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勇者の母ですが、魔王軍の幹部になりました。  作者: 野山 歩


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選ばれし者2

「親を魔物に・・・それは、辛いな」


 そんな境遇だったら、魔物を仇と憎んでも仕方ないだろう。何と言っていいかわからず、エルマーはそれだけ言うと黙り込んだ。

 レンは気にした様子もなく話を続けた。


「実を言うと、エルマーとは一度話をしてみたかったんだ。魔物を倒さずに入門を許されたのは、初めての事らしいよ」


「ああ、その事か。自分でも驚いてるんだ。絶対に落ちたと思ってたから」


◇◆◇◆◇◆


 入門試験には面接と実技がある。この二つをパスして初めて最終試験を受けられるのだけれど、それは実際に下級の魔物を退治するというものだった。

 高い壁で囲まれた直径10メートル程の丸い闘技場には魔法で結界が張ってあり、魔物は逃げられないようになっている。

 試験官や他の受験生達は闘技場の上から試験の様子を見られるようになっており、何人かの聖騎士は、万が一、受験生に危険が迫った時の為に、いつでも助けられるように待機していた。

 闘技場の中には女神様のモチーフが描かれた扉があり、試験後その扉が開けば入門を許可される。

 聖騎士の試験が最難関と言われるのは、この扉のせいだった。たとえ魔物を倒しても扉が開くとは限らないからだ。女神様の意思を反映すると言われているその扉は、その人物の人となりを見ると言われている。

 エルマーの対戦相手として用意された魔物は羊程の大きさで、アナグマのような見た目をしていた。

 試験開始の銅鑼の音がなると、その魔物はただ逃げ場を探して闘技場内をあちこち走り回り、逃げられないと知ると絶望的な目をしてガタガタと震えているだけで、戦う意思は全く見られなかった。

 エルマーは剣を構えて下級魔族の様子をしばらく見ていたけれど、やがてため息をついて剣を(さや)に納めた。

 無害な魔物に攻撃しないという誓いを立てていたし、そうでなくてもこんなに怯えている相手に剣を振るう気にはなれなかった。完全な弱い者虐めだからだ。

 

(これで聖騎士になる夢は完全に終わったな・・・)


 そう思って入り口に帰ろうとした矢先、女神様のモチーフが白い光を放ち、扉が開いた。

 その場にいた誰もが目の前の光景を信じられず無言になった。

 エルマー自身、何が起こったか理解できず、しばしその場で固まって扉をただ見つめていた。


「何をしている。君は合格だ。その扉を通ってこちらに登ってきなさい」


 アルヴィン隊長の声が闘技場に響き、周りがざわざわと騒がしくなった。

 エルマーが恐る恐る扉をくぐり階段を上ろうとした時、後ろで扉がひとりでに閉まる音がした。周りには人はおらず、試しに押したり引いたりしてみたが、扉はびくとも動かなかった。

 階段は聖騎士達のいる特別テラスへと続いており、登りきったエルマーを現役の騎士達が肩を叩いて祝福してくれた。

 が、不合格者の中には納得がいかず、下の階からエルマーに突っかかる奴もいた。


「魔物を退治した俺が不合格で、試験を放棄したお前が合格だなんて、どう考えてもおかしいだろう!どんな汚い手を使ったんだよ?おまえには聖騎士になる資格はない。辞退しろ!」


 他の受験生も口々にエルマーを非難した。


「確かに前代未聞だが、あの扉は我々が操作できるものではない。エルマー、君は間違いなく女神様に選ばれた。堂々と胸を張るといい」


 アルヴィン隊長がエルマーの隣に立った。


「聖騎士になる資格をお決めになるのは女神様だ。我々でも、ましてや君達でもない。彼の不正を疑うという事は、即ち我々の事も疑っているという事だろう。この結果に不服がある者こそ、ここにいる資格はない。即刻立ち去りたまえ」


 アルヴィンの言葉に受験生達は肩を落として帰っていった。


◇◆◇◆◇◆


「話を聞いた時、どうして敵である魔物に情けをかけるのか聞きたいと思ったんだ。でも、話してみてわかった。エルマーは思いやりがあって優しいんだな。それに自分の信念で行動できる」


「買いかぶりじゃないか?大した話はしてないだろう?」


「ここで浮いている俺に、こうやって風よけの板を持ってきてくれたのが何よりの証拠だよ。よかったら、友達になってくれる?」


 はにかみながら聞いてくるレンの背中を、エルマーは笑いながら叩いた。


「なんだよ、俺、もうすっかり友達になってたつもりだったぜ」


 楽しそうに笑い合う少年達の様子を、遠くからアルヴィンが目を細めてみていた。

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― 新着の感想 ―
[一言] ミホさんが生きているの知ったらどうなっちゃうんだろ
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