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【書籍発売中】あの日の恋(×3)が終わってくれない!~思い出の美少女たちと再会したら、恋の続きが始まりました~  作者: 柚本悠斗@小説家
三章 七々咲莉乃

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12話 プレゼント交換のち事件

 それから俺たちは、料理を味わいながら楽しいひと時を過ごした。


 みんなと再会した当初を思い返したり、幼い頃の思い出話に花を咲かせたり、これまでの再建活動を振り返ったり、夏休みの海水浴旅行の感想を語ったり。

 短いながら濃厚で充実した日々の話が尽きることはない。

 楽しい時間はあっという間とはよく言ったもの。


 気づけば料理もなくなり菫さんが酔い潰れた頃。


「じゃあ、プレゼント交換しよっか!」


 夏鈴が待ってましたと言わんばかりに声を上げる。

 それを合図にそれぞれ鞄からプレゼントを取り出した。


「でも、どういう感じで交換するんだ?」

「くじ引きでいいんじゃない? 自分のプレゼントが当たったら引き直しってこと」

「そうね。順番は文句はなしってことで、公平にじゃんけんで決めよっか」


 まるで事前に想定していたかのように答える悠香と夏鈴。

 ていうか、たぶん想定なり相談なりしていたんだろう。


 そう思うのは二人揃って俺のプレゼントに視線を向けていたから。

 俺のプレゼントを手にするフェアな方法を考えた末、同じ答えに辿りついたんだろうけど……二人に告白されている身としては胃が痛くて仕方がない。

 どちらに当たってもどちらかは悲しい思いをしてしまう。


「では、お二人の提案通りくじ引きにしましょう」


 プレゼントを狙う二人をよそに無欲でくじを作り始める莉乃さん。

 店内の飾り付けで余った折り紙を四等分に切り、そこへみんなの名前を記入。丁寧に折り畳んで紙袋の中に入れるとシャカシャカと振って準備完了。

 じゃんけんの結果、俺、悠香、夏鈴、莉乃さんの順でくじを引くことに。


「じゃあ、俺から引かせてもらおう」


 紙袋に手を入れて中から一つ取り出す。

 少し緊張しながら開いてみると『莉乃』と書いてあった。

 みんなにバレないように心の中で本日二度目のガッツポーズ。


「これで確率は二分の一。お願い……この先の人生、全ての運を今ここで!」


 紙袋を前に、悠香は祈るように手を合わせながら天を見上げる。

 さすがに全ては捧げすぎだと思うけど本人は真剣そのもの。


「えいっ——!?」


 くじを引いた瞬間、絶望的な表情を浮かべて肩を落とす。

 手から零れ落ちたくじには『夏鈴』と書かれていた。


「気持ちはわかるけど、あたしの名前を見てショックを受けないでよ」


 なんてぼやきながらも満面の笑みを浮かべている夏鈴。

 それもそのはず、自分にチャンスが巡ってきたんだから。


「あははっ。悠香には悪いけど……りっくんのプレゼントは——!?」


 くじを引いた瞬間、魂が抜けたような虚無顔でフリーズ。

 手元を覗き込むとくじには『悠香』と書かれていた。


「「な、なんでよぉ!」」


 お互いのプレゼントを手に揃って悲痛な声を上げる二人。

 出合った頃から幾度となくいがみ合ってきた二人だけど、なんだかんだ、こういう時は息がぴったりだから面白い。まぁ本人たちは全く面白くないだろうけど。

 そんなわけで、残り物には福があるとはよく言ったもの。

 俺のプレゼントは無事に莉乃さんの手に届いた。


「じゃあ、みんなでプレゼントを開けて——!?」


 ほっと胸を撫で下ろしたのも束の間。

 自分で言った瞬間、とてもまずいことに気づいて手がとまる。

 なぜなら、俺と莉乃さんはお互いのプレゼントがなにか知っている。だから、袋を開けた時のリアクション次第で二人に怪しまれてしまう可能性が高い。

 もっと言えば一緒に選んだと気づかれてしまうかもしれない。


 考えすぎだと思われるかもしれないが、こういう時の女の感が鋭いのは三人と再会してから何度も痛感している……俺がみんなを好きだったことがバレているように。

 二人に悟られないよう、こっそり莉乃さんにアイコンタクト送る俺。

 莉乃さんは答えるように口元をほころばせてから袋を開ける。


「わぁ……とても可愛らしい手袋ですね!」


 すると自然な感じに微笑みながら喜びの声を上げた。


「ありがとうございます……一生大切にしますね」


 嬉しそうに胸元で手袋を抱きしめる莉乃さん。

 一生はさすがに無理だと思うけど。


「喜んでもらえてよかったです」

「りっちゃんも開けてみてください」


 今度は俺が莉乃さんのプレゼントを開ける。


「これ……マフラーじゃないですか。ちょうど欲しいと思ってたんです!」


 少し大げさに喜んでみせながらマフラーを首に巻く。

 肌に当たる柔らかな感触が心地よくて暖かい。


「ありがとうございます。大切に使わせてもらいますね」

「はい。気に入っていただけたようでなによりです」


 どうだろう……いい感じに初見のふりができたんじゃないだろうか?

 恐る恐る二人に視線を送ると、それはもう羨ましそうというか悔しそうというか、嫉妬の極みともいえる複雑そうな表情を浮かべていた。


「「ぐぬぬぬぬ……」」


 どうやらバレてないようでひと安心。

 一瞬で俺の意図を汲んでくれるのが莉乃さんらしい。


 こうして察してくれたのは、みんなで上毛カルタをした時以来。

 バチバチにやりあう悠香と夏鈴の勝負を丸く収めようと、引き分けにさせるべく莉乃さんに視線を送ると、その意図に気づいて最後の読み札を教えてくれた。

 思えば昔から、莉乃さんは俺の気持ちを察してくれていた。

 みんな揃って自己紹介をした時も、莉乃さんは『よくりっちゃんとハグしていました』と暴露していたけど、ハグだって俺の気持ちを察してくれていたから。


 いつだって俺の一番の理解者は莉乃さんだった。


「まぁ仕方ないか……」

「今回はフェアだしね」


 素直に諦めてお互いのプレゼントを開ける悠香と夏鈴。

 悠香が当てた夏鈴のプレゼントはお洒落なハンドタオルのセットで、夏鈴が当てた悠香のプレゼントは今の季節にピッタリなハンドクリームとリップのセット。


「このハンドタオル可愛い。夏鈴、ありがとう!」

「あたしの方こそ、最近お肌の乾燥が気になってたんだよね♪」


 お互いのプレゼントを喜び合う二人。

 やっぱり本当は仲が良いから微笑ましい。

 こうしてプレゼント交換を終えたのは二十時過ぎ。

 概ねクリスマスのイベントは終えたけど帰るには少し早い。


「まだ時間もあるし、せっかくだから少し来年の話でもするか」


「そうだね。年内に集まるのは今日が最後だろうし」


 悠香に続いて夏鈴と莉乃さんも深く頷く。

「おかげさまで片付けも掃除も終わって、いよいよ年明け以降は店内のリフォームに

 取り掛かるわけだけど、そうなると問題になってくるのはお金だよな」


 何度も言うようだけど猫まみれは築百年を超える古民家。

 片付いて綺麗になったとはいえ老朽化が激しいのは言うまでもなく、掃除をしながら修繕が必要な個所をピックアップしておいたけど結構な個所があった。

 ぱっと思いつくだけでも壁紙や床板の張り替え。

 崩れ落ちた外壁の修理や雨樋の交換も必要。

 どのくらいお金が掛かるか正直見えない。


「お金の話をいえば開業資金も必要だけど、オープンするのは数年後の話だから別で集めるとして、直近はリフォーム費用だ。とりあえず、俺が今まで溜めてたお小遣いやお年玉を使うとして、足りない分はアルバイトで稼ごうと思ってる」


 プロは高くつくから頼むのは必要最低限。

 自分たちで可能なところはできる限りDIYでやる。

 来年の春くらいから平日の放課後はアルバイトをして、毎月お給料が入ったらリフォームに必要な材料を買って、みんなで少しずつリフォームを進めたい。


「じゃあ、私たちもアルバイトした方がいいよね!」


 悠香はやる気満々で言ってくれたんだけど。


「そこは、みんなの判断に任せるよ」

「水臭いな。そこは一緒に頑張ろうって言ってよ」

「今でも充分頑張ってもらってる。無理して体調を壊したら本末転倒だし、勉強をする時間だって必要だ。みんな再建活動以外にやることもあるだろうからさ」


 遠慮しているわけじゃなく本心で思っている。

 悠香は母親と無理はさせないって約束しているし、夏鈴も勉強を疎かにしないって約束の上で再建活動を許可してもらっている手前そこまでは頼めない。

 ここは俺の頑張りどころだろう。


「でも、凛久だけに頼るのもな……」

「気にするな。気持ちだけで嬉しいよ」


 その後、俺たちはリフォームについて話し合いを進めた。

 それぞれ気になっていた場所を共有したり、なにが必要かを話し合ったり。どこから優先して修繕を進めようか相談すること一時間。

 気づけば二十一時を過ぎていた。


「今日のところは、このくらいにしておこう」


 明日から冬休みとはいえ、そろそろお開きにしないと親が心配する時間帯。

 宴もたけなわ、名残惜しいけど手分けして片付けを始める俺たち。


 女子に洗い物をお願いし、ゴミを集めていた時だった。

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