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【書籍発売中】あの日の恋(×3)が終わってくれない!~思い出の美少女たちと再会したら、恋の続きが始まりました~  作者: 柚本悠斗@小説家
二章 一色夏鈴

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第28話 ベーコンエッグトースト

 テントに戻ってひと休みした後。

 みんなが起きる前に朝食の準備をすることにした。


「朝食は、あたしに任せておいて♪」


 夏鈴は自信満々に胸の前でガッツポーズ。

 というのも、つい最近まで夏鈴は言葉の通り全く料理ができず、同じく料理が苦手な悠香と、言葉を選ばずに悪いけど低レベルなお料理バトルを繰り広げていた。


 ところがどっこい、莉乃先生の指導を受けて急成長。


 最近は再建活動中、みんなの昼食を作るくらいに実力を付けている。

 とはいえ、おにぎりを三角に握れるようになったとか、お味噌汁をしょっぱすぎずに作れるようになったとか、目玉焼きをいい固さで作れるようになったとか。

 学校の家庭科で習うような料理とはいえ立派な成長だよな。

 夏鈴は勉強に限らず料理にも勤勉らしい。


「さて、どうしようかな」


 ちなみに食材はフロントで色々提供中。

 好きに持ってきて使っていい宿泊プランらしい。


「ベーコンエッグトーストとサラダでいい?」

「朝食の定番だよな。いいと思う」


 そんなわけで、卵とベーコンとトーストを人数分。

 サラダバーから適当に食材を調達してからテントへ戻る。


 さっそく夏鈴はカセットコンロとフライパンを用意して料理開始。

 まずはベーコンをフライパンに並べると思いきや、包丁で縦に半分にカット。すると細くなったベーコンを縦と横に二枚ずつ、つまりはしご状に並べた。

 なにをしているんだろうと思いながら首を傾げる俺。

 中央に卵を落とすのを見てようやく察した。


「こうすると卵が中心からずれずに焼けるの」

「なるほど……」


 ベーコンエッグを作ったことがある人ならわかると思うけど、卵をベーコンの上に落としても思うような位置に落ちず、ぬるっと端に寄ってしまうことが多々ある。

 多々あるというか大半の場合はそうなってしまう。


 でも、こうしてベーコンで囲んで中央を開ければ卵がずれず、ベーコンエッグトーストのようにパンに乗せる料理の場合は、卵が中心で見栄えがいいし食べやすい。

 これはベーコンエッグ作りにおけるちょっとした発明かも。


「はい。出来上がり~♪」


 夏鈴は鼻歌交じりに上機嫌。

 焼き上がったベーコンエッグをトーストに乗せて一丁あがり。

 焼き具合も完璧で、卵の黄身は固すぎず柔らかすぎず絶妙なプルプル具合。出来に満足したのか、夏鈴は得意げな表情を浮かべながら二つ三つと作っていく。


「夏鈴、本当に料理が上手になったよな」

「本当? りっくんにそう言ってもらえると嬉しいな」

「でも、どうして急に料理を覚えようと思ったんだ?」


 きっかけは猫まみれで莉乃さんのお弁当を食べたこと。

 料理上手な莉乃さんを羨ましく思っていたら、猫まみれの掃除が終わればキッチンが使えるから教えると提案され、それ以来、お昼は女子三人で作るようになった。

 でも、ここまで夏鈴が料理にはまるとは思わなかった。


「せっかくなら美味しく食べてほしいでしょ?」

「なるほど、誰かに振舞うためなのは頑張る原動力になるよな」


 納得してうんうん頷きながら答える。

 すると夏鈴は手をとめて眉をひそめた。


「他人事っぽく言ってるけど、食べてほしい相手ってりっくんだからね」

「なっ——」


 夏鈴は笑みを浮かべながら当然のように答える。

 唐突な一言に心を撃ち抜かれて思わず狼狽える俺。


「そ、そっか……ありがとう」

「そんなわけで、りっくんには卵を二つ載せてあげるね♪」


 相変わらず夏鈴は想いの伝え方が直球すぎてドキッとさせられる。

 たぶん、普通の男女の仲なら自分に好意があると確信するレベルの台詞。男も好意を抱いているなら、もう告白しようと決意するくらいに決定的な言葉だと思う。


 だけど、俺と夏鈴にそんなことはありえない。


 なぜなら、俺はあの日——夏鈴を酷く傷つけてしまったから。

 あの時の悲しそうな顔は忘れられず、こうして楽しい時間を過ごしている時も不意に思い出し、心の中の自分が『おまえを好きなわけがないだろ』と釘を指す。

 本当は……夏鈴に聞いてみたいと思っている。

 どうして俺なんかと仲良くしてくれるのかって。

 だけど……後悔と罪悪感で聞けるはずもなかった。


「うん。いい感じかも!」


 テーブルに並べられた人数分の朝食を前に満足そうな夏鈴。

 タイミングよく目を覚ました三人がテントから出てきた。


「おはよう!」

「おはようございます」

「……誰か二日酔いの薬を持ってないか?」


 案の定、昨晩酔いつぶれた菫さんは絶賛二日酔い中。

 泊まりで旅行と聞いた時、どうせこんなことになるだろうなと思って家から持ってきておいた二日酔いの薬と一緒に水の入ったグラスを菫さんに渡す。


「ありがとう……さすがモテる男は気が利くな」

「そんな冗談はいいから早く飲んでください」


 軽くあしらって席に着く。


「夏鈴さんが朝食を作ってくれたんですか?」

「はい。自信作なんで、莉乃先生にチェックしてほしいです」


 莉乃さんは『いただきます』と言ってベーコンエッグを手に取る。

 小さな口でぱくりと咥えた瞬間、サクッといい音がテラスに響いた。


「うん……パンの焼き加減もちょうどいいですし、ベーコンもカリっと仕上がっていますね。それでいて目玉焼きは絶妙に半熟で、なによりズレないようにした工夫が素晴らしいです。食べる人のことを想ったベーコンエッグトーストだと思います」


 上手に作った夏鈴もすごいけど、見抜いた莉乃さんも充分すごい。

 続いて俺と悠香もトーストを口にする。


「うん。すごく美味しいね!」

「ああ。もう一枚食べたいくらいだ」


 夏鈴は褒められた子供みたいに瞳を輝かせると。


「じゃあ、フロントに行ってもう一枚貰ってくるね!」

「あ、いや。それくらい美味しいって意味で、大丈夫——」


 俺がとめるよりも早く、夏鈴はフロントに向かい走っていった。

 まぁ本人も嬉しそうだし、食べたいのは本当だからお言葉に甘えよう。


 こうして朝から充実しが時間を過ごし、二日目が始まった。

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