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【書籍発売中】あの日の恋(×3)が終わってくれない!~思い出の美少女たちと再会したら、恋の続きが始まりました~  作者: 柚本悠斗@小説家
三章 七々咲莉乃

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5話 プレゼント選び

 改めて、どんな物があるかじっくり見てみようということで、化粧品エリアからアクセサリーショップ、婦人靴から財布やバッグなどの小物エリアを順に回る。

 色々な商品を眺めながら莉乃さんと一緒に歩いて思うこと。


 なんだろう……こうしていると時期が時期だけにカップルみたい。


 その証拠にアクセサリーショップを眺めていると、女性の綺麗な店員さんに『彼女さんへのプレゼントですか?』と一度どころか二度も声を掛けられる。


「彼女さんへのプレゼントをお探しですか?」


 そんなことを考えているうちに三度目のお声がけ。

 その度に違うと答えているんだけど……気のせいだろうか?


「莉乃さん、なんだか嬉しそうにしてません?」

「そうですか? いつも通りだと思いますけど」


 そう言うわりにはいつもより口角が上がり気味だと思う。

 それどころか明らかにいつもよりご機嫌な莉乃さん。具体的に言うと、一歩ごとに頭の上で『♪』マークがぴょんぴょん跳ねているような感じで可愛らしい。

 こんな嬉しそうにしている莉乃さんは初めて見たかも。


「なにかいいことでもあったんですか?」

「はい。ありました!」


 良い返事だけど理由は言わない莉乃さん。

 まぁご機嫌なのはいいことだよなと思いつつ。


「さすがに百貨店で扱ってるアクセサリーは高くて手が出ないですね」

「そんなことありませんよ。このあたりは高額な商品が多いですけど、向こうのショップは学生でも購入しやすい価格のものも多いです」


 莉乃さんに案内されて別のショーケースを覗き込む。

 そこには数千円くらいのリーズナブルなアクセサリーが並んでいた。


「確かに、このくらいならの価格ならプレゼントにいいですね。でも……アクセサリーって好みが分かれるから、プレゼントするにはちょっと難しい気がします」

「それはあるかもしれませんね」


 事前に好みを把握していないと当たり外れが大きそう。


「ちなみに莉乃さんは普段アクセサリーとか着けるんですか?」

「いいえ。いつか着けてみたいという憧れはあるんですけど」

「ちなみに、この中ならどれを着けてみたいですか?」


 参考というか興味本位で聞いてみる。


「そうですね……」


 莉乃さんはショーケースの中を覗く。

 するとなにかを見つけた様子で瞳を輝かせる。


「これ、とても可愛いいです!」


 指を刺したのは猫をモチーフにしたペアのネックレスだった。

 チェーンの先に付いているプレートには猫の姿が刻まれていて、二つを並べると背中を向け合う猫の尻尾がハートの形を作るというお洒落なデザインのものだった。

 アクセントにワンポイントの誕生石があしらわれているのもいい感じ。

 素材はステンレスだから価格も手頃で。


 確かに、猫を愛する莉乃さんが好きそうな一品だった。


「確かに、莉乃さんにぴったりだと思います」

「ありがとうございます。きっとりっちゃんも似合いますよ」

「俺がネックレスを……ですか?」

「はい。なにかと猫に縁のある私たちに相応しいと思います」


 自分がネックレスを着けている姿なんて想像したこともなかったから驚いたけど、俺はともかく、もし個別のプレゼントなら莉乃さんの分はこれで決定だったな。


「次に行きましょうか」

「そうですね」


 あまり長居すると四度目の声掛けをされてしまいそう。

 アクセサリーショップを離れながらプレゼントの続きを考える。


「化粧品みたいな消耗品だと味気ないですよね」

「せっかくなら形に残るものがいいと思います」

「となると、バッグとか財布とかですか?」

「季節的に冬小物などはどうでしょう?」


 冬小物っていうと手袋やマフラーか。


「確かに……いいかもしれませんね」

「向こうに売り場があるので行ってみましょう」


 莉乃さんは勝手知ったる様子で案内してくれる。


「もしかして莉乃さん、この百貨店によく来るんですか?」

「最近はそうでもありませんが、小さい頃によく祖父母のお買い物に付いてきていたんです。今は両親と、季節の贈り物をする時に利用することがあるくらいです」

「そりゃ詳しいわけですよね」


 代々家族御用達の百貨店ってところだろう。

 最近知ったんだけど、莉乃さんの家は地元で有名な地主だったりする。

 子供の頃は気づかなかったけど、莉乃さんの家が立派な一軒家だったことや、おじいちゃんとおばあちゃんが猫まみれを経営していたことや、自腹で子供たちのお世話をしていたことから、もしかしたら裕福な家庭なんじゃないかと察してはいた。

 それとなく聞いてみたら、やっぱり名家のお嬢様と発覚。


「まぁでも、納得だよな」


 幼心に感じていた落ち着きと育ちの良さ。

 とても丁寧な言葉遣いと美しい所作に立ち振る舞い。

 それでいて裕福であることや名家であることを誇示することなく、人に対しても猫に対しても慈愛の心をもって接するホスピタリティ精神の溢れる人。

 本来は俺なんかがお近づきになれる人じゃない。


 幼かったとはいえ——。


「我ながら分不相応な恋をしたもんだ」


 思わず苦笑いを浮かべて言葉を漏らす。

 すると莉乃さんは不思議そうに首を傾げた。


「なにか言いましたか?」

「いえ。さぁ見てみましょう」


 笑みを浮かべ直して冬小物のエリアに足を踏み入れる。

 綺麗にディスプレイされている商品を順番に眺めていた時だった。

 莉乃さんは不意に足をとめると棚に展示してあった手袋を手に取る。それは今日の服装にも良く似合いそうな、猫の足跡をあしらった可愛い手袋だった。


「気に入ったんですか?」


 いつも控えめな莉乃さんが珍しく瞳を輝かせている。

 聞くまでもなくお気に召しているのは明らか。


「とても気に入ったんですけど……」

「どうかしたんですか?」

「実は先日、冬用の手袋を買ったばかりなんです」


 莉乃さんは残念そうに呟きながらバッグに手を忍ばせる。

 取り出したのは、見るからに新しい手袋だった。


「二つあって困ることはないですし、買ってもいいんじゃないですか?」

「うーん……どうしましょう」


 莉乃さんは難しい表情を浮かべて考える。

 すると名残惜しそうにしながら手袋を棚に戻した。


「せっかくですが、やめておきます。いくら気に入ったとはいえ、すでに持っているものを買うのは贅沢です。今回はご縁がなかったということで諦めましょう」


 確かに必要のないものを買うのは贅沢かもしれない。

 縁がなくタイミングも悪かったと言えばそれまでだろう。

 でも、未だ手袋から手を離せない莉乃さんを前に言葉が漏れた。


「俺のクリスマスプレゼント、これにします」

「え……?」


 莉乃さんは驚いた様子で俺を見つめる。


「確かに必要のないものを自分で買うのは贅沢かもしれません。でも、運よくクリスマスプレゼントで当たってしまったら仕方ないですよね」


 俺は莉乃さんから手袋を受け取る。


「もちろん莉乃さんが当たるとは限りませんから、もし悠香や夏鈴が当てたら本当に縁がなかったんだと思います。でも、当たったら遠慮せず使ってくださいね」

「りっちゃん……」


 莉乃さんはそっと頷く。


「わかりました。その時は運命と思い一生大切にします」


 さすがに一生は無理だと思います。

 なんて、そんな野暮なことを言うつもりはない。

 この手袋が誰に当たるかはわからないけど、莉乃さんのもとへ届くといいなと思いながらお会計を済ませ、プレゼント用に可愛いラッピングをしてもらった。


 うん……莉乃さんのおかげで良いプレゼントが買えたと思う。


「次は莉乃さんのプレゼントを選ぶ番ですね」

「実は、もう決めてあるんです」


 莉乃さんは迷うことなく冬小物売り場の一画へ。

 棚に並べられていたのは色々なカラーとデザインのマフラー。

 その中で莉乃さんが選んだのは、男女問わず使えそうなシンプルなデザインで、かつ俺が買った手袋と同じ猫の足跡をあしらったマフラーだった。

 たぶん同じブランドなんだろう。


「最近寒くなってきたのに、みなさんマフラーをしていなくて首元が寒そうだなと心配していたんです。これならりっちゃんも使えるデザインだと思います」

「ちょうど欲しいと思ってたんですよね」

「でしたら決まりですね」


 まるでお互いのプレゼントが当たるかのような会話を交わす俺たち。

 当たらない確率の方が高いのにどうしてだろうな。

 この時は当たると信じて疑わなかった。

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