プロローグ
——忘れられない恋がある。
誰しも思春期を迎えれば、そんな恋の一つや二つあるだろう。
誰もが憧れる学校一の美少女や、同じ委員会で一緒だった女の子。毎朝駅で見かける他校の女子だったり、アルバイト先で仕事を教えてくれる優しい先輩だったり。
未だに忘れられず夢にまで見る女の子がいると思う。
改めて、俺の場合はそんな女の子が三人いた。
それらの恋は本来、思い出として懐かしむだけのはずだった。
過ぎ去りし日の想いを日記に綴るような、もしくは今も消えない悲しみを誤魔化すために笑い話にするような、報われなかった青春の一ページとして思い出す記憶。
いつかどこかで再会できるような運命みたいなことはありえない。
数年掛けて未練を消すことができた、ある日のことだった。
——俺は幼い頃に好きだった『三人の女の子』たちと再会した。
そのうちの一人——二番目に好きになった女の子こと一色夏鈴。
彼女と猫まみれで再会した時は、あまりにも別人すぎて気づかなかった。
黒かった髪は金髪に変わっていて、控えめで恥ずかしがり屋だった性格は別人のように大胆かつ積極的になり、同一人物とは思えないほどの美少女に成長していた。
当然、昔好きだった女の子と再会してなにも起こらないはずがない。
紆余曲折を経て、夏鈴と当時を振り返ってわかったこと。
それは六年間、ずっと勘違いをしていたということ。
あの日——俺は失恋なんてしていなかった。
これが叶わなかった初恋の答えだった。
こうして夏鈴とも恋を振り返り、叶わなかった恋の答え合わせは残り一つ。
冬の足音が近づいてきた頃、俺は好きな人に拒絶された疑問と向き合うことになる。
はたしてこれは運命の再会か、それとも恋の神様の悪戯か。
あの日の恋は、未だに終わってくれないらしい。




