表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
43/49

志希、シャカパチに翻弄される

大会会場のざわつきの中、志希(しき)は指定されたテーブルへ向かった。


そこに座っていたのは、黒いパーカーにヘッドホンを首にかけた青年。


志希が席につくと、すでに相手はカードをシャカパチしていた。


パチ……パチ……パチ……パチ……


一定のテンポ。無駄のない動き。まるで呼吸のように自然。


(……この人……“意図してないシャカパチ”だ……)


相手は志希を見ることもなく、淡々とカードを整えながら言った。


「よろしく」



ジャッジの声が響く。


「――それでは、第1試合を開始してください」


その瞬間、相手のシャカパチのテンポがわずかに上がった。


パチ、パチ、パチ、パチ、パチ……


弟「志希……あれは“集中モード”だよ……

  相手、考えれば考えるほどシャカパチが整うタイプ……」


(やば……私の高速シャカパチと違って……“揺れ”がない……!)


相手は手札を一瞥し、軽く頷いた。


「……うん」


それだけ言って、また手札を整える。


(えっ……“うん”って何……?何が“うん”なの……?怖い……!)


パチ、パチ、パチ、パチ、パチ、パチ……


テンポがさらに整う。


最後に相手は場にカードを1枚伏せ、静かに言った。


「……どうぞ」



志希のターンが始まる。


だが、相手のシャカパチの音は志希の耳に深く残っていた。


志希は震える手でカードを引く。


「……ドロー!」


引いた瞬間──


志希は火力カードを場に叩きつける。


「はいっ!燃やす!!」


相手のライフが800減る。

しかし──


相手は無反応。


パチ……パチ……パチ……パチ……


(えっ……?燃やしたのに……?なんで無反応なの……?)


弟「あの人、シャカパチの“音”でライフ管理してる……

  数字じゃなくて“リズム”で覚えてるタイプ……」


(そんなのある!?)


志希はもう1枚、火力を叩きつける。


「燃えろぉ!!」


相手のライフがさらに700減る。


しかし──


パチ……パチ……パチ……パチ……


テンポが、ほんの少し変わっただけ。


(本当に“音”でライフ管理してる……!?どういう脳してるの……!?)


志希はターンを渡した。


「……はい、どうぞ……」



志希が火力を2発ぶち込んでターンを渡すと、


相手は静かにカードを引いた。


その瞬間──


パチパチパチパチパチパチパチパチ!!


シャカパチが急激に高速化した。


(ひっ……!?なんでドローでギア上がるの……!?)


弟「相手、展開に合わせてシャカパチが速くなるタイプ……

  “考えるほど速くなる”……

  完全にゾーン入ってる……!」


(そんな……シャカパチで集中力アップなんて……

 そんなことある……!?)


相手は盤面を見つめ、淡々とカードを並べていく。


まず1枚目。


「《前線の歩兵》、出す」


小さな兵士カード。

特に強くも弱くもない、ただの通常モンスター。


パチ……パチ……パチ……パチ……


テンポが一段落ち着く。


(あっ……“軽いカード”はテンポ落ちるんだ……音で強さ管理してる……?)


次に2枚目。


「《補給部隊》、出す。500ライフ回復」


ライフをちょっと回復するサポートカード。これも地味。


パチ……パチ……パチ……パチ……


テンポは変わらない。


弟「あの人、盤面の“重さ”でシャカパチの速度変えてる……

  軽い展開はゆっくり、重い展開は速くなる……」


そして──


相手は3枚目のカードを手に取った。


一瞬、シャカパチが止まる。


(えっ……?)


相手はカードを表にして置いた。


「《戦場の号令》、発動。

 自分の場のモンスターの攻撃力を500アップ」


盤面の味方をまとめて強化する、ちょっと重めのカード。


置いた瞬間──


パチパチパチパチパチパチパチパチ!!


テンポが一気に跳ね上がる。


「ひぃぃぃ!!?」


弟「“重いカード”は高速シャカパチになるんだよ……

  あれは……“脳がフル回転してる音”……」


(音で脳内見えるの怖すぎる!!)


相手は盤面を整え、最後にカードを1枚伏せた。


「……返す」


パチ……パチ……パチ……パチ……


テンポがまた落ち着く。


(なにこの人……シャカパチで“思考のギア”変えてる……!?

 私のシャカパチとは……レベルが違う……!)


志希は手札を握りしめた。


(……負けない……まだ1回戦……ここから……巻き返す……!)



志希はカードを引いた。


「……ドロー!」


相手は盤面を見ず、ただシャカパチを続けている。


パチ……パチ……パチ……パチ……


(盤面見てない……なんで……?)


志希は火力カードを叩きつけた。


「はいっ! 燃やす!!」


相手の《前線の歩兵》が燃える。


しかし──


相手は盤面を見ない。


パチ……パチ……パチ……パチ……


テンポがほんの少しだけ変わる。


弟「あの人、盤面見てない……

  音で“燃えた”のを理解してる……」


(音で!?音で燃焼ダメージ理解してるの!?)


志希はさらに火力を投げる。


「もう一発!!」


今度は相手の《補給部隊》が燃える。


しかし──


相手は盤面を見ない。


パチ……パチ……パチ……パチ……


テンポがまた少し変わる。


(うそでしょ……“音で盤面の変化を把握してる”……!?

 なんでそんなことできるの……!?)


相手はようやく口を開いた。


「……二体、消えたね」


「見てないのに分かるの!?!?」


弟「あの人、シャカパチの“反響”で盤面の枚数把握してる……

  もはや生物兵器……」


(怖すぎる!!)


志希はターンを渡した。


「……はい、どうぞ……」



志希が火力で歩兵と補給部隊を燃やした直後。


相手は盤面を一切見ず、ただシャカパチを続けていた。


パチ……パチ……パチ……パチ……


(見てない……燃えたの見てないのに……

 なんで分かるの……?)


相手はカードを引いた瞬間──


パチパチパチパチパチパチパチパチ!!


テンポが跳ね上がる。


弟「気をつけろ……あれは“何か狙っている音”だよ……」


(そんなのあるの!?)


相手は盤面を見ずにカードを置いた。


「《戦場残響》、発動」


「なにそれ!?」


弟「墓地から前のターンで倒されたモンスター1体戻すやつ……」


相手は墓地を見ずに、手をひょいっと伸ばしてカードを拾い上げた。


「……歩兵、戻す」


(見てないのに墓地から正確に拾った!?)


相手は続けてカードを置く。


「《反響する魔法陣》発動。

 このターン使われた魔法をコピーする。

 《戦場残響》コピー、補給部隊戻す。500ライフ回復」


相手はまた墓地を見ずに、補給部隊を拾い上げた。


(なんで見ないで拾えるの!?音で位置分かるの!?コウモリなの!?)


そして──


相手は2体のカードを並べ、静かに宣言した。


「……生贄に捧げる」


相手は盤面を見ずに、まるで見えているかのように2体へ手を伸ばす。


「歩兵、補給部隊──リリース」


カードが墓地へ送られる音が、妙に重く響く。


そして相手は、上級モンスターを場に置いた。


「レベル7:《前線指揮兵・リズム隊長》」


弟「歩兵+補給部隊をリリースして出す上級体……

  さらに自分の場のモンスターに“速攻を与える”……」


その瞬間──


パチパチパチパチパチパチパチパチ!!!


相手のシャカパチが、

店内の空気を震わせるレベルに高速化した。


周囲のプレイヤーも反応する。


「うわっ、出た!」

「今日のリズムやべぇ!」


店内のシャカパチが共鳴し始める。


パチパチパチパチ!!

パチパチパチパチ!!


店長(カウンター奥)

「シャカパチの大合唱やめて……

 胃が……胃が死ぬ……」


相手は盤面を見ずに、リズム隊長で攻撃宣言を行う。


「……突撃」


次の瞬間、志希のライフが1500削られた。


「っ……ぐ……!」


「……返す」


パチ……パチ……パチ……パチ……


テンポが落ち着く。


(なんで……なんで盤面見ないで召喚できるの……!?

 音で……全部分かってるの……!?)


弟「あの人、シャカパチの“反響”で

  墓地の枚数、盤面の枚数、位置……

  全部読んでる……もう“音の錬金術師”だよ……」


(音の錬金術師!?)



店長はカウンターの奥で震えていた。


(……シャカパチ……気になる……でも今日は大会……

 しかも店内にいるのは全員カードゲーマー……)


店内には志希と相手のシャカパチが響き渡り、

さらに周囲のプレイヤーまでテンションが上がって

シャカパチを始めている。


パチパチパチパチ!!

 パチパチパチパチ!!


(……これ……止めたい……止めたいけど……

 “プレイの進行に支障がない限り注意できない”……

 大会ルール……恨む……)



志希はカードを引いた。


「……ドロー!」


志希は手札を見て、にやりと笑った。


「よし……!山札、削る!!」


志希は山札の上から4枚をまとめて墓地に叩き込んだ。


落ちたカードのレベルは──

4、2、3、1の合計 10。


「ふふふ……これで火力の威力が決まる……!」


志希は火力カードを叩きつけた。


「《コスト・バースト》!!

 このターン墓地に送られたカードの“合計レベル×200”ダメージ!!

 今の合計レベルは──」


相手「2000」


志希「なんで先に言うの!?!?」


弟「あの人、落ちたカードの“音の高さ”で

  レベルまで把握してる……」


(音の高さ!?そんなの分かる!?)


弟「レアリティで紙の厚みもインクの量も違うんだよ。

  重さも、摩擦も、落ちた時の“鳴り”も全部変わる。

  あの人、多分……カードの種類ごとに音を記憶してる」


(記憶してるって……そんなの、もはや人間じゃ……)


志希は火力を発動。


「くらえぇぇぇ!!」


志希の《コスト・バースト》が炸裂し、

2000ダメージが相手のライフへ叩き込まれた瞬間。


「……発動。《残響シールド》」


「えっ!? なにそれ!?」


弟「そのターンに受けたダメージの半分を軽減して、

  軽減した分だけ反射するやつ……!」


「反射ぁぁぁ!?!?」


「……1000、返す」


志希「返すの!?!?」


志希のライフが1000削られ、身体が揺れる。


しかし──


相手は盤面を見ない。


パチ……パチ……パチ……パチ……


テンポが、ほんの少しだけ変わる。


(うそ……“音だけでダメージ計算してる”……!?)


相手は静かに言った。


「……残りライフ、5500」


「なんで見てないのに分かるの!?!?」



相手のターン。


カードを引いた瞬間──


パチパチパチパチパチパチパチパチ!!


(ひっ……!?また速くなった……!?)


相手は盤面を見ず、

志希の墓地を指で軽く叩いた。


トン……トン……トン……


「……墓地の合計レベル、20」


「なんで叩いただけで分かるの!?!?」


弟「あの人、墓地の“紙の重さと反響”で

  レベルまで把握してる……もう人間じゃない……」


(なんで……なんで盤面見ないで全部できるの……!?

 音で……全部分かってるの……!?)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ