表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者の母ですが、魔王軍の幹部になりました。  作者: 野山 歩


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

118/555

ドルチェ3

 シヴァはダンにソファーに座るよう勧め、自分も反対側に座った。


「頼んでいた調査について、報告してもらえるか?」


「ああ。まずは小麦粉と砂糖の相場なんだが、まあこんなもんだ」


 ダンは懐から書付けをだしてシヴァに渡した。


「この一ヶ月はあまり変動も無かったな。おふくろに聞いたところ、今年は天候に恵まれて豊作だったらしい」


「ふむ。後でミホと相談して一週間にどれほどの量を使うか算出してみよう。店として借りられそうな物件はあったか?」


「それなんだがなあ・・・」


 ダンは頭を掻いた。


「人通りの多いのはやっぱり城と神殿に続くメインストリートだ。途中で東西に別れちゃいるが、全部埋まってて空きがない。裏通りに入ればいくつかあるんだけどよ、菓子屋を開くにはちょっとな・・・」


「何か問題があるのか?」


「なんつーか、治安があまり良くねーんだよ。周りの店は飲み屋とか娼館ばっかりだ。その辺りだと客が来るのは夕方からだしな」


「なるほどな・・・一ヶ月の猶予があったとはいえ、一人で探させて悪かったな。手伝おうにも、こちらは改装で手一杯だったし、そもそも私達はよそ者だから街がどんな風かも知らないんだ。せめて地図があればいいんだが」


「あ〜、そりゃそうだな。今度来る時に用意しておくよ」


「助かる」


「まあ、今のは俺ら一般庶民の暮らす城下町の話なんだ。

 貴族や豪商が暮らす西の丘の上の高級住宅街には、馬鹿でかい商店街がある。ここは6つの建物が円形に集まってて、色んな種類の店があるらしい。服や食料はもちろん、高級家具や宝飾品の一級品が世界中から集められてるって話だ。なんでも希少な魔石も取り扱ってるって噂だ。

 道は馬車で乗り入れられる程広いうえに屋根がついてるから、雨の日でも快適に買い物が出来る。

 貴族を顧客にできれば一番儲かるだろうな。ミホの作る菓子はきっと貴族にも気に入られるだろう。だが店を借りるにしても場所代が馬鹿高いし、とてもじゃないが俺には貴族相手の商売なんて出来そうにも無い」


 ダンがため息をついた頃、ミホがお茶を持って部屋に入ってきた。


「個人的には一般の人、特に子供に食べてもらいたいわね。首都では子供も働いてるんでしょう?コストがあまりかからなくて大量生産できるクッキーなら価格は抑えられると思うの。頑張ったご褒美に買ってもらえるようになりたいわ」


「そうだな。店を借りるのが無理なら、屋台とかはどうだ?」


「ああ、それなら組合に入って場所代を払えば可能なはずだ。まあ新参者には広場とか市場でいい場所をとるのは厳しいかもしれんが」


「周りに競合する店が無ければ問題なかろう。屋台なら日によって場所を移動する事も可能だしな」


「屋台にするなら荷馬車の荷台を改造すればいい。俺が造ってやるよ」


 ラーソンが嬉々として言った。


「まずは冒険者のギルドの近くで屋台が出せないかしら?」


「なぜだ?」


「以前ドルトに泊まった時に、冒険者の人にお菓子を試食してもらったのよ。お客さんが冒険者ならダンも顔見知りでやりやすいだろうし、何より味を知ってるから買ってくれるかもしれない。まずは口コミで広がればいいなと思って」


「ああ、そりゃいい考えだ。ギルドの近くには道具屋や武器屋ならあるが、菓子を売ってるところはない。せいぜい定食屋くらいだ。商売敵だと目をつけられる事も無いだろう。今度話をつけてくる」


「あとは材料の仕入れについてだが、卵やミルクは新鮮な方がいいとミホが言っている。以前ドルトではどうしていたんだ?」


「近隣の農場から仕入れてたな。ドルトが急に宿をたたんだから、収入が減って困ってるはずだ。またここで買い取るってことなら、喜んで契約してくれると思うぜ」


「そうか。後でミホと一日にどれくらいの量を使うか算出してみる。決まったらその農場に話をつけてもらえるか?」


「わかった。仕入れるのは卵とミルクだけでいいのか?」


「出来ればバターも仕入れたいわ。無塩バターを作ってくれる所があればいいんだけど」


「それくらいなら、たぶん可能だと思うぜ。まとまった量なら配達もしてくれるはずだ」


「それは有り難い。うちは完全な人手不足だからな。実は販売をダン一人に任せるのは忍びないと思ってるんだ。休憩も必要だしな。誰か信頼できる人はいないか?」


 シヴァの気遣いにダンは頬を緩めた。


「そうだな。良ければ、うちのおふくろを雇ってもらえないだろうか。普段は針仕事で生計を立ててるんだが、収入が不安定でな。俺の休憩時間くらいなら店を任せても大丈夫だと思う」


「ああ、ダンさんのお母様なら安心ね。ミトン、とっても気に入ったわ。ありがとうって伝えておいて」


 母親に無理矢理持たされた手製の品だったが、ミホはとても感激していた。ミトンの片隅に施された小さな麦の穂の刺繍を見て、丁寧な仕事だと感心してくれた。


「ところで、店の名前は決まってるのか?」


「ああ。’ドルチェ’にしようと思う」


「ドルチェ?」


「ええ。ある地方でデザートを指す言葉なの。他にも柔らかいとか優しいとか意味があるんだけど。ここは元々ドルトって名前だったから、覚えやすいかなと思って」


「ふーん、まあ悪かねぇな。店のシンボルマークはあるのか?」


「ええ。それは決まってるわ」


 ミホがニッコリと笑った。


「三日月よ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 馬車が入れるサイズの屋根付き道路の商店街…ショッピングモールかよってレベルですね。 貧富の差が極端に激しそうな国ですねぇ。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ