交差する運命3
敵意を持った人間が背後から近づいてくるのには気付いていた。間合いに入ったら尻尾で薙ぎ払うつもりだった。
しかし。
「駄目っ!」
突然ミホがガロンと敵の間に飛び出した為、尻尾を動かすのを躊躇ったのだ。
次の瞬間、己を狙っていただろう槍は、無情にもミホの右胸上部に刺さっていた。そしてミホはガロンの目の前で、力なく崩れ落ちた。
痛みで歪められた顔、じわじわと広がる血の染み。
かつて混ざり者によって大怪我をした時のミホの苦しむ姿が頭をよぎる。
(なんでミホばっかりこんな目に!?)
ミホを刺したのは、さっき麓の街でガロンを追いつめた奴らの1人だった。憎しみを込めた目でガロンを見ていた奴だ。
そいつが呆然とした様子で槍を掴んだままだったので、ガロンは反撃出来なかった。考え無しに薙ぎ払えば、その衝撃がミホにも伝わってしまうからだ。
(こいつの事は後回しだ。ミホを助けないと!)
「ミホ! ミホ! お願い、目を開けて!」
名前を呼ぶと、しばらくしてミホはうっすらと目を開けて何か言おうと口を開いたので、ガロンは聞き逃すまいと耳を澄ませた。
「尚紀さん…蓮を…守って」
ミホの潤んだ目はガロンではなく、己を刺した人間に向けられていた。
弱々しいミホの声を聞いた途端、そいつは泣きそうな顔になった。
「お…かぁ…さん?」
(!! こいつがレン!?)
しかしミホはぐったりと目を瞑って、意識をなくしてしまったようだった。
(俺のせいだ。ミホはずっとレンに会いたがっていたのに。俺が勝手に人間の街にきたから、こんな事になったんだ…)
「ミホ! しっかり!…女神様、お願いします。俺の寿命の半分を使っていいから、ミホを助けて!」
(ミホを死なせるわけにはいかない。こんな結末、望んでいない。俺はただ、また皆で仲良く暮らせればそれで良かったのに…)
「あ、あぁっ………あぁぁああぁっ!!」
槍から手を離し、膝から崩れ落ちたレンが空に向って泣き叫んだ。
(俺のせいだ。俺が親子の再会に無理矢理入ろうとしたから…。俺がレンに嫉妬したせいで…)
「ミホさん! ガロン君、ミホさんをそのまま支えて! リアム殿!」
「分かってます! 槍を早く!」
馬車の中からショーンと神官が血相を変えて飛び出してきた。
「レン! そこをどけ!」
「っ………せん…せ…い?」
ショーンに押しやられて倒れたレンはすぐに上半身を起こしたが、尻餅をついた状態で再び茫然自失状態に陥ったようだった。
ショーンはそんなレンに構う事なく、ミホに刺さった槍に手をかけた。
「ミホさん! 必ず助けますから少し我慢して下さい!」
ショーンが槍に手をかけて、ぐっと力を込めて引き抜くと鮮血が溢れ出た。すかさずリアムが傷口に手をかざし治癒魔法を施す。
「聖なる光よ、女神様の慈愛を届ける道となりて我が手に集い給え。我が信仰心を糧とし、この者の傷を癒し給え」
リアムが詠唱を唱えると淡い緑色の光の粒が現れ、やがて大きな光の塊がミホの傷口を覆った。
肉体再生の治癒魔法はかなりの精神力を使うらしく、リアムの額に玉の汗が光っている。
目を瞑り集中して治癒魔法を施していたリアムだったが、やがて目を開いてミホを見て愕然としたように呟いた。
「…何故だ…」
「どうしました?」
「傷は塞ぎました。しかし回復魔法が効かない。弾かれてしまうんです」
「自分がやってみます」
ショーンがリアムと場所を変わった。
「先生、お願い。ミホを助けて」
「勿論です!」
(女神様、どうかミホを助けて下さい)
青白いミホの顔を見つめながら、ガロンは祈った。
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