<EP_018> コマンドスクリプト
それはコマンドスクリプトだった。
今のゼロにはそれが何を意味するのか、完全に理解することができる。
ゼロが何かを考えると、それに対応して世界を書き換え、ゼロに世界を対応させる。
それがスクリプトの全てだった。
世界をゼロに都合の良いように調える。
それが【楽園】スキルの効果だった。
呆然としながらスキル発動のログを遡っていく。
スキルは様々な場面で発動しており、マリアやターニャの反応までが次々と書き換えられていた。
(ボクがこの世界を狂わせている?)
そんな思いが浮かんでくる。
【EDEN System Activate.】 Asset_Target: Maria(ID004). PROTOCOL: Relationship_Recalculation -> LOVE_ZERO.
Required_Asset_Removal: Barkus(ID003), Tonma(ID008).
CONSTRAINT_ID:003 (Barkus) & CONSTRAINT_ID:008 (Tonma) -> STATUS: ELIMINATE.CAUSALITY_REWRITE: Forced_Attack_Event (Black_Dragon).
Status: Complete!
(な、なんだこれ……)
前後の発動履歴から当時を思い出してみる。
(マリアってやっぱり美人だなぁ。前から美人だとは思ってたけど、今はすっかり母親って感じで、さらに母性や慈愛がにじみ出てる。アリスの気品やターニャの無邪気さも魅力だけど、マリアの母性も魅力的だなぁ……)
思い出すとゼロは身体の震えが止まらなかった。
(ボクがマリアを狂わせた?そして、ボクがバーカスとトンマを殺した?)
そう結論づけるしかできない。
「うわぁぁぁぁ」
ゼロは叫び、頭を掻きむしり、頭を抱えてテーブルに突っ伏した。
自分の両手を見る。
(あの日、街が唐突に竜に襲われることも、竜を殺すことも、そして竜がマリアの家に落下してバーカスとトンマを押しつぶしたことも、全て、全て、ボクが仕組んだことだったんだ)
バーカスが死んだ日のことを思い出し、ゼロは再び頭を抱えてテーブルへ突っ伏す。
(ボクが殺したんだ。ボクは殺してしまったんだ。親友を……その子供を……ボクのこのスキルが……そして、優しかったマリアを変貌させた……)
親友を殺したこと、その理由が親友の妻に欲情した自分であるということに、涙と自己嫌悪が止まらなかった。
目を閉じると、自分の上で淫らに動くマリアではなく、慈愛に満ちた笑みでトンマをあやすマリアが瞼の裏に映る。
(ボクは、マリアの心も殺したんだ……)
全てを欲望のままに動かし、世界を狂わせた元凶が自分であるという事実にゼロは呆然とする。
(ま、まさか……)
ゼロはそのままログを追い続けた。
【EDEN System Activate.】 Target: Tarnya(ID005) -> Relationship: Love. Status: Complete!
(ターニャまで……)
セロは額に拳を当てると、深く瞑目し、動くことができなかった。




