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志希、ドローでまた1週間詰む

ちょっと長め

志希(しき)はターンで1週間、山札で1週間、手札で1週間詰んだ。

彼女が新たな知識を身に着けるたびに、特訓は地獄度を増していく。


そしてついに──

“ドロー” という実戦につながる概念に挑むことになった。


─────────────────────────────────


1日目。


志希は山札を前に、どんよりした顔でつぶやいた。


「……ドロー嫌い……なんで“引く”の……

 なんで……私にだけドロー4がないの……」


弟:「最後だけウノの話だよね!?」


志希は机に突っ伏したまま、震える声で続ける。


「だってさ……私……昔ウノでいじめられたんだよ……

 毎回……ドロー2……ドロー4……

 気づいたら手札30枚……

 あれ……地獄だった……」


男:「志希ちゃん……それはウノのトラウマであって……

   カードゲームのドローとは関係ないんだ……」


志希は涙目で山札を指さした。


「でもさ……“ドロー”って言われると……

 ウノのドローが脳内に出てくるの!!

 反射で!!条件反射で!!」


志希は拳を握りしめた。


「ドロー4があれば……引かなくてすむのに……!!」


男:「志希ちゃん……

   ドロー4は強い代わりに“チャレンジされると自分が詰むカード”なんだ……

   ただ自分が引かなくてすむカードじゃないんだ……」


志希:「えっ……!?じゃあ……

    私……あの時……ずっと……間違ってたの……?」


弟:「ウノの時点で間違ってるよ」


志希は天井を見上げた。


「……じゃあさ……カードゲームにも……

 “ドロー4”導入しようよ……」


男:「志希ちゃん……

   それ導入した瞬間、ゲーム壊れるんだ……

   ドロー2(強欲な壺)の時点で禁止カードなんだ……」


志希は机に突っ伏した。


「もうやだ……ドローしたくない……

 ドローって言葉がもう無理……ドローって聞くと……

 手札30枚の悪夢が……」


弟:「志希……カードゲームのドローは制限されてるんだよ……

   ウノのドロー4が異常なんだよ……」


志希はゆっくり顔を上げた。


「……じゃあ……“ドロー”って言葉……変えていい……?

 今日から“カードちょっと増えるやつ”って呼ぶね」


弟:「長いよ!!」


志希:「だって“ドロー”って言うと……

    心が死ぬんだもん……」


男:「志希ちゃん……

   ドロー理解する前に心が折れないで……」


─────────────────────────────────


2日目。


志希は山札の前で、なぜか指先をストレッチしていた。


「……ドローってさ……

 ただ引くだけじゃ……ダメだと思うんだよね……」


弟:「いや、ただ引くだけでいいよ」


志希は真剣な目で弟を見た。


「違うの!!

 “かっこよく引くコツ”が必要なの!!

 カードゲームって……魅せる競技でしょ……?」


男:「そんな競技じゃないよ」


志希は山札からカードをつまみ、指先でクルッと回した。

ヒュッ……!


弟:「なんでカードを指で回せるの!?マジシャンなの!?」


志希は得意げに胸を張る。


「昨日の夜、ドローの練習してたら……

 なんかできるようになった」


男:「ドローの練習って何……?」


志希は山札を構え、低い声でつぶやいた。


「……“出でよ。私の切り札”……」


弟:「セリフ練習してる!!?」


志希:「だってさ、ドローって“運命を引き寄せる瞬間”でしょ?

    だったら……かっこよくないと……」


弟:「そんな中二病みたいなドローないよ」


志希は左手の指を額に当て、右手をクロスさせ十字を作る。


男:「なんでそんな無駄にスタイリッシュなの……?」


志希はさらにセリフを詠唱し始めた。


「我がデッキに眠りし“運命よ……今こそ目覚めよ”

 “世界よ、私に味方しろ”さもなくば、我と共に滅びよ」


弟:「完全に邪気眼に目覚めてる!!」


志希は山札を抱え、真剣に言った。


「普通じゃ……勝てる気がしないんだよね……

 だから……かっこよく引く!!

 これが……私のドロー!!」


男:「志希ちゃん……ドローはもっと……普通でいいんだよ……?」


─────────────────────────────────


3日目。


志希は山札を前に、腕を組んで唸っていた。


「……ドローってさ……好きなカードを選ぶんでしょ?」


弟:「選ばないよ!!?」


志希は真剣な顔で弟を見つめる。


「だってさ……

 “ドロー! モンスターカード!”ってやつあるじゃん……

 あれ絶対……仕込んでたよね……?」


男:「志希ちゃん……それは演出なんだ……」


志希は机を叩いた。


「だっておかしいじゃん!!

 “モンスターカード”って叫んだら、

 ちゃんとモンスター出てくるんだよ!?

 そんなの……

 “選んでる”以外に説明つかないじゃん!!」


弟:「いや、あれは偶然だよ……というかフィクションだよ……」


志希は首を振る。


「偶然で毎回モンスター引けるわけないよ!!

 あれは……“ドローのコツ”があるんだよ……絶対……!!」


男:「志希ちゃん……ドローにコツなんてないんだ……

   ただ引くだけなんだ……」


志希は山札をじっと見つめた。


「……じゃあ……“好きなカードを引く技術”を……

 私が開発する……」


弟:「やめて!! ルール壊れるから!!」


志希は山札に手をかざし、低い声でつぶやいた。


「……来い……私の……“運命のカード”……」


弟:「やめろ!! それはもう呪術!!」


志希はさらに手をかざす角度を変えた。


志希:「“運命は……この手で選ぶ”」


男:「選べないよ!!?」


志希は山札を指で弾き、飛び出した1枚のカードをキャッチした。


パシッ


弟:「なんでそんな無駄にスタイリッシュなの……?」


志希は得意げに笑った。


「昨日ね、ドローの練習してたら……

 なんか、できるようになった」


男は目を細めて志希の手元を見た。


「志希ちゃん……

 今の、完全に“サイドスティール”だったよ……

 カードを山札の横から抜き取って、

 一番上のカードを引いたように見せる……

 あれ、プロのマジシャンが使う技なんだ……」


弟:「なんで!?

   カードゲームのドロー練習でマジシャンの技習得するの!?

   方向性どうなってるの!?」


志希は胸を張る。


「でしょ!!ドローって“好きなカードを引く技術”でしょ?

 だったら……こういう技術が必要なんだよ!!」


弟:「必要じゃないよ!!?

   それ完全にイカサマだよ!!?」


志希はさらに技を披露する。


「見て、“逆サイドスティール”!!」


スッ……パシッ


弟:「逆って何!?どこから抜いたの今!?

   物理法則どうなってるの!!?」


志希は満足げにうなずいた。


「これで……“好きなカードを引く”準備は整った……

 あとは……“引きたいカード”を念じるだけ……」


男:「志希ちゃん……

   それはもうドローじゃなくて“マジック”なんだ……」


志希は山札を抱え、決意の表情を見せた。


「私、“好きなカードを引く方法”を完成させる!!

 これで……勝てる気がする……」


弟:「頼むからジャッジ仕事して」


─────────────────────────────────


4日目。


志希は、なぜか弟の手札をじっと見つめていた。


「……ねぇ。ドローってさ……“引く”んだよね……?」


弟:「そうだよ。山札から──」


志希:「じゃあ……“相手の手札から引く”のも……

    ドローだよね……?」


弟:「違うよ!!?」


志希は真剣な顔で弟の手札に手を伸ばした。


「だってさ……ババ抜きは相手の手札から引くよね……

 だったら……“相手の手札を取ってもいい”じゃん……?」


男:「志希ちゃん……それはもう“ドロー”じゃなくて“窃盗”なんだ……」


志希は弟の手札をつまもうとする。


「大丈夫! 指先の技術は練習したから!!

 昨日、カード回す練習したし!!」


弟:「だからなんでドローの練習でマジシャンになるの!!?」


志希は弟の手札を指で弾く。


ヒュッ……!


次の瞬間、志希の手には弟のカードが握られていた。


弟:「やめろ!! なんでそんなスナイパーみたいな精度なの!!」


志希は堂々と宣言した。


「“相手の手札からドロー”──これが……私の新技!!」


男:「新技じゃないよ!! ただの反則だよ!!」


志希は不満げに頬をふくらませる。


「だってさ……山札から引くと……

 “ドロー”って言われるじゃん……

 私……ドロー嫌いなんだよ……

 ウノでいじめられたから……」


弟:「それはウノのトラウマ!!」


志希はさらに理論を展開する。


「だから……

 “ドロー”って言われない方法でカードを増やしたいの!!

 相手の手札から引けば……

 “ドロー”じゃないでしょ……?」


男:「志希ちゃん……それは“ハンデス”って言うんだ……

   しかも勝手にやっちゃダメなんだ……」


志希は目を輝かせた。


「ハンデス!?かっこいい!!

 じゃあ今日から私、ハンデス使いになる!!」


弟:「違う!! まずルール覚えて!!」


志希は胸を張った。


「大丈夫!!私、まずハンデス理解する!!」


男:「相手の手札を物理的に破壊するのやめて……」


─────────────────────────────────


5日目。


志希は、なぜか神妙な顔でカードを見つめていた。


「……ねぇ。ドローってさ……“引く”んだよね?」


男:「そうだよ。山札からカードを──」


志希:「でもさ……“条件ドロー”ってあるじゃん?」


弟は嫌な予感しかしなかった。


「……どこで覚えたの、その単語」


志希は胸を張った。


「だってさ、ドラゴンを呼ぶ笛が墓地に置かれたらドローできるんだよね!!」


男:「志希ちゃん、漫画の謎ドローを再現するな」


志希:「だから私も“笛”を墓地に置けばドローできるんだよね!!」


そう言って志希は小学生用のリコーダーを取り出し墓地に置く。


弟:「志希、それはカードの効果だから……

   笛を墓地に投げ込んだらドローできるわけじゃないよ……」


志希は真顔で聞き返す。


「え? じゃあ……本物の笛じゃダメなの?」


弟:「当たり前だよ!!」


─────────────────────────────────


6日目。


志希は英和辞典を開きながら、魂が抜けたような顔をしていた。


「……私……せっかくドローを学んだのに……

 もう嫌だ……なんで“引き分け”になるの……?」


弟:「それ“ドロー”違いだよ!!

   カードゲームのドローは“引く”であって“引き分け”じゃない!!」


志希は机に突っ伏した。


「だってさ……この本に書いてあるじゃん……

 ドローは“引き分け”って意味でしょ……?

 なんで引き分けなの……?」


男は優しく説明しようとする。


「志希ちゃん……英語の“draw”は“引く”って意味で──」


志希:「やだ!!私、引き分けなしで勝ちたい!!

    勝ちたいの!!なんで引き分けになるの!!」


弟:「だからそれは別のドロー!!」


志希は涙目で山札を指さした。


「じゃあさ……“引き分けなしで勝つ方法”ってあるの……?」


男:「普通に勝てばいいんだよ……」


志希:「普通って何!?普通が一番難しいんだよ!!」


弟:「なんでそんなプロスポーツ選手みたいなこと言うの……」


─────────────────────────────────


7日目。


志希:「……わかった。ドローって……

    “山札からカードを1枚引くこと”でしょ……?」


男:「……そうだ」


志希:「やったああああああああ!!

    私、ドロー理解した!!

    世界大会行ける!!」


弟:「いや、まだ墓地もチェーンも理解してないよ」


志希:「うるさい!!ドロー理解したんだから、

    絶対に勝てる気がするんだよね!!」


─────────────────────────────────


そして志希は配信をつける。


志希がドローの愚痴を言っていると──


一人のリスナーの発言をきっかけに、コメント欄の流れが変わった。


「ドローは焦らなくていい。

 大事なのは“引いたカードをどう使うか”だ」


志希:「えっ……誰……?」


「真摯にカードに向き合う者には運も味方する。

 あとは扱い方を覚えるだけだ」


志希:「なんか……言い方が……あの人に似てない……?」


《誰だよこいつ》

《妙に詳しい》

《語り口がイケメン》

《カード落としちゃった男?》


志希:「えっ……まさか……見てるの……?」


しかしその人物は、それ以上何も言わずコメントを消した。


志希:「えっ……消えた……?」


弟:「志希、恋愛脳が加速してるぞ」


志希:「だって……あの人っぽかったんだもん……!」


《志希、ドローより男に集中してる》

《謎の人物=絶対あの男》

《世界大会編が動き出した》

《名前聞け》


志希は胸を張る。


「……でもさ……ドロー理解したってことは……

 絶対“あの人”を引き寄せられる気がするんだよね」



リスナーは悟った。


志希は今日もブレない。

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