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<EP_017> ボクは誰?

廊下の床に投げ出され、ゼロは倒れ込んでいた。

後ろのハッチが閉まっており、黒人の男がゼロに手を差し出す。

「ジェイムズ。危機一髪だったな。大丈夫か?」

(この男は誰だ?……いや、この人をボクは知っている。彼はジョッグ・ラフォーン中尉。ボクの上官だ。上官?ボクは一体誰なんだ?)

ゼロがラフォーンの顔を覗き込み混乱していると天井から声が聞こえてくる。

「こちらブリッジ。ラフォーン、無事か?」

「はい。リカルド艦長。ただ、メインエンジンがやられ、機関部員も多数やられました。生き残ったのは私とジェイムズだけです」

「そうか……至急ブリッジにあがってくれ」

「了解!行くぞ、ジェイムズ!」

天井からの声と会話をするとラフォーンは廊下を走り出し、ゼロもそれに続いていった。


「ゼロ、大丈夫にゃ?」

背中をターニャに叩かれゼロは我に返る。

(まただ……あれは一体……)

うずくまったまま動けないでいるゼロに、ターニャが顔を覗き込んでくる。

「ゼロ、顔が真っ青にゃ。きっと、久々の発動で疲れたのにゃ。家でゆっくり休むといいにゃ」

ターニャに促され立ち上がって周りを見ると、サーヴァントたちが森から資材を持ち出し、豪邸の建築をはじめていた。

「ゼロ、家はすぐに建つにゃ。ベッドでゆっくり休むにゃ。アタシが癒してあげるにゃ」

ターニャは笑顔でゼロの手を引いていく。

「い、癒すって、おい、ターニャ……」

「今夜はアタシが、いっぱい愛してあげるにゃ」

ターニャは淫靡な笑みを浮かべた。


ラフォーンとジェイムズが警報が鳴り響くブリッジに飛び込むと、そこには数人の男たちが悲壮な顔で慌ただしく動いていた。

(ここはどこだ?この人たちは誰?……いや、ボクは知っている。ここは星間探査船スター・エンデバーのブリッジで、中央に立っている壮年の男性はリカルド艦長。その前で操縦桿を握っているのが主任パイロットのデスタ少佐。その脇で火器コンソールを操作してるのはヴォーグ中佐だ……)

見知らぬ場所と、見知らぬ男たちのはずなのに、ゼロは彼らとこの場所を知っていた。


ゼロが立ち尽くしていると、リカルドが叫ぶ。

「ジェイムズ少尉!ボケッとするな!早急にメインエンジンを修復してくれ。ラフォーン!艦のエネルギーをありったけシールドに回せ」

リカルドの鋭い声にゼロは反応し、ブリッジのコンソールパネルに取り付く。

タッチパネルには見知らぬボタンが浮かんでいたものの、何を意味するのかわかっていた。

ゼロは言われた通りに、メインエンジンの復旧作業をしていく。


「艦長!ダメです。このままシールドを維持し続けると、エンジンが焼き切れてしまいます!」

「デスタ!敵のトラクタービームを振り切れないのか」

「現在、試みてはいますが、振り切れません」

「くそっ!」

リカルドが唇を噛み締め拳を打ち合わせる。

「ヴォーグ!光子魚雷を発射しろ。相手を破壊しても構わん」

「了解。光子魚雷発射!」

ブリッジに光子魚雷の発射された音と振動が伝わってきた。

「ダメです。敵機影にダメージを与えられません」

ヴォーグの言葉に全員が言葉を失っていた。

次の瞬間、ブリッジ内に爆発音が響き、ゼロの意識も途切れた。


「うわっ!」

ゼロがベッドから飛び起きると、全身汗まみれで喉がカラカラに乾いていた。

(いったい、なんなんだ、あれは……夢?いや、夢じゃない……)

先程見た、スター・エンデバーの船内の映像は生々しく、鼻には男たちの汗と硝煙の匂いが残っている。

「ん?どうしたにゃ?怖い夢でも見たのか?」

隣で寝ていたターニャが声をかけてくる。

「いや、なんでもないよ」

ゼロはベッドから抜け出して洗面所に行き、顔を洗って水を飲む。

鏡には自分の顔が写っていた。


(ボクは誰だ?ボクはゼロ・アブソリュート。転生してきた元サラリーマンのはずだ…)

ゼロは必死になって記憶を辿り、転生前の記憶を呼び起こそうとした。

しかし、その記憶は酷く曖昧で、先程みた夢の中とは雲泥の差。

(ボクは……ボクは誰なんだ……)

記憶の混乱にゼロは頭を抱え掻きむしる。

「ゼロ、大丈夫にゃ?」

鏡越しに見ると、洗面所の入口で心配そうな顔で見ているターニャがいた。


「うるさい!大丈夫だって言ってるだろ!」

記憶の混乱に苛立ち、ゼロはターニャを怒鳴りつけてしまう。

「そんなに怒らなくてもいいにゃ……」

ゼロのあまりの剣幕にターニャがしょんぼりと悲しそうな顔をした。

「ああ、すまない、ターニャ。ホントになんでも無いんだ。ゆっくりお休み。ボクはちょっと考え事をしてくるよ」

ターニャを残し、ゼロは服を着ると一人リビングで椅子に腰掛けた。


(ボクは……ボクは、ゼロ・アブソリュートのはずだ……)

ゼロはステータス画面を開き、名前を確認する。

そこにはゼロ・アブソリュートの文字と000が並ぶ、いつものステータス画面があるだけ。

そのまま下にスクロールさせ、【楽園】のボタンを押す。

すると、過去のスキル発動ログが映し出された。

(こ、これは……)

今までは何とも思わなかったスキルのログ画面だが、今のゼロには、その意味がわかってしまう。

(これはコマンドスクリプト?どういうことだ?)

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