<EP_023> 黄金錬成
自宅へと帰ると、ターニャとマリアがリビングから飛び出してきた。
「おかえり、ゼロ。アリスはどうだったにゃ?」
「ああ、無事に生まれたよ。男女の双子で、名前はサイとサリスにしたよ」
「まぁ、双子!これでゼロも立派なお父さんね」
「一気に二人も家族が増えるにゃ。この家も楽しくなるにゃ」
喜び合う二人を見ても、ジェイムズには何の感情も湧かなかった。
「ターニャ、マリア。アリスが帰ってきたら、サイとサリスも含めて、よろしく頼む。俺はログハウスに住むよ」
「え?一緒に住まにゃいのか?」
「そうよ、家族は一緒に住んだほうが良いわ」
マリアも心配そうな顔で見てくるが、ジェイムズは何も言わず豪邸を出て、一人でログハウスへと戻っていった。
ログハウスに戻ったジェイムズはリビングに一人座ると、テーブルに両肘を立て顔の前で指を組むと虚空を睨みつける。
(この世界を俺は許さない。絶対に……絶対にだ……)
ジェイムズは、虚空をひたすらに睨みつけた。
(さて、どうするか……あの超硬チタン合金の壁を破らなければ、この世界は壊せない。では、どうやって…)
ゼロの力を使って攻撃したとしても超硬チタン合金は壊せない。
ゼロの力はスクリプトで制御されているわけだし、あくまで自然現象の一部を再現するので超硬チタン合金を破るだけの威力を出せるわけがないのだ。
超硬チタン合金を破壊できる武器と言えば光子魚雷だが、あれは反物質弾頭を積んでいる兵器なので、反物質がなければ作ることができない。
(反物質か……どうやって手にいれる?)
反物質はブラックホールの周辺や、高エネルギーの物体同士の衝突で生まれる。
(ザイリチウム結晶があれば反物質も作れるんだろうけど、核融合自体を起こせないからな……)
ザイリチウムは核融合を起こした時に生まれる金属である。
思いつきはしたものの、ザイリチウム自体が入手できないのであれば絵に書いた餅でしかない。
そんな時、ログハウスの入口がノックされ、マリアが入ってきた。
「ゼロ、ちょっといいかしら」
「なに?」
「あのね……今度、アリスが戻って来るでしょ?その、赤ちゃんようにいろいろと揃えたいのだけど……その……お金が……」
「ああ、そうか。ちょっと待ってて」
ジェイムズは森で手頃な石を何個か拾ってくると、黄金錬成の魔法を使って金に変える。
(こんな簡単に手に入る金にどれだけの価値があるというんだ。金の価値が暴落するはずだぞ)
この世界で金の価値が暴落したという話を聞いたことがない。
(所詮は偽りの世界か。炭素が金に変わる。まるで原子が融合してるみたいだ……ん?原子融合?……これだ!)
ジェイムズはログハウスに戻り、入口で金塊をマリアに渡すと、ログハウスへと飛び込んでいった。




