氷の魔鉱石6
馬は物凄い速度で丘を駆け下りたので、私は馬のたてがみに必死でしがみついていた。
体の両側にシヴァの腕があるとはいえ、慣れない高さとスピードは、やはり怖い。
西のメインストリート沿いは、首都一番の美しい街並が特徴らしいけれど、景観を楽しむ余裕なんて全くなかった。
魔鉱石の入った皮の袋を落とさないよう、右手に紐を巻き付けた状態でたてがみを握りしめていたのだけれど、時間が経つにつれ、手袋越しにも冷気が伝わってきた。
「ねえ、まだ着かないの?何だか冷たくなってきてるんだけど!」
私は前を走る警備員に向って叫んだ。
「もう少しで南のエリアに入ります」
土地勘がないため、自分がどこにいるのかもわからない。
「シヴァ、大丈夫? 間に合うかしら?」
「いいからそのまま持ってろ。絶対に落すなよ」
魔鉱石は、気温が高くなってきたのがお気に召さないらしい。
周りの空気を冷たくしようと再び魔法を発動しているようだった。
すぐに凍えるような事にはならないだろうけど、凍傷で黒ずんだ男の指先を思い出して、私はぞっとした。
「見えました。あそこです」
「おーい、こっちだ」
ダンの声が聞こえた。
シヴァは馬に鞭を入れ、警備員を追い抜かしてダンの元へと走らせた。
「冷凍庫の修理は出来てるか!?」
「ああ。こっちは準備できてるぞ」
ラーソンが納屋から顔をのぞかせた。
「ミホ、袋を寄越せ」
シヴァは私から袋を受け取ると、馬上からラーソンに向けて放り投げた。
「ラーソン、後は頼む」
ラーソンは片手で袋をキャッチすると、袋を開けて中を覗いた。
その途端、袋の中から暴風雪が吹き荒れ、ラーソンの髭を真っ白に染め上げた。
「うおっ!相当ご機嫌斜めだな。まあこの暑さじゃしょうがねぇか。すぐに快適なお部屋に案内するから、暴れないでくれ、別嬪さん」
ラーソンは魔鉱石に語りかけながら納屋へと姿を消した。
「よかった、間に合った・・・」
馬から下りたシヴァと私は安心のあまり脱力し、お互いに寄りかかるようにしてその場に座り込んだ。
「二人とも大丈夫か?」
「さすがに疲れた。今日は臨時休業にしよう」
「そうね。ダン、悪いけど家で休ませてもらえる?」
「もちろんだ。遠慮なんかするな」
ダンに部屋に案内され、仮眠を取ろうと私達は横になった。
朝になったら事情聴取とかされるだろう。今のうちに休んでおかねば。
そう思って目を瞑ったのだけど・・・
「あ〜、寝てる場合じゃない。朝になったらミルクと卵の配達が来るわ。
そのまま外に置いてたら傷んじゃう。帰らないと!
シヴァ、起きて。死んだふりしてもダメ。帰ってからにしなさい」




