<EP_024> 虚構の世界の虚構の物理法則
(黄金錬成の魔法で作られた黄金は、核融合と同じような状態が起こっているはずで、ならばその中にザイリチウムが少しは生成されているはずだ)
ジェイムズは自身の記憶を掘り起こしていく。
(黄金の中のザイリチウムをどうやって抽出する?普段なら、核融合で生み出した物質を更に核融合させてザイリチウムを抽出するんだが、黄金錬成から、さらに錬成する魔法なんて無い。どうすれば……)
この世界におけるザイリチウムの在り処はわかったが、抽出できなければ反物質は作れない。
(そうだ…アイザック法だ…)
アイザック法とはアイザック・クラーク博士が唱えた方法である。
物質に超重力場を打ち込むことにより原子核の崩壊を起こさせ、飛び出した陽子と電子がプラズマ化することでモノポールが形成される。
モノポールの磁力により物質は分解されていくが、ザイリチウムは磁性が極めて低いので、残ったザイリチウムがお互いに結びつくことによって結晶化するのだ。
アイザック法は「ビックバンに匹敵するレベルの超重力場を作ること」が必須なので「理論的には可能だが、実際には無理」と否定されていた。
(しかし、この虚構の世界でなら話は別だ。ゼロなら、極大消滅破の魔法で小型ブラックホールを作り出すことができる。ここで反物質は生成されない。実際のブラックホールならば目に見えるレベルの大きさですら世界は崩壊するはずだからな。しかし、崩壊しないということは反物質は生成されていないはず。しかし、その重力場は本物だ。)
そこまで思いつけば、後は簡単だった。
極大消滅破の魔法を込めた魔法石を黄金錬成で作った巨大な金塊の中に打ち込めば、ザイリチウム結晶が作れるはずなのだ。
(ザイリチウム結晶に再び極大消滅破を打ち込めば、ホーキング放射が起こり、反物質が生成されるはずだ。問題は、それをどうやって閉じ込めるかだ。)
反物質は物質に触れれば即座に消滅してしまう。
それを防ぐには磁場を使って触れないようにしなければならないのだが、磁場自体が作れないのでは無理な話である。
(磁場か……無いなら作ってやれば良い。アシモフ法を使えば良いはずだ)
アシモフ法はアシモフ・ハインライン博士によって提唱された磁場作成方法だった、
高密度の物体を超高速回転させることにより、内部に磁場を発生させる方法である。
これもまた、超高速回転による遠心力でリング自体が崩壊することから「理論上は可能だが、実践は無理」とされてきた方法であった。
しかし、この世界でならば、どれだけ高速回転させても物体は壊れない。
ゼロが小石を超音速で投げつけても小石自体は自身が生み出す衝撃波で崩壊したりはしないからだ。
(ザイリチウム結晶を取り出す時に、膨大な金が生まれるはずだ。なら、そいつを「物質変化」の魔法で輪に変化してやれば良い。それを大量に作って、「浮遊」で浮かせた上で、「高速移動」を使って超高速回転させてやれば、内部に超磁場が生まれるはずさ)
方法を思いつき、ジェイムズは興奮してくる。
(ザイリチウム結晶に極大消滅破を撃ち込んで、原子核の崩壊が始まる前に超磁場を形成してやれば反物質で満たされた空間ができるはずさ。その空間を「空間凍結」の魔法で閉じ込めて取り出してやれば、後は内部で反水素が生成される。あとはそいつを、あのクソッタレな超硬チタン合金の壁にぶつけてやるだけだ)
ジェイムズは笑いが止まらなかった。
虚構の世界の虚構の力で現実の超兵器を作り出せるかもしれないのだ。
ジェイムズは、大量の紙を用意し、必要な量を計算しはじめた。




