第3話 色々とありすぎて
68日目。
放課後。
1-Aにマリアンナたちが来てくれた。
「今日来るらしい。どうするブライン」
エリオンが言った。
「その人に会いましょう。お願いするよ」
「そうか。じゃあ、どこがいいんだ」
「体育館裏でどうかな」
「そこでいいのか?」
「うん。そこでいいよ」
「わかった。奴を案内するから、先に行っててくれ。ブライン、マリアンナを頼む」
「了解」
エリオンは二人を預けに来てくれたらしい。護衛をしてくれているから、一時は慣れないといけない事を気にかけていたみたいだ。
「体育館裏とは珍しい場所ですね。ブラインさん」
二人と一緒に現場に向かう途中、マリアンナから話が始まる。
「まあね。たまたま今日は修練が重なるって事かな」
シャオリンが久しぶりに会いたいと言ってきたから、ちょうどよかった。
いつもこんなに早い段階で来るわけじゃないから、先にアレンの件が済むだろう。
「ブライン君は、装備を変更しないんですか」
「ん? クレア、どういう事?」
「学生服だけで修練をするんですか?」
「ああ。そういうことね。そうだな。気を付けた事がなかった。と言うかお金がね」
そう自分にお金をかけていないから、装備にまで手が回っていない。
高い威力の攻撃をもらえば一か八かで死ぬ。ギャンブル性の高い人生になっている。
「あの・・・」
「なに? どしたの?」
言いにくそうだな。柔らかく返事をして促す。
「その・・・作ってもいいですか? 勉強してみたんです」
「ん? 何を?」
「う、うちですね」
「うん」
「せ、選択授業で、装備の授業を取りまして」
「ふんふん」
相槌が軽い方が話しやすそう。
「縫えるようになったんです。軽装の装備・・・・」
「え。ほんと。凄いね」
元々高い技術があるからな。あっという間に身に付いたのかな。
「いえ。まだまだなんですが。それで良かったら、ブライン君の服をですね・・・作ったり出来たら嬉しいなって」
「オレの服? いや、嬉しいんだけどお金ないんだよね」
「いえいえ。お金なんていらないんです。お礼に作りたいなって」
「お礼?」
何の?
何かしたっけ。オレってさ。
「ブラインさん。作ってもいいですよね」
「いいよ。だけど、手間かからない?」
「それは掛かりますけどね。ねえ、クレアさん。それでもいいんですよね」
「はい」
「ブラインさんにお礼したいんですよ」
「オレ何もしてないけど」
「「え!?」」
二人がキョトンとした。
「なんもしてないよね。お礼されるような特別な事なんてさ」
「そ・・それは・・・うちは、ブライン君に救われて・・・」
「なにを?」
「ブラインさん。彼女の言葉と行動で救ったんですよ。鈍い方ですね」
あんたに言われたくない。聖女様。
「そんなのはさ。当たり前なんだよ。オレと君。それとクレア。エリオン。君たちはクラスメイトじゃないけど友達でしょ」
「はい」「え。そ。そうです」
「でしょ。だったら当たり前だから、感謝なんていらないよ。これから頼るのは、オレの方になるかもしれないしさ」
「「・・・・」」
リミットタウンに協力してもらう可能性が高いし。
特に、クレアはね。
「で、でも。うち作りたいです!」
意地になってるな。
それだったら、後腐れない感じで、作りやすい環境にしてあげた方がいいか。
「うん。じゃあお願いしようかな。でもお礼だって考えなくていいからね。そうだな・・・お客さん第一号って感じで、後からお金を払うつもりで・・・そうだな。お店を作ろう。オレの町にさ! これがお返しでどう」
「え、うちのお店!?」
「そうそう。リミットタウンで働いてもらいたいな。良い装備作ってくれるでしょ」
「が、頑張りたいです! ぜひお願いします」
「よし。決まりだ。じゃあオレがお客さん第一号ってことで、服作ってもらおう」
「はい!」
これで職人ゲット!
我ながら、完璧な言い訳だ。
うんうん。クレアって凄い能力があるんだよな。たぶん。
あの見えていない。???の部分に何が隠されているんだろう。
「よかったですね。クレアさん」
「はい。聖女様のおかげです」
「いえいえ。クレアさんの努力をブラインさんが見ているという事ですよ」
「ありがとうございます」
と言う二人の会話が、オレの思考加速の最中にあった気がした。
◇
到着してすぐ。
「本当にいるんだろうな。お前しかいなくて、萎えてる」
「うるせえ。クズ。黙って歩けよ」
喧嘩しながらこちらに来ていた。
エリオンの隣を歩くのは、ガラの悪そうな神父。
煙草に火を点けられないので、歯で噛んだけにしていた。学校なので正直やめて欲しい。
「あそこにいるぞ」
「あ? な!?」
噛んでた煙草が落ちた。エリオンが拾って処理してくれた。
「あ、あなた様が聖女マリアンナ様!」
神父の服装の着こなしが最悪だけど、アレンは跪いて挨拶をした。
「え。まあ。まだ候補なんですけど」
「なんと。お美しいお姿で・・・神と間違えました」
「い。いえ。そんなことは無くてですね」
「いいえ。あなた様は、この世に現れた女神であります」
すげえ大絶賛。
聖教会の神父とは思えない態度と姿だけど、聖女の事は信仰しているらしい。
「クズ!」
エリオンが跪いているアレンの背中を蹴った。
「いて。なにすんだ」
「お前に用があるのはそっちじゃない。こっちの男だ」
「なんだと。女神の用じゃない!?」
「当り前だろ。女神がお前みたいなクズに用があるわけねえだろ」
「お。おい! てめえ、俺を騙したのか」
「騙してはいねえ。マリアンナは何て言った?」
「お会いしたい?」
「会ってるだろ。今」
「は?」
「会ってるから、マリアンナは約束を守ってる」
屁理屈だけど、ぐうの音も出ない真実。
「なんだと」
「こっちの男の話を聞け。彼の依頼。お前が適任だから、呼んだんだ」
「依頼だと!?」
ギッと睨んでこられても、それはそれで困る。
「すみません。オレの用件があってですね」
「んだよ。男の用事か。はぁ」
あからさまに態度が悪くなった。
「オレの町に今度教会を作ろうと思って、そこで子供たちを預かろうと思ってるんです。それで、あなたなら最前線の町にいても、ビビらずに過ごしていける人だと聞いたので、お願いしたいなと」
「は? 子供?」
「ええ。子供を見て欲しいです。そこでは一般教養くらいは与えられる授業が出来たらと」
「俺が?」
「ええ。あなたが適任だと聞いたんで」
「ちっ。こいつか・・・そんなの勝手にやってろ。ん? 最前線・・・おい、お前の町ってどこにあるんだ」
「リミットタウン」
「んだと!? じゃあ、お前があの領主か・・・」
この人も、オレの町の噂をどこかで聞いたことがあるのか。
顔に動揺が走ってる。
「はい」
「ちっ。面倒事のために、俺を騙したのかエリオン!」
アレンが、エリオンを睨んだ。
「騙してはいない。お前が勝手にここに来ただけだ。放蕩神父」
それを意に介さず、平然と返すエリオン。
「俺にはあの神父どもが合わないから移動してるだけだ」
「お前が合わせる気がないだけだろ」
「いちいちうるせえ奴らなんだよ。敬虔な信徒であるべきだとな」
「それはそうだろ」
オレも、それはそうだと思う。
「お前も。そっちの人間じゃねえだろ」
「ああ」
「なんでお前がそっち側に立って女神様のそばにいんだよ。あ?」
「俺はたまたま歳が近かっただけだ」
マリアンナのそばにいた理由って、そんな理由なんだ。
「くそ。エリオン、俺を若返らせろ。学生にしろ」
「そんな事出来るか」
「チャリオットなら出来るか」
「やれるわけねえだろ。あいつは人間だぞ」
「ちっ」
無理を言ってる。
「ふざけんじゃねえ。俺を勝手に呼び出しやがって。俺がこんな奴の町にいくわけねえだろうが」
「だろうな。お前はクズだからやるわけがねえもんな」
「てめえ。馬鹿にするんじゃねえぞ」
「それでやってやるとは言わないだろ。お前」
逆上しても、売り言葉に買い言葉で返事をするタイプじゃないのか。
「騙された俺にも腹が立つが、お前にも腹立つぜ。騙しやがって」
特殊な銃を取り出した。
この人の武器は、世にも珍しい銃器だ。
銃口に魔力が込められてる。
「撃つのか?」
「撃ってもいいぞ。その生意気な口が止まるならな」
「やってみろよ」
「躱せるって言いたいのか? あ?」
「まあな」
一発の速度は魔法よりも速い。弾丸以上の速度で放出されるのがマジックガンだ。
ただし、消費MPが悪く、威力が魔法攻撃力に依存するから癖が強い。
持ち合わせる人が少ないのはそういう理由だ。特に魔法師団が持った方が良いだろうと思うだろが、MP切れの恐れが強いから彼らは持たない。杖を持つ。
「引くぞ」
「やってみろ」
「いいんだな。その口閉じておけ。死ねや」
アレンに敬虔な神父なんて無理だろ。引き金引いたぞ。
ってオレがちゃんと見た瞬間に焦りはない。
なぜなら、黄色い閃光が現れていたのだ。
「何してんだお。そこの君!」
あれは、マジックガンの反応速度を超える怪物である。




