<EP_028> 贖罪
「そうか、キミは本当に全てを思い出してしまったんだね。そうだ、私はアリスではない。この姿はキミの選んだアセットの中から選んだ姿だ。私のことはオムニスとでも呼べば良い」
オムニスはそう告げた。その声はアリスと同一ではあるが、感情が一切感じられなかった。
「……オムニス。ここは何処だ?俺をどうしようというんだ」
「ここは、我々の住む惑星オムニスの衛星ジェミアだ。キミは太陽系から来たストレンジャーだったのだ。そして、我々の住む星を訪ねてくれた」
「そうだ、俺は地球連邦第451師団に所属する、星間探査船スター・エンデバーに乗って、この星の近くに来た。そして、お前達から攻撃を受けたんだ」
「それは誤解だ。我々に攻撃する意図は無かった。我々は宇宙の遠くからの訪問者を歓迎するつもりだったのだ」
「じゃあ、なぜ、俺たちの船を拘束したんだ」
オムニスの静かな声にジェイムズは苛立ちを隠せなかった。
「それは違う。我々はキミたちを我がスターシップに招こうとしただけだ。しかし、キミたちは逃げようとした。それを少し止めるつもりで出力を上げただけに過ぎない。しかし、キミたちの船は我々の予想を遥かに越えて脆く、脱出しようとする力と我々のトラクタービームによって裂けてしまったんだ」
「そ、そんな……」
オムニスの告げる言葉にジェイムズは愕然とした。
「裂けた船体に入ると、我々は幸いにも生き残ったキミを見つけた。そして、生き残ったキミへ楽園を与えることにしたんだ」
「楽園?」
「そうだ。我々は衛星ジェミアの地下に、キミの船にあった、キミの世界を模した作品の世界を模したシミュレーターを作り、キミをそこに住まわせたのだ。そこでは、キミは世界の全てを統べ、何をしても良い神のような存在として振る舞える。そんな世界をキミに提供した」
「なぜ、そんなことを?」
「贖罪だよ。我々は無理解からキミの同胞を殺してしまった。キミたちに続く者が現れた時にキミたちのことを知れるようにということも込めて、キミに楽園を与えたんだ」
「そんな……」
オムニスの言葉はにわかには信じられなかったが、辻褄は合っているように思えた。
「さぁ、キミの楽園はここには無い。楽園にお戻り」
オムニスは手を伸ばし、ジェイムズへと歩み寄ってきた。
「く、来るな……」
ジェイムズは後退りしていくが、何もない空間の壁に当たって進めなくなる。
振り向いて、前に進もうとするも、何もないはずなのに、そこには壁が確かに存在している。
(フォース・シールド……)
次元の裂け目を創り出し、宇宙船のシールドとして張られ、物理法則では突破不可能な最強の壁。
「さぁ……」
オムニスの声が近くに聞こえ、ジェイムズが振り返ると、オムニスは目の前いて、アリスの顔で完璧に微笑んでいる。
ジェイムズの顔は恐怖に歪んだ。
「さぁ、ゼロ。私と一緒に楽園に帰りましょう。ここに、あなたの楽園は無いわ」
オムニスはジェイムズの手を取ると、アリスの声で優しく話しかけてくる。
周辺には漆黒の荒野が広がるばかり。空には巨大な惑星オムニスが浮かんでいた。




