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【書籍発売中】あの日の恋(×3)が終わってくれない!~思い出の美少女たちと再会したら、恋の続きが始まりました~  作者: 柚本悠斗@小説家
二章 一色夏鈴

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第31話 あの日、交わした言葉の続き

 その後も海浜公園を楽しむ俺たち。

 草原エリアにある芝生に寝転んで空を仰いだり、童心に返ってアスレチックコースで遊んだり、砂丘エリアから俺たちが泊まっているグランピング施設を探したり。

 お昼になるとガーデンエリアにあるレストランで腹ごしらえ。

 気づけば大半のエリアを満喫し、気づけば夕方。


 閉園前、最後に観覧車に乗ることにした。


「結構おっきいね!」

「高さは六十五メートルあるらしいよ」

「やばっ! 時間もないし早く行こ!」


 慌てて走っていく悠香と夏鈴。


「そんなに走ると危ないぞ」


 俺の忠告も聞かずに受付を済ませ、観覧車に乗り込む二人。

 あとから追いついて俺と莉乃さんも乗ろうとした時だった。


「「「「え?」」」」


 係りのお姉さんが二人の乗った観覧車のドアを閉める。

 どうやら少し離れていたせいで、俺たち四人が同じグループではなく二人ずつの別グループだと思ったらしい。

 中から夏鈴が『ちょっと待って!』と叫んでいるけどもう遅い。


「仕方がないですね。俺たちは次のゴンドラに乗りましょう」

「そうですね」

『降ろしてぇ。りっくんと乗るの!』


 半泣きで訴える夏鈴を見送り次のゴンドラに乗り込む俺たち。

 徐々に高くなるゴンドラから眺める景色は昼間とは対照的に幻想的だった。

 広大な海には夜の闇が広がり始め、水平線と空の境を深い藍色に染めていく。

 茜色に染まる西の空と濃紺に滲む東の空が混ざるグラデーションは息を呑むほど美しい。日が沈む前のわずかな時間しか見られない特別な光景。

 しばらくの間、言葉も忘れて見惚れていると。


「綺麗ですね……」


 莉乃さんはぽつりと零した。

 すると視線を窓の外から俺に向ける。


「今日は、本当にありがとうございました」

「そんな……お礼を言われるようなことなんてなにも」

「りっちゃんが誘ってくれなければ、自転車に乗る楽しみを知ることはできませんでした。今日のことだけではなく……自分の想いに気づくこともありませんでした」


 自分の想い——。


 それが、なにを意味しているのかすぐに気づいた。

 なぜなら莉乃さんが昨晩と同じ愁いを帯びた瞳を浮かべていたから。

 これは昨日、俺が下ごしらえ中に指を怪我したことで途切れた話の続き。


「昨晩から考えていたんです……俺の言葉のなにが莉乃さんに響いたんだろうって。間違いだったらすみません。勘違い野郎って笑い飛ばしてもらっても構いません」


 だけど、たぶん間違いない。


「莉乃さんも……なにか未練があるんですか?」


 莉乃さんが自分自身に向けられているように感じた言葉。

 それは、俺が菫さんに『未練があってもいい』と掛けた言葉。


「…………」


 莉乃さんは視線を伏せて黙り込む。

 しばらく俯くと、顔を上げて口を開いた。


「あの日、りっちゃんに言った言葉を……今でも後悔しています」


 その言葉がわからないはずがない。


 ——もう、りっちゃんとは一緒にいられません。


 あの日、自分に突き付けられた拒絶の言葉が頭をよぎる。


 ——どうして一緒にいられないの?

 ——りっちゃんのことが好きだからです。


 当時、幼かった俺には理解も想像もできなかった言葉の意味。

 知りたいと願いながらも叶うことなく離ればなれになり、再会してからもお互いに切り出すことはなく、今日の今日まで触れることができなかった話題。

 もう真意を尋ねる機会はないと思っていたけど——。


「どうして——」


 最後に交わした言葉の続きを話そうと思った時だった。

 ゴンドラが小さく揺れてぴたりととまる。驚きながら辺りを見渡すと、ドアの向こうでスタッフさんの制止も聞かず、窓をどんどんと叩いている夏鈴の姿があった。

 気づけば一周してスタート地点に戻ってきていたらしい。

 絶妙すぎる間の悪さに溜め息が漏れた。


「降りましょう」

「はい」


 本音を言えば残念だけど焦ることはないのかもしれない。

 なぜなら、当時あれだけ尋ねても教えてくれなかった話の続きを莉乃さんの方から切り出してくれたということは、莉乃さん自身が話そうと思っている証拠。


 遠くない未来、いずれまた機会があると確信していた。

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