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志希、手札でまた1週間詰む

ターンを理解し、山札も理解した(気がする)志希(しき)

しかし翌日、志希はさらなる地獄を生み出した。


────────────────────────────────


1日目。


志希:「手札ってさ……山札のカード全部持つんでしょ?」


弟:「違うよ」


志希:「なんで!?

    カードゲームって“手札のカードを減らしてく”ゲームでしょ!?

    私、ババ抜きは得意だよ!!」


男:「志希ちゃん……カードゲームとババ抜きは違うんだ……」


志希:「じゃあジョーカーはどこにあるの!?」


弟:「ないよ」


志希:「じゃあ相手の山札からいらないカード抜いてあげるね!」


弟:「やめろ」


志希は不思議そうに首をかしげる。


「え? だってババ抜きでも最初にジョーカー抜くじゃん!!

 いらないカードは抜いたほうが親切でしょ?」


男は頭を抱えた。


「志希ちゃん……“親切”でゲームを破壊するな……」


─────────────────────────────────


2日目。


志希:「……ねぇ。手札事故って……保険おりるの?」


弟はカードを床に落とした。


「おりないよ!!」


志希はさらに深刻な顔で続ける。


「だって“事故”って言うじゃん……

 事故なら……保険……必要じゃん……?」


男:「カードゲームに保険はないよ」


志希はショックを受けたように口を押さえた。


「えっ……!?じゃあ……事故ったら……自腹……?」


弟:「そもそも対戦には金かからないよ」


志希は胸を押さえ、震える声で言った。


「……カードゲームって……命がけなんだね……」


弟:「どこをどう解釈したらそうなるの」


志希はさらにカードを握りしめ、決意したように言った。


「……じゃあせめて……

 ドラレコ代わりにスマホで撮っとくね」


弟は頭を抱えた。


「なんで!? 何を録画するの!?」


志希は当然のように答える。


「手札事故の瞬間」


弟:「そんな瞬間ないよ」


志希はスマホを構え、真剣な顔でカードを撮り始めた。


「……証拠は大事だからね……

 後で保険会社に提出するかもしれないし……」


男:「志希ちゃん……カードゲームと保険会社は関係ないんだ……」


─────────────────────────────────


3日目。


志希:「ねぇ、手札ってさ……「手」の札だよね。

    指が5本だから毎ターン5枚増えるんでしょ?」


弟:「増えないよ」


志希:「なんで!?指が5本あるのに!?

    指の本数=手札の枚数でしょ!?」


男:「志希ちゃん……それは“手”の概念だよ……」


志希:「じゃあ指10本にすれば10枚引ける!?」


弟:「どうやって増やすんだよ」


志希:「……わかった。

    高速で手を動かして“分身”させればいいんだよ!」


弟は一瞬で嫌な予感を覚えた。


「やめろ。何をする気なの」


志希は答えず、

ブンッッッッッ!!

と高速で手を振り始めた。


「見て!!指が……増えた!!」


弟:「残像だよ!!」


志希は得意げに胸を張る。


「じゃあ残像の分だけ手札引けるよね!!

 今、指が15本くらいあるから……15枚!!」


弟:「引けないよ!!残像は実体じゃないから!!」


志希はさらに速度を上げる。


「じゃあもっと速く動かせば……指が30本に……!」


弟:「それはもうホラーだよ!!」


─────────────────────────────────


4日目。


志希:「ねぇ、相手の手札って見ていいよね?」


弟:「見ちゃダメだよ」


志希:「なんで!?隠す意味ある!?

    見せたほうがフェアじゃん!!

    情報共有って大事だよ!!」


男:「志希ちゃん……カードゲームは心理戦なんだ……」


志希:「心理戦とかいらない!!私は物理戦がいい!!」


弟:「カードゲームで物理戦やめろ」


志希:「だってさ、経営でもそうじゃん?

    情報を隠すと組織が腐るんだよ。

    透明性が大事なの!!」


弟:「カードゲームに経営を持ち込むな」


志希はカードを掲げ、堂々と宣言した。


「私は“オープンハンド経営”を採用します!!

 自分の手札は全部公開!!相手の手札も公開!!

 情報共有でメタを回す!!」


弟は震える声で言った。

「それ……ただの地獄だよ……」


志希はさらに熱弁を続ける。


「だってさ、情報が共有されれば、

 “最適解”が見えるじゃん?

 経営もカードゲームも、

 メタを回した者が勝つんだよ!!」


男は冷静にツッコむ。


「志希ちゃん……

 カードゲームは“情報の非対称性”が前提なんだよ……」


志希は目を見開いた。


「非対称!?そんなの……不平等じゃん!!

 私は平等な世界がいい!!」


弟はため息をついた。


「平等にした瞬間、ゲームが崩壊するんだよ……」


─────────────────────────────────


5日目。


志希:「見て!! シャカパチ覚えた!!」

(パチパチパチパチパチパチパチパチッッッ!!)


弟:「いや速すぎるだろ!!?」


志希:「1秒間に20回できる!!」


男:「志希ちゃん……その速度は大会で注意されるやつだよ……」


志希:「なんで!?速いほうが強いじゃん!!」


弟:「強さの指標そこじゃない」


男:「志希ちゃん……シャカパチは競技じゃないんだ……」


男が止める間もなく、志希は再びカードを構えた。


「見て!! 新技“逆手シャカパチ”!!」


(パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチッッッ!!)


弟:「なんで逆手でそんな速度出るんだよ!!」


志希は真剣な顔で言った。


「だってさ、カードゲームって“魅せる”のも大事じゃん?」


弟:「シャカパチは魅せる技じゃないんだよ!!」


─────────────────────────────────


6日目。


志希:「ねぇ、マリガンってさ……

    納得いくまで何回でもできるよね?」


男:「できないよ」


志希:「なんで!?

    引き直しってそういうことでしょ!?

    オリパガチャもそうだよ!?

    納得いくまで回すじゃん!!」


弟:「オリパ基準やめろ」


志希:「じゃあ10回マリガンする!!

    手札50枚になる!!」


男:「志希ちゃん……マリガンは“減る”んだ……

   10回やったら手札マイナスになるよ……」


志希:「マイナス手札!?

    それもう概念じゃん!!

    私、概念で戦うの!?」


弟:「概念で殴りあうのやめろ」


─────────────────────────────────


7日目。


男:「志希ちゃん、手札とは──」


志希:「わかった!!

    “今持ってる5枚のカード”でしょ!!?」


男:「……そうだ」


志希:「やったあああああああああ!!

    私、手札理解した!!世界大会行ける!!」


弟:「いや、まだ墓地も優先権も理解してないよ」


志希:「うるさい!!手札理解したんだから、

    これで勝てる気がするんだよね!!」


男:「志希ちゃん……まだ“ドロー”も理解してないんだが……」


志希:「明日やる!!」


弟:「また1週間かかるやつだ」


─────────────────────────────────


そして志希は配信をつける。


「みんな……聞いて……

 私……手札の概念だけで1週間かかった……

 でも……理解した!!たぶん……!!

 なんか……私……成長してない……?」


コメント欄が爆発する。


「志希、手札だけで1週間は伝説」

「山札に続き手札でも死ぬ女」

「理解したの“概念”だけで草」

「ルール覚えるまでに寿命が足りない」


志希は自信満々に言う。


「大丈夫! 私、気合いで寿命伸ばすから!」


リスナーは悟った。


志希は今日もブレない。

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