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【書籍発売中】あの日の恋(×3)が終わってくれない!~思い出の美少女たちと再会したら、恋の続きが始まりました~  作者: 柚本悠斗@小説家
三章 七々咲莉乃

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29話 調査報告

 そして週末、莉乃さんの離脱から二週間後。

 俺と悠香と夏鈴は集めた情報を手に猫まみれに集まっていた。


 本題に入る前に余談だけど、今日はあげぱんとのりべんと久しぶりの再会。

 というのも、猫まみれで事件が起きてから二匹はどこかに身を隠して姿が見えなかったんだけど、最近は起きていないこともあり戻ってきたらしい。

 薪ストーブの前に座っている悠香と夏鈴の膝の上で喉を鳴らして甘え中。


「二匹とも元気そうで良かったね」

「ほんと、外は寒いから心配してたんだぞ」


 二人は優しく声を掛けながら二匹を撫でる。

 心配事の一つが解消したところで本題へ。


「じゃあ、順番に調査結果を報告しよう」


 まずは悠香から。


「もう共有済みのこともあるけど、あの人は花崎北高校に通う高校三年生。中学時代はソフトテニス部でキャプテンを務めていて、全国大会に出場するほどの実力者。成績も学年で一位二位を争うほど優秀で、中学時代は生徒会長を務めてたんだって」

「マジで漫画の主人公だな……なにか悪い噂は?」

「一つも聞かなかったよ。問題を起こしたことは一度もなくて、むしろ教師たちすら匙を投げた不良たちと積極的に向き合って更生させてたくらいだって。おかげで青少年の起こす問題や事件が減って地元の治安が良くなったとかならなかったとか」

「聖人君子にもほどがあるだろ……」


 続いて夏鈴。


「高校でも生徒会長をしてたんだけど、なにがすごいって、一年生の時に生徒会選挙に出馬して選ばれちゃったこと。さっき悠香も言った通り、中学時代に不良たちを更生させてた実績が評価されたんだってさ」

「上級生を差し置いて選ばれるのも納得ってわけか」

「品行方正、文武両道、眉目秀麗。清く正しく、勉強も運動できて見た目も爽やかな好青年だから当然女子に大人気。婚約者がいるから断ってたらしいけど、告白された数は両手じゃ足りない。まぁ、あたしはりっくんの方が百万倍カッコイイと思うけどね♪」

「お、おお……ありがとう」


 報告ついでにさらりとメロつく夏鈴。

 その隣で先を越された悠香が悔しがる。


「調べれば調べるほど、あの人がなにかしたとは思えない」

「あたしも、あいつじゃない可能性の方が高い気がする」


 複雑そうな表情を浮かべて顔を見合わせる悠香と夏鈴。


「二人がそう思うのも当然だろうな。俺も二人の話を聞いただけなら同じように思ったはず。だけど、俺には四ノ宮樹を疑う新たな根拠が二つある」

「「二つ——?」」


 一つは萩原さんの件。


「この前、萩原さんの事務所に行ってきたんだ。改めて水道工事を手伝ってほしいってお願いしたんだけど断れて、理由を聞いたら、仕事を紹介してもらって忙しくなったからだ言ってただけど……萩原さんに仕事を紹介したのは四ノ宮家みたいなんだ」

「さすがにタイミングが良すぎない?」


 悠香の言う通り、まさに『狙ったような』タイミング。


「待って……じゃあ、あの人かあの人の家族かはわからないけど、猫まみれの手伝いをさせないために仕事を紹介して忙しくさせたってこと? もしくは、紹介する代わりに猫まみれの手伝いをやめるように脅したとか?」

「おじいちゃんたちに恩を感じてるのに断るくらいだ……後者だろうな」

「最低……!」


 珍しく悠香が言葉を選ばず怒りを滲ませる。

 俺も気持ちは同じだけど、これだけで決めつけるのは早い。

 だけど、四ノ宮樹を疑う根拠はもう一つ——。


「莉乃さんが猫まみれを去って以来、事件が起きていない」

「やっぱり、あいつで決まりじゃん!」


 今度は夏鈴が怒りに声を震わせた。


「おそらく四ノ宮樹の目的は莉乃さんを猫まみれから引き離すことだった。再建活動を機に猫まみれに出入りするようになった莉乃さんを遠ざけるため、嫌がらせのように事件を起こし続けた。だから猫まみれを離れたことで事件が収まった」


 今にして思えば、俺が初めて猫まみれで四ノ宮樹の見かけたのは、莉乃さんが猫まみれの再建をしていると知り事実を確認しに来たんだろう。


「四ノ宮樹の目的はわからないけど、莉乃さんが猫まみれを去ったのは四ノ宮樹が犯人だと気づいていたからで、自分が身を引けばやめるとわかっていたからだと思う」


 そう考えると辻褄が合う。


「でも、なんで莉乃さんはあいつの言いなりなわけ?」

「そうだよ。やめてって言わなかったのかな?」

「言いたくても言えなかったんだろうな」


 ある意味とても莉乃さんらしい。


「前に莉乃さんが言ってただろ? 七々咲家と四ノ宮家の願いは本当の家族になることだったって。両家の子供が異性だった時は結婚させようと約束してたって。自分と四ノ宮樹が結婚するのは、両家の家族全員が幸せになるためなんだって」


 思えば昔から莉乃さんはそうだった。

 いつも周りに気を使い、常に自分のことは後回し。

 中学生になって友達やクラスメイトが遊びや部活などの青春を謳歌する中、おじいちゃんとおばあちゃんの助けになればと猫まみれを手伝っていた。

 そんな莉乃さんを周りの人は『優しい』の一言で済ますけど、莉乃さんを傍で見ていた俺からすれば、優しさではなく自己犠牲的なまでの献身性。

 それは四年が経った今も変わらない。

 だから黙って身を引いた。


「私……あんな人に莉乃さんを渡したくない」

「あたしも。あいつが莉乃さんの婚約者だなんて許せない!」

「こうなったら今すぐあの人のところに乗り込もう!」

「賛成。文句の一つも言ってやる!」


 普段はぶつかり合う二人だけどこういう時は一致団結。

 実は仲が良いのは知っているし、溜まりに溜まった怒りの矛先を向ける相手が明らかになって過激な気持ちになるのはわかるけど落ち着いてほしい。


「二人の気持ちはわかるけど、あくまで状況証拠だけ。犯行現場を押さえたわけでもないし、目撃証言があるわけでもない。さすがに今のままじゃ言いがかりだ」

「「…………」」


 二人はしょんぼりしながら冷静さを取り戻す。


「そう落ち込むな。俺に考えがある」

「「ほんと!?」」

「莉乃さんが猫まみれから離れて事件が収まったのなら、俺たちが莉乃さんを連れ戻そうとすればまた事件が起きるはず。相手の目的が莉乃さんなら、連れ戻そうとする俺たちへの見せしめ的に事件を起こすはずだ」

「なるほど……確かに!」

「りっちゃん冴えてる!」


 拍手喝采、大絶賛の二人。

 そんなに持ち上げられると照れる。


「でも……凛久、大丈夫?」

「だよね……ちょっと心配」

「なにが心配なんだ?」


 二人は笑顔から一転して心配そうな表情を浮かべる。


「莉乃さんを連れ戻すってことは、莉乃さんと話すつもりだよね?」

「りっくんは莉乃さんに二度も拒絶されてるわけでしょ? トラウマっていうか、風邪もあるけど寝込むほどショックだったのに……莉乃さんと話して平気?」

「ああ……そういうことか」


 こんな時でも俺を想ってくれる二人の優しさに救われる。

 確かに二人の言う通り、莉乃さんと向き合うことが怖くないと言えば嘘になる。できることなら、あの悲しみは二度と味わいたくないのが本音だけど。


「心配してくれてありがとう。でも大丈夫だ」


 俺が辛かったのは莉乃さんに嫌われたと思ったから。

 だけど、そうじゃなかったんだと二人が気づかせてくれた。

 莉乃さんが俺を拒絶したのは本意じゃない——四年前に俺を拒絶したことを後悔しているのに、それでもなお拒絶しなくちゃいけない理由があったんだと。


 それだけで、俺はもう大丈夫。


 また拒絶されたとしても二度と折れない。

 むしろ二人の言う通りだとすれば、辛いのは俺より莉乃さんだろう。

 なんとしても莉乃さんを連れ戻して本心を聞き、悠香や夏鈴と同じように、莉乃さんとも叶わなかった恋の答え合わせをしたいと思っている。


「わかった。じゃあ、私たちはもう少しあの人の身辺を調べてみる!」

「調べるだけじゃなくて、時間がある時は尾行もしてみるね♪」

「ありがとう。でも無茶はしないでくれよ」


 もう足をとめる理由はなかった。

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