第10話 戦の巻
いよいよ東野郡大戦争が始まった!
里見村と由美村の同盟軍、そして大和田村と中谷村の同盟軍はそれぞれ東野川の河川敷に陣をはり、お互い睨み合っていた。
はたして、東野橋でどんな戦いが始まるのだろうか?
朝の東野郡は遠くが見えないほどの濃い朝霧で包まていた。その霧がサーッと引くと、お互いの同盟軍が東野川を挟んで睨み合うように陣を組んでいた。
伏夜を大将とした里見由美村同盟軍。
八ニャン士の女軍師ニャン蜜と八チョウ士の軍師ホーホーを中心に、この戦いの作戦を立てる為に軍議をひらいていた。
「ニャン蜜ちゃんとホーホーさん、この戦いはどのように進めるの?」
「はい、伏夜様。 敵はおそらく前線に八ケロ士を構えて、東野橋を渡りにゃがらこちらに攻撃してくるかと思いますにゃ。 そして河川敷の向こう側には、八ポン士と大和田軍の大将である春花さんがいるかと思いますにゃ」
「伏夜様、そこで我々八チョウ士が前線にいる八ケロ士と一騎打ちで戦い、後方にいる八ポン士には八ニャン士が戦っていただきます」
「え? 八チョウ士だけで、あの奇妙な八ケロ士を倒すなんて大丈夫なの?」
まだ何も把握していないニャン太郎のその軽い言葉に、イーグが鋭く睨みながら激しく切れた。
「おいクソガキッ、ワシらを誰や思とんねん! 俺は昨日の『クーポン救出作戦』で逃げてしもうた自分に、ずっとイライラしてしゃあないんや!」
「す、すみません、イーグさん。 怒られちゃった」
「ワシもイーグと同じ気持ちぜよ。 ニャン蜜のネェちゃんよぉ、ワシらぁで八ケロ士に一斉攻撃を仕掛けりゃあええがやな?」
「ホク、違うにゃん。 一斉攻撃じゃにゃく、八チョウ士は少しずつ出て行って八ケロ士を混乱させるんにゃん」
「八ケロ士を混乱やと? どういうことやねん?」
一方春花を大将とした大和田中谷村同盟軍では、八ポン士の軍師ガンポンを中心に軍議をひらいていた。
春花は昨夜のクーポン脱走の件で怒りが収まらず、体を震わせながらイライラしていた。
「おのれ、里見村の猫どもが。 ガンポン、里見村はどのように攻めるのだ?」
「はっ! まずはクローン蛙の八ケロ士を前線に出し、里見村を一斉に攻撃いたします」
ガンポンはそう言いながら、後ろで整列している八ケロ士に指をさした。
「ケロッ!」
八ポン士は春花を囲みながら円陣になると、八ポン士リーダーのユズポンがテーブルの上に広げてある地図を見ながら指をさした。
「ガンポン、そなたの考えでは橋の上で八ケロ士を横に並べ、敵の攻撃を塞ぐ作戦なのだな?」
「フッフッフ。 ユズポン、あなたの考えは浅いですよ。 それだけでは防御するだけで、全く攻撃にはなりません」
「ほうなこと言うたら、バラバラに里見村を総攻撃か? そらぁぶち大暴れできそうで、なんだか血が騒ぐのう!」
「デコポン、それは美しくない戦いですね。 わたくしの美学に反します」
「戦いに美学があるってか? じゃあどうしたらいいってか? はぁ眠い眠い!」
「ガチャポン、それをわたくしが今から説明いたしましす」
ガンポンはムチのような細長い棒をシュっと出し、地図に指をさしながら作戦の説明をした。
「八ケロ士の軍を三角に配列し、それを少しずつ歩きながら里見村を攻め込むのです。 これを『魚鱗の陣』と言います!」
「魚鱗の陣?」
「魚鱗の陣は攻撃しながら防御も出来る、戦いでは基本的な形の陣なのです。 しかもクローン蛙であれば、乱れることなく里見村まで進むことができるでしょう」
ガンポンの説明を聞いたスッポンとチャンポンとウエポンは深く感心する。
「オゥ、ベリーグッドですねぇ、八ポン士軍師のガンポン! ユーはパーフェクトですよ」
「ガンポン やるあるね アチョー!」
「ウへへへ! 俺様は早く機関銃で撃ちまくりてえなぁ! ウヘヘヘ!」
ガンポンの作戦を聞いた春花の機嫌がなおり、腰に手をあてながら高笑いする。
「ハッハッハ、さすが我が大和田軍師のガンポンだ! 大和田村と里見村を行き交うには、この1本の東野橋しかない。 東野橋を制したものがこの戦いを制する!」
「ははっ!」
八ポン士が春花に膝まつくと、開戦の合図のホラ貝が鳴り響く。
そして春花は高台に立ち、里見村の方へ指をさしながら声を上げた。
「行け、クローン蛙の中谷八ケロ士よ! 里見村を全滅するのだぁ!」
春花の掛け声で魚鱗の陣になった八ケロ士は、不気味な声を上げながら東野橋の上を前進し始めた。
「ケロケロケロ・・・」
その不思議な陣形を見ていたニャン斗とニャン吉、そしてスワロとピヨピヨが震えながら抱き合っていた。
「来た来たぁ、ケロちゃんが来ましたよぉ! 僕はケンカが嫌いだよ、ニャン吉くん」
「もう僕はチビっちゃう。 早く家に帰りましょ、ニャン斗くん」
「やだやだやだぁ! スワロちゃんはぁ、とってもぉ 怖いのでぇす! ねぇ、ピヨちゃん」
「ピヨピヨ〜!」
東野橋を歩いて来る八ケロ士の陣形を、ニャン蜜とホーホーが高台から確認していた。
「にゃにゃ、あの八ケロ士の陣形は魚鱗の陣だにゃ。 あっちには兵法を知っている軍師がいるみたいだにゃ」
「ではニャン蜜さん、我々八チョウ士も早速動きましょうか。 まずはクロとペリー、お前たちが出陣しなさい!」
「おお!」
クロとペリーは叫びながら空を飛び立ち、東野橋のほぼ中央あたりに着地した。
その2人の八チョウ士を見た春花は、アゴに手をあてながら不思議そうに呟いた。
「ん? たった2人の八チョウ士で、あの八ケロ士と戦う気なのか? ガンポン」
「確かに何か気になりますね。 しばらく様子を見ましょう」
そしてペリーの口が大きく開いて中から大型の機関銃が出てくると、それを見ていたニャン平とニャン子は驚く。
「げげっ、あのペリーの口からデッカい機関銃が出てきたっすよ! ああ腹減った!」
「おやおや〜。 あの大人しいペリカンちゃんの口の中には、何やら物騒なモノが入っているんだね〜」
「そうだよそうだよ! ペリーの口の中はいろいろ入るから、大きなモノを運ぶのに便利なんだよ便利なんだよ。 おいらはあの口の中で昼寝するのが大好き大好きさ。 あと、あの中でね・・・」
「おしゃべりコンコ、お黙りなさい。 お前はお喋りすぎますよ」
「ごめんねごめんね。 ホーホー、ごめんねごめんね」
やっぱりコンコもホーホーに弱い。
「へぇ、いろんなモノが入って運べるなんて、ペリーは凄いですね。 それからクロはどうするんですか?」
「ホッホッホー、ニャン太郎さん。 由美村1番のズル賢いクロは、実は銃の名人なのですよ」
そしてクロは八ケロ士に向かって、その機関銃で乱射した。
ダダダダ・・・
「カッカッカ! これでもくらえってカー!」
それを見ていた八ポン士のウエポンが驚く。
「ウヘヘヘ! 俺よりデカい機関銃を持ってるじゃねえか! 今度由美村へ行って盗んでやるぜぇ! ウヘヘヘ!」
しかしクロが激しく機関銃を撃ったのだが、八ケロ士は背中に背負っていた盾を素早く前に出して弾をよけながら少しずつ前進していた。
「ケロケロケロ・・・」
八ケロ士が里見村に近づいて来るの見てニャン丸は舌打ちする。
「チッ、クロの機関銃が効かないみたいだぜ! ホーホー、これからどうすんだよ?」
「ホッホッホー、ニャン丸さん焦らないで下さいませせ。 これで八ケロ士は盾で手を塞がれましたから、第一段階は成功です。 次はイーグとホクの出番です。 思いっきり暴れて来なさい!」
「ヤッホー、この時を待ってたでぇ! やっと俺たちの出番が来たやん!」
「ニャン丸、俺たち八チョウ士の戦いを、そこでゆっくり見てるぜよ!」
「ヘッ、頑張れよ! イーグとホク!」
今度はイーグとホクが大きな翼を広げて高く空を飛び立ち、上空から剣を振り回しながら八ケロ士を攻撃を始めた。
「おりゃあ、昨夜の貸し、きっちり返させてもらうでぇ! この○○○のケロケロ野郎!」
「おまんら1人残らず倒して✖️✖️✖️してやるぜよ!」
あまりにも汚い言葉を出しながら八ケロ士と戦うイーグとホクを見て、ホーホーは溜息をつきながらムチをパチン!と鳴らし、丸い目をキラリと光らせる。
「おやおや、イーグとホクは本当に口が悪い暴れ鳥ですねぇ。 後で私がたっぷりお仕置きして上げましょう、ホッホッホー」
不気味に笑うホーホーの怖い顔を見た八ニャン士は、全員青ざめながら口をカタカタと震わせた。
「あ、あのぉ、そのムチでお仕置きって何するんですか? 八チョウ士のホーホーさんを、あまり怒らせない方がよさそうですね」
イーグとホクが上から剣を振り回して攻撃し、前からクロとペリーが機関銃を乱射すると、八ケロ士の魚鱗の陣が少しずつ混乱してきた。
「やったぁ、八チョウ士の攻撃で八ケロ士が混乱しているよ。 なんかニャン蜜ちゃんとホーホーの作戦が効いているみたいだね!」
「伏夜様。 クローン蛙の魚鱗の陣は一方向の攻撃には強いけどにゃ、実はバラバラの攻撃には弱いですにゃ」
「ホッホッホー、そうでございます。 それを昨夜の『クーポン救出作戦』の時に、クローン蛙の八ケロ士の弱点を上空から確認していたのです。それを偵察する為に、私とニャン蜜さんが大和田村へ行ったのです」
「へぇ、なるほどね。 戦いの先を読んでいるなんて、さすが2人は名軍師なのね!」
「へへへ」
伏夜に褒められ、ニャン蜜とホーホーは照れる。
その意表をついた八チョウ士の戦いを高台から見ていた春花は、やられている八ケロ士を見て少し焦っていた。
「おいおい、ガンポン! これじゃあ八ケロ士が負けるんじゃないのか?」
「どうやらあちらには、少しは出来る軍師がいるみたいですね。 フフフ、しかし春花様ご安心下さい。 私が教育した八ケロ士を、里見由美村同盟軍は少し甘くみたようです!」
その時、ガンポンの目が光った。
「八ケロ士、今だぁ! 必殺の『槍ヶ岳の陣』になるのだぁ!」
「ケーローッ!」
すると八ケロ士は三角の陣形から三角すいのような陣形に素早く変わる。持っていた盾が4枚に増え、まるで槍ヶ岳の山のような陣形だった。
「ガンポン、あの陣形は何だ?」
「フッフッフ、あれは私のオリジナルである究極の陣形『槍ヶ岳の陣』でございます。 あの陣形になれば360度のどこからでも対応します!」
「でかしたっ、ガンポン!」
その陣形を高台で見ていた里見由美村同盟軍は驚きを隠せなかった。
「ニャン蜜ちゃん、何か八ケロ士の陣形が変わったよ! あれは何?」
「ニャン太郎、あの陣形は私にも分からにゃいにゃ。 たぶん向こうにいる軍師のオリジナルにゃ。 マズいにゃあ」
「マズいって、あの陣形は凄いの?」
「はい、伏夜様。 守備をしにゃがら360度の範囲で攻撃をする、まさしく究極の陣形ですにゃん!」
「いやいやニャン蜜さん、それだけじゃないと思います。 何かイヤな予感がします」
「ホーホー、それはどういうことにゃ?」
そして槍ヶ岳の陣の1番上にいるケロイチの口から、長い舌がシュルシュルっと素早く飛び出した。
それを見たニャン斗とニャン吉は、また抱き合いながら震えていた。
「何ですかぁ、あれは? ニャン吉くん、怖いですねぇ」
「あんな舌で顔をペロペロされたら僕チビっちゃいますよ、ニャン斗くん!」
するとケロイチの長い舌が空を飛んでいるホクの足を絡み、ホクは八ケロ士の陣の中へと吸い込まれしまった。
「うわぁあ!」
「ホクゥ、大丈夫かぁ!」
それからホクは八ケロ士の陣形の中で素早く縄で縛られ、槍ヶ岳の陣の1番前にに突き出されてしまった。
「ちっくしょう! おまんらぁ、放しぃやっ!」
縄に縛られたホクの体を盾にされると、クロとペリーは陣形に向かって機関銃を撃てなくなっていた。
「カー、くそぉ! ホクを盾にされちゃあ、機関銃を打てないじゃないカー!」
「おやおや、どうするザマスかねぇ。 マズいザマスねぇ」
その八ケロ士の攻撃を高台から見ていた春花は、機嫌良く高笑いした。
「ハッハッハ、ガンポンでかした! さすが我が大和田八ポン士の軍師は最高だ! この東野橋の戦いは私たちがもらったぁ!」
「春花様、もったいなきお言葉。 クローン蛙の八ケロ士はただの武装集団ではありません。 相手の攻撃に合わせていろいろ陣営を変えることができる、最強の武装ケロケロ集団なのです!」
八ケロ士はホクを盾にして、槍ヶ岳の陣のまま少しずつ里見村へと前進してきた。
「ケロケロケロ・・・」
八ケロ士の意外な戦法に戸惑う八ニャン士と八チョウ士。
はたして八チョウ士は、最強の陣と言われるあの槍ヶ岳の陣を崩すことが出来るのでしょうか?
ところでペリカンのペリーの口の中は、一体どれくらいのモノが入るんですかね?
次回「爆の巻」をお送りします。
八チョウ士の軍師ホーホーが、ついに秘策を出した!
お楽しみニャン!




