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<EP_022> 鬼灯の花言葉

「ゼロ、大変にゃ!」

ジェイムズが家へと降り立つとターニャとマリアが飛び出してきた。

「どうしたんだ?」

二人と目を合わせないようにしながらジェイムズは聞く。

「今、お城から連絡があって、アリスの子が生まれそうらしいの」

「え?出産予定日はだいぶ先のはずだろ?」

「ゼロは転生者で伝説の勇者にゃ。その子供なんだから、何があっても不思議じゃないにゃ」

「ゼロ、行ってあげて。アリスも待ってるはずよ」

二人にそう言われ、ジェイムズは城へと飛び立った。


王城に入ると待っていた兵士にアリスの元へと案内される。

豪華な寝台の上で寝ていたアリスはジェイムズが入ってくると目を輝かせる。

「ゼロ様、来てくださったのですね」

額に汗を浮かべ、苦痛に顔を歪ませながらも微笑みかけるアリスは、胸を突き刺すほど美しかった。


ジェイムズは罪の意識を感じつつ、優しさの仮面を被って苦しそうな顔で手を伸ばし、汗ばんだ白く美しい手を握る。

「ゼロ様。私、元気な子を産むわ。私、幸せよ。あなたの子が産めるのですもの」

アリスは苦しそうな、でも幸せそうな目でジェイムズを見つめ、精一杯の力で握り返してくる。

「ああ、大丈夫だ、アリス。俺はここにいる。安心しろ」

ジェイムズはそう答えるのが精一杯だった。


産婆に言われジェイムズは部屋から出ていく。

部屋から出ると、用意してあった椅子へと腰を降ろし、肘掛けに拳を振り下ろした。

(クソっ!コイツは罠だ。このシステムが俺を世界に繋ぎ止めるために作った罠だ。人の命を何だと思っていやがる!)

システムに対する怒りが湧いてくるが、アリスの顔を思い出すと、自分の妻への再三の裏切りを思い出し罪の意識が心を支配する。

ジェイムズが怒りと罪悪感で頭を抱えていると、部屋から赤ん坊の鳴き声が聞こえてきた。


「生まれました」

助産師としてついていたメイドが勢い良く飛び出してくる。

「おめでとうございます。ゼロ様。可愛い男の子と女の子の双子でございます」

「そうか……」

ジェイムズは立ち上がると無表情のまま部屋に入る。

寝台には疲れてはいるが、満足感と幸福感に包まれたアリスと、枕元におくるみに包まれた赤ん坊が二人いた。


「ゼロ様。私、頑張りましたわ」

「ああ、お疲れ様」

ジェイムズは無表情のまま唇だけで笑い、アリスを労った。

「ねぇ、ゼロ様。名前はなんといたします?」

「考えていたんだ。男の子ならサイ、女の子ならサリスってね。どうだい?」

「サイとサリス、良い名前ですわ。サイ、サリス……生まれてきてくれてありがとう」

「アリス。本当にお疲れ様。今はゆっくり休んでくれ」

ジェイムズが部屋を出て、大広間に戻るとボケータ王と城の重臣たちが集まっていた。


「ゼロ殿。生まれたようじゃな。して、男か女か?」

「男女の双子ですよ、ボケータ王」

「そうか。名前は?もう決めたのか?」

「ええ。男子はサイ、女子はサリスと決めました」

「そうか。何か意味はあるのか?」

「いえ、あまり意味はありません。二人合わせるとサイサリス……俺の世界で無病息災や厄除けを願う花の名前ですよ」

「それはめでたい」

王の言葉に広間は湧きたち「サイ王子、万歳!」「サリス王女、万歳!」とそこかしこで声が挙がった。


(サイサリスか……こんな名前を付けるなんて、父親失格だな)

二人の名前を連呼する声を聞き、ジェイムズの中に自虐の念が湧き上がってくる。

口々に祝辞を述べてくる人ごみをかきわけジェイムズは城の外に出た。

城を出ると、天を仰ぎ憤怒の形相を浮かべ、家の方角へと飛び出していった。

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