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<EP_034> 結婚

ジェイムズはターニャを連れて街で芋を売る。

ジェイムズの作る芋の評判はそれなりに良く、市場の人と交流をしていった。


そんなある日、街の教会の前に人だかりができていた。

「何かあるんです?」

「今日は、聖女マリア様と近衛騎士バーカスの結婚式なのよ」

ジェイムズの問いにそんな答えが返ってきた。

そっと、画面を開いて【楽園】のログを確認するも、何も書かれてはいない。

(なんだ、俺が何もしなくても二人は結ばれたんじゃないか)

人々に祝福され、教会の前で微笑む二人の姿を遠目に見ながらジェイムズは安堵した。


「うわぁ、綺麗にゃ」

マリアのウェディング姿にターニャが目を輝かせる。

マリアがブーケをトスした。

取ろうとした女たちの手に弾かれ、ブーケがターニャの足元に転がる。

「やったにゃ!」

ターニャが高々と持ち上げると、人々から歓声が上がった。


「マリア様、綺麗だったにゃ」

ログハウスに戻り、夕食を食べていると、ターニャがそんなことを言ってくる。

「ああ、そうだな。ブーケを取ったターニャにも、そろそろお婿さんをみつけないとな」

「え?」

「獣人の結婚適齢期ってのは知らないけど、ターニャもお年頃だろ?そろそろお婿さんをみつけないといけないんじゃないかな」

何気ないジェイムズの言葉に、ターニャは意外そうな顔を見せるが、徐々に目が吊り上がっていく。

「なんで、そんなこと言うのにゃ!アタシに出ていって欲しいなら、ハッキリと言えば良いにゃ!」

ターニャは手に持っていたスプーンを乱暴にテーブルに置くと、目を潤ませて部屋を飛び出していった。


(やれやれ……)

ジェイムズは呆然と立ち尽くしログを確認する。

封印された【楽園】のログは動いていない。

「本物の反応」だった。

ジェイムズはため息をつき、静かに席を立つ。


ターニャは家の脇で膝を抱えて座っている。

ジェイムズはその横に立ち肩に手を置いた。

「ごめんな、ターニャ。別に出ていってもらいたいわけじゃない。ただ……」

「ただ……?」

「ターニャは俺といても幸せにならない気がするんだ。俺といても、ターニャが本当に幸せなのかは俺にはわからないんだ」


パンッ!

星空の下に乾いた音が響いた。

「どうして、そんなこと言うにゃ!アタシはジェイムズと居たいから居るのにゃ。アタシの幸せをジェイムズが決めるな!」

ターニャは涙を湛えてジェイムズを見つめてくる。

「ごめんな」

ジェイムズはターニャを抱き寄せると、そっと背後にログ画面を表示させる。

EDENのログは何も表示していなかった。

画面を消すと、ジェイムズは目を閉じて、これまでを思い出す。

家を建て、畑を作り、小さな小屋で眠る。

その隣には常に無邪気に笑うターニャがいた。


ジェイムズはターニャの肩を掴み、少し離すと顔を見つめる。

「ターニャ。これからも俺と一緒にいてくれるかい?」

ジェイムズの言葉にターニャは目を丸くして見つめ返してくる。

「俺と一緒に未来を見て欲しい。……ターニャ、俺と結婚しよう」

「……その言葉、ずっと待ってたにゃ。やっと言ってくれたにゃ」

ターニャの瞳から涙がこぼれ落ち、ジェイムズの胸に飛び込む。

二人は口づけを交わしていく。

満天の星空が、一組の夫婦の誕生を祝しているようだった。

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