第16話 助の巻
思いもよらぬ悪魔の大蛇ジャジャーンの破壊力に、東野連合軍の一斉攻撃はまったく歯が立たなかった。
そしてジャジャーンは再び呪いをかけて体を操る為に、少しずつ春花の元へ近づいて行った。
はたして東野連合軍は、大蛇ジャジャーンに勝つことが出来るだろうか?
東野連合軍とヘビ兵が激闘している間、ジャジャーンは伏夜と春花を睨みながら少しずつ近づいて来た。
「春ちゃん春ちゃん、早く目を覚まして!」
すると呪いをかけられて気を失っていた春花が、頭をおさえながら目を覚ます。
「う、ううん。 あれ? 伏ちゃん、伏ちゃんなの?」
「春ちゃん、やっと気づいたのね。 よかったぁ、このまま起きないのかと思ったよ」
「伏ちゃん、ここはどこ? 私、変な大きな蛇に襲われて、それから全く覚えてなくて」
「やっぱり何も覚えていないのね。 春ちゃんは呪いをかけられて、春ちゃんの体の中であの大蛇が操っていたのよ!」
「あの大蛇が私の体を操っていた? それから私はどうなったの?」
「春ちゃんの体を操っていた大蛇はこの東野郡を制覇して、私たちを支配しようとしてたのよ。 だから今、東野連合軍が必死で大蛇と戦っているのよ!」
春花は目の前にいる大きなジャジャーンを見て失笑する。
「またまたまた伏ちゃん、嘘つかないでよ。 私はこれでもミス東野郡と言われるくらい、なかなか人気のある女の子なのよ。 あんな大きくて気持ち悪い蛇が、この細くて美しい私の体に入るはずがないじゃない」
伏夜 目が点になる。
「東野郡が大蛇にやられるというこの危機的状況で、あんた意外と余裕なのね。 じゃあ、もうしばらく気を失ってみようか?」
ヘビ兵の大群を倒すだけで余裕が無い東野連合軍は、ゆっくり伏夜と春花に近づくジャジャーンの歩みを止める方法が見つからなかった。
「皆の衆、春花様がまたジャジャーンに狙われそうで大変でござる! これからどうするでござるかぁ!」
「ヘッ、ユズポン、ビビってんじゃねぇぞ! 東野連合軍の力で、絶対に伏夜様と春花さんを守るんだよ!」
「ケロケロ! ケロケロ!」
「ケロイチ、いちいちケロケロうるさいねん! さっきから何ゆうとんのか分からへん!」
「イーグもニャン丸も、今はケンカしてる場合じゃにゃあい! にゃんとしても、あのジャジャーンの歩みを止めにゃきゃにゃらにゃい!」
「でもニャン蜜さん、それをしようとするとヘビ兵が邪魔をします。 もうこれ以上どうしらよいか分かりませんね」
「ケッケッケーロ、ケーロケロ!」
「ニャン蜜さんとホーホーさん。 軍師4人集まってもう一度作戦を立て直した方がいいと、八ケロ士軍師のケロハチが申しております」
「ガンポンはケロケロで言葉が分かるの、にゃんで?」
荒れた戦場に不穏な空気が流れたその時だった。
ヒューン! ドーン! ドーン!
「なんだぁ!」
大和田村の遠くの方から大砲の砲弾が数発飛んで来て、ジャジャーンの長い体に次々と爆発した。
「ギャオーン! だ〜れ〜じゃ〜!」
そして遠くから、どこか聞いた事あるようや声が聞こえてきた。
『皆んな〜ん! 待たせたな〜ん!』
『皆んなぁ、お待たせポンだよ〜!』
砲弾を撃っている方向を見て、八ニャン剣を握りしめながら呟くニャン太郎。
「待たせたなん? お待たせポン? その声は!」
遠くで砲弾を打っていたのは、船で里見村から逃げていたニャン助とクーポンだった。
「ニャン助とクーポン!」
ヘビ兵と戦っている八ニャン士と八ポン士は、ニャン助とクーポンの姿を見て叫んだ。
「クーポン、おんどれは元気にしとったんか!」
「ヘッ、ニャン助。 お前、いい時に来やがったぜぇ!」
「八ポン士の皆んなぁ、今まで大和田村ポンを離れていてごめんポンだよぉ!」
「ニャン太郎ぉ! 俺の首の玉がいきなり光ってん、お前の声が俺にも届いたんだよ〜ん!」
ニャン助が言っている声とは、五重塔の戦いで八ポン士から負けそうになった時、ニャン太郎が力強い声で八ニャン士に叫んだあの言葉だった。
『皆んな、こんな悪いヤツらに絶対に負けるなぁ! 僕たちは里見村と伏夜様を守る八ニャン士なんだぁ!』
そしてニャン助は最新の大きな大砲を、ドヤ顔しながら自慢していた。
「へへへ! そして俺も八ニャン剣の柄を右に回したらん、何だか凄くカッコいい大砲になったんだよん!」
「ニャン助、僕の声が君にも届いていたんだね」
八ポン士もクーポンの元気な姿を見て安心して笑った。
「クーポン殿、よう来られたよう来られた。 無事でなによりでござる!」
「ガッハッハ、俺はクーポンが必ず大和田村に帰って来ると信じてたってか。 はぁ眠い眠い!」
「八ポン士の皆んな、ありがとうポンだよ! これから皆んなの為に、クーポン頑張るポンです!」
ニャン蜜とガンポンが目が光ると、東野連合軍に司令を出した。
「よしニャン助! その自慢の大砲で、春花さんを襲うジャジャーンの動きを止めてくれにゃあ!」
「東野連合軍につぐ! これより東野連合軍はバラバラになって戦わず、各剣士で『槍ヶ岳の陣』になって下さい。 ジャジャーンは大砲でおさえ、我々はヘビ兵の大群を全滅させるのです!」
「おお!」
息を吹き返した東野連合軍は八ニャン士・八ポン士・八チョウ士・八ケロ士がそれぞれ槍ヶ岳の陣になり、あらゆる方向から飛んでくるヘビ兵の大群を次々と倒していった。そしてニャン助とクーポンは大量の砲弾を撃ち、ジャジャーンを伏夜と春花に近づけないように狙って打っていた。
「くらえん、くらえ〜ん!」
「止まれポン、止まれポ〜ン!」
「ヘビ兵を1人残らずやっつけろ!」
剣士による4つの槍ヶ岳の陣で、ヘビ兵は次々と倒れていった。
しかし硬いウロコで覆われるジャジャーンには、ニャン助の砲弾など全く効かなかった。
「俺の体に〜、そんな弾など効か〜ぬ〜わ〜! そろそろ春花の体に〜呪いをかける〜か〜の〜!」
また不気味な声を出しながら春花に近づいてくるジャジャーンに、ニャン丸がイライラしながら八ニャン剣を振り回していた。
「チッ、めんどくせぇ蛇だぜぇ! どうせウロコが硬い体なら、そのまま固まってしまえばいいじゃねえかよ」
ニャン丸の荒々しい言葉を聞いて、ニャン蜜の耳がピクッと動く。
「そうか、それにゃん!」
ニャン蜜は首についている白い玉を握り、大砲を打っているニャン助に通信した。
「ニャン助、聞こえる? ジャジャーンの体は砲弾が効かにゃいから、アイツを固めるにゃんか砲弾はにゃい?」
「ニャン蜜ちゃん、固める弾はあるよ〜ん!」
「よし! それを早く打って、アイツの歩く動きを止めてくれにゃあ!」
「あいよ〜ん!」
そしてニャン助が打った黄色い砲弾がジャジャーンの体に当たると、弾が当たったところが次第に固まっていった。
「シッシッシ、ニャン助特製の『アロンニャルファZ』だよ〜ん! あらゆるモノを固めてしまうのだん!」
「キャー! ニャン助さん、素敵ポンポンですよぉ!」
「よし! にゃかみはにゃんだかよく分かんにゃいけど、そいつをドンドン打ってアイツを固めるにゃあ!」
「あいよ〜ん」
ニャン助とクーポンはアロンニャルファZの砲弾を次々と大砲を打つと、ジャジャーンの体が半分以上固まっていった。
「ギャオーン! う〜ご〜け〜ん! だが、こんなモノすぐに壊してや〜る〜!」
ジャジャーンが力を入れてブルブルと体を震えると、アロンニャルファZで固まっていた所が少しずつ割れ始めてきた。
「やばい、固まっていた所が割れてしまう! どうしよ?」
固まっていた所が崩れ落ちるのを見て焦っていたその時、ニャン太郎の耳にあの優しくて美しい声が聞こえてきた。
『ニャン太郎、今です! 白鳳剣をジャジャーンの額に刺しなさい!』
「大神猫様、分かりました! ユズポンとイーグとケロイチ、こっちに来て!」
「どなんしたんや、ニャン太郎!」
「ジャジャーンの体を固めているアロンニャルファZが持たない。 今のうちに、もう一度ジャジャーンの額に剣を刺すんだ!」
「でもニャン太郎殿、どうするでござるか? あそこまで飛ぶのに時間がかかるでござる!」
「ケーロケロ?」
「だから4人のパワーを最大に使って、あの傷口まで真っ直ぐに飛ぶ! これは一発勝負だ!」
「おお!」
そしてイーグの肩の上にケロイチ、ケロイチの肩の上にユズポン、ユズポンの肩の上にニャン太郎が乗った。
「伏夜様、その白鳳剣を僕に下さい!」
「ニャン太郎、アイツをやっつけて!」
伏夜は白鳳剣を投げてニャン太郎が受け止めると、1番下にいたイーグが叫びながら飛んだ。
「よしゃあ! ニャン太郎、行くでぇ!」
イーグは力を出し切るまで、3人を背負って高く飛んだ。
「俺の力はここまでやん。 ケロイチ、はよ飛べ!」
今度はケロイチが2人を背負って高く飛んだ。
「ケロケーロー!」
ケロイチが力を出し切ると、今後はユズポンがニャン太郎を背負って高く飛んだ。
4人が素早く飛んで近づいて来るのを見たジャジャーンは、慌てて8本の長い舌を出した。
「な〜に〜を〜、こしゃくな〜!」
ジャジャーンは長い8枚の舌で弾き飛ばそうとすると、ユズポンが二刀流の剣で素早く切った。
「ギャオーン!」
「ニャン太郎、長い舌は拙者が片づけるでござる。 おぬしは高く飛ぶでござる!」
「分かった、ユズポン! ニャン太郎ジャ〜ンプ!」
最後にニャン太郎は靴からバネを出し、ジャジャーンの上まで高く飛んだ。
「ギャオーン! し、しまった〜!」
空高く飛んだニャン太郎はジャジャーンの頭の上に乗り、白鳳剣を構えて素早く剣を振った。
「白鳳剣『十文字切り』!」
そしてニャン太郎はジャジャーンの額を十文字に切った場所に、力強く白鳳剣を突き刺した。
「くらえぇ、ジャジャーン! 正義は僕たちだぁ!」
白鳳剣を刺されたジャジャーンは大声で叫び、苦しみながら額から燃えていった。
「ギャオーーーン!」
ジャジャーンの頭から体へと燃えていくと、ヘビ兵の体も次々と燃えていった。
「キャイーーーン!」
激しく燃え上がるジャジャーンとヘビ兵の大群を見た伏夜と春花は、抱きながら大声で泣き叫んだ。
「やった、勝ったぁ! 勝ったよ、春ちゃん!」
「伏ちゃん、やったね! 勝ったぁ!」
伏夜と春花は抱き合って喜ぶと、東野連合軍も全員大声を出して喜び合った。
「やったぁ! 東野連合軍の勝利だぁ!」
遠くにいるニャン助とクーポンも、抱き合いながら喜んでいた。
激しく燃え上がる悪魔の大蛇ジャジャーンを、伏夜と春花と東野連合軍は凛々しい顔をしながらいつまでも見つめていた。
最後の最後にニャン助くんとクーポンちゃんが助けに来てくれましたね!
悪魔の大蛇ジャジャーンを倒して、東野連合軍の大勝利です!
ちなみにニャン助が作った『アノンニャルファZ』は危険でどこにも売っていませんのでご注意下さい。
いよいよ最終話「祝の巻」をお送りします。
東野連合軍の感動的なフィナーレ・・・のはず?
お楽しみニャン!




