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【書籍発売中】あの日の恋(×3)が終わってくれない!~思い出の美少女たちと再会したら、恋の続きが始まりました~  作者: 柚本悠斗@小説家
三章 七々咲莉乃

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30話 彼女のためにできること

 数日後、気づけば二月が終わり三月上旬。

 七々咲家と四ノ宮家の会食の日まで約二週間を切ったある日。


「本当、菫さんがペット用の見守りカメラを持ってて助かりましたよ」


 俺は菫さんと一緒に猫まみれでカメラの設置作業を行っていた。

 色々疑問に思う人もいると思うから順番に説明したい。


 まずペット用の見守りカメラについて。

 これは言葉の通り、お留守番をしているペットを見守るカメラのこと。

 外出先からスマートフォンで留守番中のペットの様子をリアルタイムで確認でき、映像を見るだけじゃなく会話や録画などもできる多機能なネットワークカメラ。


 なんでそんなものを猫まみれに設置しているか?

 答えは簡単、事件を起こした犯人の姿を映像に収めるため。

 悠香と夏鈴と話した通り、莉乃さんを連れ戻そうとすれば犯人はまた猫まみれを襲撃するはず。その現場を録画し、犯人を特定すると同時に動かく証拠として残す。

 猫まみれはネット回線を引いてないから主に録画で使う予定。


 で、なんで菫さんがカメラを持っているのか?

 察しのいい人なら気づくと思うけど。


「まさか元彼の飼い猫のために購入した物が役に立つとはな……ははっ」


 冷笑を浮かべながら自虐的に突っ込む菫さん。

 そう、これは菫さんが元彼のアパートに通い妻よろしく半同棲をしていた頃、元彼の飼っていた猫のために買ってあげ、別れた後に突き返されたいわくつきの品。

 夏休みに自動給餌器と自動給水機を持ってきてくれたから、もしかして見守りカメラもあるんじゃないかと思って聞いてみたら予想通り持っていたってわけ。

 そんな説明をしているうちに設置完了。


「懐かしいな……よく猫を見守るふりをして元彼を覗き見していたものだ。まさか浮気相手とベッドの上でにゃんにゃんしているのを目撃するとは思わなかったがな」


 ものすごくコメントに困る元彼エピソードはやめてほしい。

 いくら付き合っていた時の話とはいえギリギリ犯罪。

 愛情の裏返しってことで許してあげてほしい。


「それにしても……私がマッチングアプリで数多の男たちとやり取りをしている間に、まさかこんなことになっているとは夢にも思わなかったぞ」


 菫さんは割れた窓ガラスに目を向ける。

 もちろん菫さんには年始以降に起きた猫まみれの事件から莉乃さんの離脱に至るまで、婚活で忙しくて話せなかったことをカメラの設置作業中に全て伝えた。

 もちろん、俺が莉乃さんに再び拒絶されたことも。


「状況は概ね理解したが、これからどうするつもりだ?」

「まずは莉乃さんを連れ戻します。そうすることで犯人を誘い出し、猫まみれを襲撃するところを押さえる。証拠さえあれば後はどうとでもなります」

「無理はするなよ。犯人が特定できたとして、相手は暴力に出るような輩だ。まともな話し合いができるとは思わない。大人の出番が必要な時は私を頼るんだぞ」

「はい。ありがとうございます」


 学校では授業をサボって婚活アプリに精を出す不良教師だけど、俺たちの昔馴染みのお姉さんとしては頼もしい限り。


「それにしても凛久……いい顔をするようになったな」


 不意に菫さんは弟を見守るような優しい瞳を浮かべる。

 その姿は子供の頃に憧れていた優しいお姉さんそれだった。


「四年前——莉乃に拒絶された時の落ち込みようは本当に酷かった。大切な肉親を失ったかのような憔悴ぶりは、とてもじゃないが見ていられなかった。それが今じゃ、まるで別人のように男らしい顔をするようになったじゃないか」

「そう……ですかね」


 正直、自分ではわからない。

 でも色々考えて思ったことがある。


「もしかすると、悠香や夏鈴の時と同じなのかもしれないって思ったんです。俺が振られたと勘違いしただけで、本当は振られてなんかいなかった。なにか事情があったんじゃないかって……だから、莉乃さんを連れ戻して本心を聞きたいんです」


 ——あの日、叶わなかった恋の答え合わせをするために。


 菫さんは『そうか……』と感慨深そうに呟くと。


「今のおまえなら、莉乃を受けとめてやれるかもしれないな」


 まるで事情を知っているかのような台詞を口にする。


「……菫さん、なにか知ってるんですか?」

「私が恋愛相談を受けていたのは凛久や夏鈴だけじゃない」


 菫さんは否定も肯定もせずにそう答える。


「せいぜい頑張れ男の子。囚われのお姫様を救うのは、いつの時代も王子様の役割だ。自分を拒絶した相手とはいえ一度は惚れた女のために一肌脱ぐのも悪くない」


 菫さんは思わせぶりな台詞を残して猫まみれを後にする。

 一人残され俺は、その背中に向かって覚悟を告げる。


「……はい!」


 あの日の疑問と向き合う覚悟はできている。

 今はただ行動あるのみだった。

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