですか?」

「心配かけて悪かったな……もう大丈夫だ」


 翌朝、チェックアウトを済ませた後のこと。

 俺たちは出発することなくグランピング施設に残っていた。


 というのも、海浜公園での恋活が振るわなかった菫さんは感情のままにやけ酒をした結果、極度の二日酔いになってしまい車を運転できる状態じゃなかったから。

 そんなわけで出発を午後に変更、フロントで休ませてもらっていた。


 ちなみに俺が菫さんを介抱している間、女子たちは海へ。

 名残惜しそうに最後の時間を楽しんでいる。


「夏鈴たちを呼んでくるので待っててください」

「ああ。その間に荷物を車に積んでおこう」

「ありがとうございます」


 お言葉に甘えて荷物を任せて三人を呼びに行く。

 施設の外に出ると遊んでいる姿が目に留まった。


「おーい。そろそろ帰るぞー!」

「「「はーい!」」」


 俺の呼びかけに気づいて戻ってくる三人。


「菫さん、大丈夫そう?」

「ああ。ようやくって感じだけど」

「じゃあ、いよいよ古民家カフェに出発だね」

「どんなお店か楽しみですね」


 悠香と莉乃さんの言う通り。

 この後は旅行の目的の一つ、菫さんが猫まみれ再建の参考になればと教えてくれた、築百年を超える古民家をリフォームして作ったカフェへ向かう予定。


「猫まみれの再建の参考になるといいね♪」

「ああ。そうだな」

 きっと色々と参考になるはず。

 そう思うと楽しみで仕方がなかった。



「ここか……?」

「たぶん、そうだよね?」


 グランピング施設を後にした三十分後。

 車から降りると、俺は夏鈴と揃って疑問符を浮かべた。

 なぜなら、目の前にあるのはいたって普通の民家だったから。

 辺りは住宅が立ち並び、道路を挟んだ向かいには畑が広がっていて、カフェを経営するには余りにも不向きな立地。まるで田舎にある祖母の家に来たような感覚。

 とてもカフェをやっているとは思えない。


「りっくん、見て!」


 一足先に門の前に行っていた夏鈴が手招きをする。

 指差す先には店名と家紋が刻まれた看板が掲げられていた。


「ここで間違いないみたいだね」

「そうだな」


 みんなで前に立ち、古民家カフェの外観を眺める。

 立派な石柱が建てられた門の先には昔ながらの引き戸の玄関。立派な瓦屋根と板張りの外壁は、いかにも古き良き日本家屋と言った感じの造りだった。

 看板がなかったら誰も気づかないと思う。


「では、お邪魔するとしよう」


 菫さんを先頭に後に続く俺たち。

 玄関を開けて中へ入り、靴を脱いで店内へ上がる。

 すると外観とは対照的にお洒落な空間が広がっていた。


「……素敵ですね!」


 珍しく歓声を上げたのは帆乃香さんだった。

 元々は二間続きの和室を一つの部屋にしつつ、フローリングに張り替えたと思われる広い店内と、大きな窓の向こうに広がる日本庭園が印象的な和と洋の空間。

 趣のある古い建具に歴史を感じさせるテーブルや椅子。

 他にもお店のこだわりが感じられる調度品の数々。

 奥には子連れの人も安心してお茶を楽しめるようキッズスペースもある。

 玄関を開けると土間続きの店内になっている猫まみれとは印象が違うけど、これもまた古民家を上手に再利用した喫茶店の形としてありだと思った。


「私たちは窓側の席だそうだ」


 俺たちが見惚れている間に受付を済ませてくれた菫さん。

 美しい日本庭園が望めるテーブル席に腰を掛ける。


「この雰囲気……とても好きです」

「私も。古い家って落ち着きますよね」


 莉乃さんと悠香が揃って感想を口にする。

 日本庭園の美しさに息を呑む莉乃さんや悠香とは対照的に、夏鈴は真剣な表情で写真付きのメニュー表と睨めっこ。その視線はデザートに向けられていた。

 なるほど、超甘党な夏鈴は花より団子らしい。


「ガトーショコラも食べたいけど、イチゴのタルトも捨てがたい……桃のシャルロットも気になるし、フルーツロールケーキも……ダメ、決められない!」


 魅力的なメニューの数々を前に頭を抱える夏鈴。

 甘い物に目がない夏鈴らしくて思わず笑みが零れた。


「そんなに気になるメニューばかりなら、この前みたいに二人でシェアしよう。お互いに別々のデザートを頼んで半分こにすれば色々楽しめるだろ?」

「ありがと。そうする!」


 悩ましそうな表情から一転、ぱっと笑みを咲かせる夏鈴。

 瞬間、夏鈴とは対照的に悠香の表情から笑みが消えた。


「この前みたいにって……どういう意味かな?」

「あ、いや——」


 しまったと思った時にはもう遅い

 冷や汗を滲ませながら口は災いの元という言葉の意味を痛感する。

 夏鈴のためとはいえ、みんなの前でする話じゃなかった。聞かれた以上、下手に隠そうとする方が怪しまれると思い、本当のことを話そうと覚悟を決める。


「この前、夏鈴と水着を買いに行った帰りにお茶をしてさ」

「その時にデザートを二人でシェアしたってわけね」


 悠香には夏祭りの帰りに告白されたばかり。

 俺の悠香への想いは過去の話だと伝えているとはいえ、悠香から『今でも凛久のことが好き』と告白されている以上、決していい気はしないはず。

 別に浮気ってわけじゃないし、他の女の子と出掛けちゃいけない理由もないんだけど、不満の一つくらいは言われるだろうと覚悟をしたんだけど。


「凛久も他の女の子と出掛けることくらいあるよね」


 悠香は全く機嫌を損ねることなく理解を示す。

 むしろありありとした余裕すら見て取れた。


「なによ……いつもみたいに張り合ってこないわけ?」

「私も凛久と出掛けることはあるし、食べ物をシェアすることもある。仲が良ければそのくらい当たり前だよね。むしろ今まで張り合ってごめんね」

「くっ……そうやって余裕ぶってられるのも今のうちなんだから!」

「み、みんな注文は決まったか!?」


 修羅場を回避すべく、みんなの注文を取りまとめて話題を逸らす。

 俺と菫さんはアイスコーヒー、夏鈴と悠香はアイスティーで莉乃さんはアイスほうじ茶オレ。他にも各々好きなケーキやスイーツを注文して待つこと十分少々。

 先に運ばれてきた飲み物を片手に古民家カフェの感想を伝え合う。


 日本庭園が綺麗だとか、店内の建具や調度品の統一感が素敵とか、店内のレイアウトが使いやすそうとか、お手洗いがすごく綺麗で女性に喜ばれそうだとか。

 みんなで思いつくことを上げていた時だった。


「ふと気づいたのですが」


 莉乃さんが辺りを見渡しながら声を上げる。


「このお店、わたしたち以外は全員子連れの方ですね」

「「「え——?」」」


 確かに莉乃さんの言う通り。

 どの席にも下は乳児から上は小学生を連れている。

 偶然にしては客層が偏りすぎていると思っていると。


「それがこの古民家カフェのコンセプトだからな」


 菫さんが意外な一言を口にした。

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