↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
12/36

<EP_012> 母性

ゼロはターニャに手を引かれてログハウスへ戻る。

ターニャは満足しきった顔で上機嫌に鼻歌を歌っているが、ゼロの胸中は重い。

ターニャと手を繋いでいる場所が、熱く焼けるように感じた。


「ただいまにゃ、アリス」

ターニャが明るく声をかけると、身重になったアリスが、いつもと変わらぬ完璧な笑顔で二人を出迎えた。

「おかえりなさい、ゼロ様、ターニャ。狩りはうまくいきましたか?」

アリスはそう言うと、まずターニャの頭を愛おしそうに撫で、次にゼロの手を両手で包み込んだ。

その温かさに、たまらないほどの罪悪感を覚えた。


(アリスは何も知らない。彼女の優しさ、この満ち足りた笑顔が、俺の罪を抉っている)

「うん、今日は大漁にゃ!」

ターニャは満面の笑みでアリスに狩りの成果を報告し、鴨を掲げる。

「まあ、それは良かったわ。ゼロ様も、今日はなんだかすっきりとした表情で、安心いたしました」

アリスはそう言いながら、ゼロの顔を覗き込んできた。

ゼロは、思わず硬直した。彼女の柔らかな瞳の奥には、裏切りを糾弾する色など微塵もない。あるのは、「ゼロの幸福」を純粋に願う、無機質な献身だけだ。


「……ああ。心配かけたみたいでごめんね。」

「いえ。 ゼロ様がお元気で、お健やかに過ごされること。それが、今の私にとっての何よりも大切な喜びですわ。ターニャがいれば私も安心ですわ」

「さぁ、今日は鴨肉のシチューにゃ。サーヴァントも手伝うにゃ」

台所で料理を始めたターニャとアリスを見ながらゼロは複雑な心境であった。


「アリス、もっと食べるにゃ。いっぱい食べて元気な赤ちゃんを産むのにゃ」

いつものように三人で夕食を囲みながら、食が進まない様子のアリスにターニャが無邪気に言う。

「そうね、元気な赤ちゃんを産まないとね」

「おい、アリス。無理しなくて良いぞ。無理して食べるほうが身体にさわる」

苦しそうな顔でシチューを食べようとするをするアリスをゼロは心配してしまう。

「アタシもいっぱい食べて、強い子を産むのにゃ」

ターニャの言葉にゼロはドキッとしてしまう。

「ゼロ様。私のことは心配しないで良いですわ。前にも申しましたが、私がお相手できない間だけでも、ゼロ様がお望みでしたら、ターニャを愛してあげて下さいませ」

口元を抑えながら、真顔で優しく言ってくるアリスを見て、ゼロの中で何かがざわついた。


翌日、ターニャが狩りへと誘ってくるが、昨日の今日なので、ゼロは躊躇してしまう。

しかし、アリスの強い勧めもありゼロはターニャを連れて狩りへと出発する。

ターニャとの連携で程よく鹿を仕留めると、ターニャがゼロに抱きついてきた。

「お、おい、ターニャ……」

「今日の獲物は仕留めたにゃ。だからご褒美を貰うにゃ」

「タ、ターニャ……ボクにはアリスが……」

「アリスも言ってたにゃ。アリスがお相手できない間はアタシが相手するにゃ」

普段の子猫のような顔から牝の顔に変わるターニャの誘惑にゼロは抗えなかった。

何回か逢瀬を続けると、ゼロの中の罪悪感も薄れていく。


アリスの出産が近づくと、出産の準備のために王城へ戻ることになった。

「ゼロ様。しばらくの間ですが、ご自愛下さい。きっと元気な赤ちゃんを産んで帰ってまいりますわ」

「ああ、待ってるよ、アリス」

ボケータ城前での別れ際、別れを惜しむようにアリスとゼロは抱き合う。

名残惜しそうに何度も振り返るアリスを見送って、二人は城を後にした。


バーカスとマリアの家に寄る。

マリアがトンマを抱いて笑顔で出迎えてくれた。

「まあ、ゼロ、ターニャ。良くいらっしゃいました」

「ゼロも親父になるんだな。救国の勇者と姫様のロイヤルベイビーの誕生に街中がもちきりだぜ」

バーカスは、相変わらず無骨な笑みを浮かべる。

「アリス様も、元気な赤ちゃんを産んでくれるといいですね」

マリアはそう言って、胸元のトンマに優しい眼差しを注いだ。 トンマは母親の胸に抱かれ、穏やかに眠っている。小さな手にマリアの胸元の服を握りしめている姿は、見る者の心を和ませた。

トンマを見つめるマリアにゼロは見とれてしまった。


二人ととりとめもない会話をして街を後にする。

その夜、ベッドでゼロはぼんやりと考えていた。

(マリアってやっぱり美人だなぁ。前から美人だとは思ってたけど、今はすっかり母親って感じで、さらに母性や慈愛がにじみ出てる。アリスの気品やターニャの無邪気さも魅力だけど、マリアの母性も魅力的だなぁ……)

横目で、裸のまま可愛い顔で寝息をたてているターニャを見ながら、そんなことを考え、目を閉じた。


【EDEN System Activate.】 Asset_Target: Maria(ID004). PROTOCOL: Relationship_Recalculation -> LOVE_ZERO.

Required_Asset_Removal: Barkus(ID003), Tonma(ID008).

CONSTRAINT_ID:003 (Barkus) & CONSTRAINT_ID:008 (Tonma) -> STATUS: ELIMINATE.CAUSALITY_REWRITE: Forced_Attack_Event (Black_Dragon).

Status: Complete!


ゼロの前に半透明の画面が一瞬映ったが、気づくこともなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。