10話 ミニスカサンタ×3
猫まみれに到着し、玄関のドアを開けた瞬間だった。
「みんな、聞いて——!?」
「「「メリークリスマス!」」」
俺が声を上げるより早く店内に激しい音が響く。
目の前にはクラッカーを手にしている女子三人の姿あった。
「お、おお……」
ほんのり火薬の匂いが漂う中、あまりの驚きに思考が停まる。
もちろんクラッカーで盛大に出迎えられたのも理由なんだけど、なにより目の前にいるのが生足へそ出しミニスカ姿のサンタクロース(×3)だったから。
いつから猫まみれはコスプレ喫茶になったんだろう?
いや最近はコンカフェっていうんだっけ?
「えっと……その格好は?」
「クリスマスといえばサンタに決まってるでしょ!」
意気揚々と語りながら恥ずかしげもなく見せつけてくる夏鈴。
確かにクリスマスといえばサンタクロースなのはおっしゃる通りなんだけど、まさか美少女三人がサンタコスをしているなんて思わなかったからマジ目の保養。
ちなみに足元にいるあげぱんたちもサンタの格好をしている。
「どうどう? 似合ってる?」
「ああ。よく似合ってる」
「やった。ありがと♪」
夏鈴は嬉しそうに俺の右腕に抱き着く。
「わ、私はどうかな……?」
「もちろん悠香も似合ってるよ」
「へへっ。ありがとう」
夏鈴と張り合うように悠香も左腕に抱き着いてくる。
いつもなら離れてくれと言うところだけど今日はクリスマス。両腕に感じる女の子特有の柔らかな感触はサンタさんからのプレゼントってことでこっそり堪能。
鼻の下を伸ばさないように堪える俺をよそに。
「「…………」」
茹で上がったタコみたいに顔を赤くして俯いている莉乃さん。
片手でお腹を隠し、もう片方の手でスカートを必死に押さえているんだけど、コスプレ衣装の防御力の低さというか布面積の少なさからか微妙に隠しきれていない。
特に莉乃さんの衣装は二人よりも布が少ないからなおさら。
「あ、あまり見つめないでください……」
そう言われても隠れているものほど見たくなるのが人の性。
莉乃さんには申し訳ないんだけど、照れまくっている女の子の表情を見ていると、男の本能というか自分の中に眠っていたS心が覚醒していくような気分。
「せっかくなので莉乃さんのサンタ姿もちゃんと見たいですね」
「わ、わたしに手をどけろと言うんですか——!?」
今にも泣きそうな表情が俺の悪戯心を掻き立てた。
「そうですね。ぜひお願いします」
「りっちゃん——!?」
我ながらまさかの一言に声を上ずらせる莉乃さん。
なんかもう恥ずかしいような照れているような泣いているような、とにかく羞恥の極みのような表情を浮かべながら『許してください……』と瞳で訴えてくる。
莉乃さんには申し訳ないけど今の俺にその表情は逆効果です。
「こういうのは隠してる方が逆に恥ずかしいんですよ♪」
仕舞には夏鈴まで悪ノリして莉乃さんをいじり始める。
「でも莉乃さんの気持ちもわかるな……気にしないようにはしてるけど、私の衣装もスカートが短すぎて油断すると下着が見えちゃいそうだもん」
莉乃さんほどじゃないにしろ悠香の衣装もかなりきわどい。
「莉乃さんだけならまだしも悠香まで、これだからお子様は……」
すると夏鈴は呆れ半分、聞きなれたフレーズとともに溜め息を漏らす。
「せっかくのクリスマス、露出多めのコスプレ姿でアピールしようって時に本気で恥ずかしがるなんて本末転倒もいいところ。恥じらいは大切だけど、こういう時は恥じらうふりして下着をチラ見せするのが男の子にはウケるのよ!」
「な、なるほど……!」
納得する悠香をよそに、夏鈴は俺の耳元で『ね……りっくん♪』と甘く囁く。
いつもの如く思春期男子の本音に理解がありすぎる夏鈴は、まるで心を読んだんじゃないかと思うほど的確に俺の好みを代弁する。
大切なのはチラリズムで露骨なエロはエロ足り得ない。
そんな俺の持論さておき、目に涙を浮かべている莉乃さん。
なんだろう……女の子の泣き顔に興奮を禁じ得ない。
性癖という名の新しい扉が開いてしまいそう。
「そもそも、なんで女性の下着が可愛く作られてるか知ってます?」
「なんで……なにか特別な理由があるのでしょうか?」
「当然、男の子に見せるためです!」
間違いではないんだろうけど暴論すぎる。
「女性の下着の中には、明らかに下着としての機能よりもデザインや露出を意識したものがたくさんある。過度にセクシーだったり煽情的だったり。勝負下着なんて言葉があるように、それらは全て男の人に見せて魅せるために他なりません!」
「なるほど。そうことだったんだ!」
「確かに、言われてみれば……」
夏鈴の言葉を一ミリも疑うことなく真に受ける二人。
その後も女性の下着が男性の好みに合わせて作られていることを力説する夏鈴。全てが嘘でもないんだろうけど、隣で聞かされる男としては結構気まずい。
でも、なんで莉乃さんはスカートの短い衣装を選んだんだろう?
素朴な疑問が頭をよぎった時だった。
「そもそも莉乃さん、自分で選んだ衣装じゃないですか」
「なんだって——?」
聞き捨てならない台詞に思わず突っ込む。
誰よりも過激な衣装を……莉乃さんが自分で選んだ!?
「三人でパーティーグッズを買いに行った時、せっかくならサンタコスして凛久を驚かせようって話になったの。最初はみんな無難な衣装を選んだんだけど、夏鈴が派手なやつを選んだから私も張り合って、そしたら莉乃さんも布が少ないのを選んだの」
そうして張り合っているうちにみるみる布は少なくなっていき……結果、莉乃さんが一番きわどい衣装を選んだらしい。
控えめで照れ屋な莉乃さんが……マジか。
「ほらほら、恥ずかしがってないで見せつけてやってください♪」
「そうですよ。せっかく買ったんだから見せてあげないと!」
仕舞には悠香まで莉乃さんで遊び始める。
「ううっ……」
俺の期待に満ちた眼差しと二人の圧に観念したんだろう。
ゆっくりと両手を下ろして露わになった莉乃さんのサンタ姿。
お腹周りと太腿はもちろん、肩回りも大きく空いている露出度の高いデザイン。まるで水着のような衣装を前に、俺の体温は冬真なのに真夏のように急上昇。
いやらしさを超越して神々しさすら覚える。
「ちょっと写真を撮らせてもらっていいですか?」
「しゃ、写真ですか——!?」
もはや恥ずかしさで冷静な判断ができない莉乃さん。
悲鳴にも似た声を上げながら無言で小さく頷く。
「じゃあ、遠慮なく」
スマホを取り出し連射モードで撮りまくる。
もちろん速攻でクラウド保存してバックアップ。
前に夏鈴の水着姿を保存した時と同様に、この写真は天崎家の家宝として今後数百年にわたり子々孫々まで命脈を絶やすことなく受け継がせていくことにしよう。




