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【書籍発売中】あの日の恋(×3)が終わってくれない!~思い出の美少女たちと再会したら、恋の続きが始まりました~  作者: 柚本悠斗@小説家
三章 七々咲莉乃

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28話 断られた理由

 その後、二人は爆速で四ノ宮樹の情報を集めてくれた。


 悠香は中学に進学するタイミングで帰ってきていたこともあり、中学校時代の友達が他校に多くいて、その伝手で花北こと花崎北高校の生徒だとわかった。

 夏鈴のクラスには四ノ宮樹と同じ中学校だった人もいて、聞けば中学時代、生徒はもちろん教師からも人望が厚く歴代最高の投票率で生徒会長に就任したらしい。

 男女問わず人気があり、誰もが認める優等生の中の優等生。

 にわかに信じがたい、まるで漫画の主人公みたいな情報ばかり集まってくるのはさておき、二人は探偵よろしく自宅の場所から好きな食べ物まで調べ上げる徹底ぶり。

 詳しい話は週末に猫まみれに集まってするとして、俺も行動に移す。


 学校帰りに向かったのは春名町にある萩原水道設備の事務所。


「ここか……」


 最寄りのバス停を降りて歩くこと十五分。

 名刺に書かれている住所を頼りにやってきたのは住宅街の一角にある事務所兼自宅。一階が事務所になっているらしくガラス張りのドアから中の様子が伺える。

 そっと覗くと中に萩原さんの姿を見つけた。


「こんにちは——」


 挨拶をしながらドアを開ける。

 萩原さんは一瞬だけ気まずそうな表情を浮かべたかと思うと、次の瞬間、見間違えだったんじゃないかと思うほどの笑みを浮かべて俺を出迎えてくれた。


「突然お邪魔してすみません。少しお時間ありますか?」

「もちろん。お茶を淹れるから座って待っててください」


 俺は促されるままに応接用のソファーに腰を掛けて待つ。

 少しすると萩原さんが紅茶の入ったカップを手に戻ってきた。


「お待たせしました。どうぞ」

「ありがとうございます」


 ひと息吐くとすぐに本題に入る。

 なにをしに来たかなんて説明するまでもない。


「猫まみれの水道工事を手伝えなくなったと聞きました」

「実は……年が明けてから急に仕事がたくさん入って、しばらく時間が取れそうにないんです。猫まみれの力にはなりたいんですけど……すみません」


 萩原さんは心の底から申し訳なさそうに頭を下げる。


「お仕事が落ち着いてからでも難しいですか?」

「本当にごめんなさい……」


 それは交渉の余地がないほどの丁重なお断り。

 できれば考え直してほしくて伺ったんだけど忙しいなら仕方がない。

 もともと猫まみれの仕事は利益の出ないボランディアみたいな作業。生活をしていく上で利益がなければやっていけないのは再建後の猫まみれも同じ。

 無理には頼めるはずもなかった。


「わかりました。残念ですけど仕方ありません」


 でも……初めて猫まみれで会った時のことが頭をよぎる。

 あれほどおじいちゃんとおばあちゃんへの感謝を口にしていた萩原さんが、忙しいとはいえ取り付く島もないのは違和感を覚えてしまう。

 萩原さんの二人への想いは本物だったはず。


「それにしても、急に仕事が増えて大変ですね。この時期は毎年忙しいんですか?」

「時期的なものではなくて、地元で顔の利く方から仕事を紹介してもらったんです。今後も継続的に紹介してもらえるらしく他の仕事を受ける暇はなさそうで」

「地元で顔の利く方——?」


 その一言が頭の真ん中で引っ掛かった。

 春名町で顔が利く方といえば心当たりがあり。


「そういえば、この辺りに住んでいるんでしたっけ」

「この辺り……誰の話ですか?」

「春名神社で宮司を務める四ノ宮さん」


 俺はさり気なく世間話的なノリで尋ねる。

 すると萩原さんは明かに表情を凍りつかせた。

 次の瞬間、何事もなかったように笑みを浮かべ直す。


「ええ、この近くです。地元の人はみんな四ノ宮さんのお世話になってます」

「実は水道工事の費用、年始に春名神社でアルバイトをして稼いだんです。その時に宮司の息子さん——四ノ宮樹さんとお会いしたんですよね」

「そ、そうだったんですね……」


 あえて言葉で確認するまでもない。

 四ノ宮樹の名前を出した瞬間、さっき以上に気まずそうな表情を浮かべる萩原さん。その様子や今の話の流れから仕事の紹介者が四ノ宮家なのは明らか。

 水道工事の相談に来ただけなのに思わぬ収穫だったかも。


「今日はこのあたりで失礼します。もし予定が変わってお手伝いしてもらえるようになったら連絡をもらえると嬉しいです。突然お邪魔してすみませんでした」

「こちらこそ……お手伝いはできませんが応援しています」


 断られたのは残念だけど決して無駄足じゃない。

 こうして俺は事務所を後にした。

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