第2話 新たな人材
その後。
ライトニングとの擦り合わせにより、列車の手配をしてくれた。
大移動をノヴァール家が手伝ってくれる事となる。
子供14人と、マリンさん、ジュニア、シーアで移動となった。
オレは学校に行かないといけないので、ここでお別れとなった。
「マリンさん。皆をお願いします」
「はい。おまかせを」
彼女に全部の行動を託す。
「ジュニア。護衛を頼むよ。道中で敵が来るとは思えないけどね」
『はい。アニキ!』
護衛はこの子で十分だと思う。
「シーア。子供たちを頼むよ。でも、本当は君も子供だからさ。甘えさせてあげたいけど、ごめんね」
「いいえ。大丈夫ですお兄様」
「うん。いざ甘えたくなったら、連絡頂戴。オレか、ほらバーランドさんがいるから」
「ありがとうございます」
「うん。頼んだ」
皆の心のケアをシーアに託した。
そして最後に。
「よし。君たちは、もうオレの家族だからな。リミットタウンで暮らしていこうな」
「「「「はい領主様」」」」
あれ? こんなに聞き分けがよかったっけ?
「じゃあ、無事で戻ってね。オレも君たちが戻ったら領主権限を使うからさ」
彼らが戻ったらオレも戻ろうと思う。
「じゃあね~。またね~」
「「「領主様お元気で~」」」
皆に挨拶をして、オレは学校に移動した。
◇
学校に到着。
何日ぶりかも忘れたくらいに長い旅だった。
10日以上は移動していたはずだ。
廊下から教室に入ろうとしたらナオがいた。
「ブラタン。帰って来たんか」
「うん。長かった。疲れたよ」
「そうなのか。おい。ガラタン! レイン! ブラタン来たぞ」
待っててもいいのに二人が来てくれた。
「うわ。ブライン君だ。やったぁ」
「ブライン君。おひさ!」
笑顔で出迎えてくれる親友がいるのは助かるよ。
実は、殺伐とした世界であるパルティアン。
ほのぼのとする場面があってもいいよね。
いいよな!
「うん。久しぶりだ!」
授業を受けるが、やはり中身を知り尽くしているので話半分に聞く。
考え事をする。
◇
さて、問題は子供たちが帰ってきた後の話だ。
リミットタウンに学校が必要だ。
彼らには知識は二の次でいいけど、教養は得てもらいたいから、軽い寺子屋みたいなシステムが欲しい。
となるとだ。
教会の力を少し借りたい。
あそこから良い神父さんを借りたいな。
悪い神父さんはいらないけどね。
ってなると、ここはマリアンナか。
彼女の力を借りてみよう。
◇
お昼休み一個前の授業前。
彼女の教室に向かった。
1-C。
「マリアンナ!」
「あ。ブラインさん。お久しぶりですね。帰って来たのですか」
のんびりだな。この子。
お姉さんだったら嬉しいけど同級生だからな。
「まあね。昼ちょっといいかい」
「ご飯ですけど」
「じゃあ一緒に食べよう」
「はい」
誘い出したはいいが、周りの目がオレに集中している事に気付く。
まずいかもしれない。女生徒のキラキラした目よりも、特に男子生徒の憎しみの目が気になる。
「エリオンとクレアも呼んで」
「わかりました。お誘いします」
グループであれば大丈夫だろう。
皆の目が落ち着いている。
助かったと思って昼休みを待った。
◇
昼食時間。屋上にて。
「なんで俺も?」
「すまない。エリオン。魔除けにした」
「は? なんだそれ?」
「わかる?」
「なにが?」
彼に顔を近づけて小声になった。
「マリアンナの人気って高いんだろ」
「まあ。それなりにはな」
「特に男は危険だろ。狙ってる奴とかいるでしょ」
「知らん。でもまあクラスのマドンナではあるし。もしかしたら学年一か? まあ高嶺の花とは言えるだろう」
「だろうな。中身を知らなかったらな」
「まあな」
オレもエリオンも、マリアンナのおかしさを知る人間。
人としては好きだけど、恋人にしようとは思わない。
意気投合していた。
「あの。ブラインさん。何か御用だったんですか?」
「ああ。そうだった。マリアンナさ」
「はい」
ちゃんとしてれば、綺麗です。今の座っている状態なのに、背筋が伸びている姿なんて、神々しいくらいだ。お弁当の食べる量が異常じゃなければ・・・。
「良い神官さんっていないか? オレの町に来てくれそうなさ」
「ブラインさんの町にですか?」
「うん。それがさ。王都で・・・」
説明をしたら第一にクレアが話し出した。
「ゆ、許せない。人の売買をですか」
「うん。地下でね」
「そんな・・・酷い。人の所業じゃないですよ」
「まあね。だから保護したんだ」
「さすがブラインさん! 尊敬します」
「いや、まあ別にね。そんなたいしたことじゃなくてね」
普通の事をしただけなんだけど、そんなキラキラな目で見なくても。
でもよかったね。学校に慣れたんだな。マリアンナとも仲が良さそうだし。
「お前。危険じゃねえか」
「ん? なにが?」
「少なくとも、ここの神父は勧められねえぞ」
「そうなの?」
「セシオ派が多いからな」
エリオンは内部事情に詳しい。
だから心配してくれているみたいだ。
「それに、行きたいって言う奴は珍しいと思うんだがな」
「そうですね。私もそう思います」
「ん?」
マリアンナもそう思うのか。
「神官は安全圏であれば、仕事をすると思います。ダイナガルト・ロア・獣王国・ミルス。これらの最前線の位置に教会はあるでしょうが、機能するほどの神父がいる場合は少ないと思います」
なるほど。そうか。
ここは、治外法権。第三国のような場所だからいるわけだ。
「なので、リミットタウンは両国の最前線ですから、普通の神父は不可能だと思います」
「そういう事か・・・ん? 普通の?」
「はい。戦う神父であれば、ありえると思います。エリオンさん、そちらの方面で良い人がいませんか?」
「・・・いる。でも、あいつは・・・やってくれるかは賭けだぜ」
「どなたでしょう」
「アレン・クセム」
誰だ?
その人も聞いたことがないな。
「まさか。その方はもしかして、あの煙酔ですか?」
「そう。お前も察しがついているな。俺がお薦めしない理由も分かるよな」
「で、ですね。噂だと・・・」
なに、ヤバい人なの?
「噂ってどんなの?」
聞いてみたらマリアンナが答えてくれた。
「お金が無いから無銭飲食をしたとか。女性のお尻を追いかけすぎて教会の集会に来なかったとか。お祈り中にお酒を飲んだとか。煙草を吸ったとか。噂が本当だとすると、素行が良いとは言えません」
「は。はあ?」
そういう意味で危ない奴なのか。
エリオンが補足してくれる。
「ただアレンは強い。僻地にいようが、最前線にいようが。あいつならどこでも生きてられる」
「・・・なるほどな。リミットタウンでもって言いたいんだろ」
「そうだ。そこでも適応できるのがあいつだ」
「どこにいるんだ?」
「呼べば来る。会いたいなら呼ぶか?」
「エリオンなら呼べる?」
「残念な事にな」
「知り合いなのか?」
「残念な事にな」
そんなに残念なの。
「じゃあ頼もうかな」
「残念だな」
「なんでだよ」
「連絡とらないといけないから」
「嫌なのか」
「別に。ただ・・・まあ聞いてくれ」
連絡手段は、ペンダントらしい。
エリオンの学生服の中に隠れていた。
「いるか。クズ」
「・・・・はぁ・・・頭いてえ・・・なんだこの耳障りな声は」
「昼だぞ。寝てたな」
「あ? それを知ってんなら、声かけてくんな」
「お前、どこいるんだ」
「クソ。その声は、クソったれ坊主だな・・・・ちょっと誰と話してるのぉ・・・あ? 待っててくれ。知り合いが話しかけてきたからさ」
おい。隣から女性の声が聞こえてんぞ。
今寝てたってことは・・・。
こいつ、破戒僧だろ。
「なんだ坊主。俺に何の用だ?」
「クズ。また女を連れ込んだのか」
「うるせえ。坊主には関係ないだろ」
「はぁ。別にいい。そんなことよりも、お前に用事がある。こっちに来てくれないか」
「なに? 坊主の所・・・お前今・・・ああ、学校か?」
「そうだ」
「ちっ。面倒だ。いかねえ」
「来い。聖女がいるぞ」
「お前の任務だったか。そうだ。彼女、美人になったか?」
「とびきりな。一目見に来い」
「お。それもいいか・・・・なによ。他の女の所に行く気!・・・違うよ。これは任務でな。ハニー! 許してくれよ」
聞こえてくる内容がクズだな。
どうしよう。招き入れてもいいのか?
「アレン。どうする? お前が駄目なら、他に用事を回す」
「誰か当てがあるのか」
「まあな」
「ほんとか? うそくせえ」
こいつ、読みが深いのか。
こっちの考えを読んでる?
エリオンが、マリアンナに手を振った。
「聖女もそばにいる」
「なに。ターゲットのそばにいるだと」
「すでに直接護衛の段階に入ってるんだ」
「ほんとか? あのチャリオットが許可を出した?」
「出した。証明しよう。ほら」
エリオンは、マリアンナに任せた。
「あ。あなたがアレンさんですか」
「ん!? 女性の声!? せ、聖女様ですか?」
「はい。候補ですけど・・・」
「マリアンナ様?」
「はい。マリアンナです」
「なんと。申し訳ない。お見苦しい姿を・・・」
って見えないよ。声だけだからね。
そんなに慌てるって、あんた今どんな姿してんだよ。
ガサガサ音が聞こえるんだけど、着替えてんの?
「あのぉ・・・大丈夫ですか? アレンさん?」
暫し返答がないので、マリアンナが困った。
「は、はい。マリアンナ様!」
声が返って来た。
「お会いするのを楽しみにしています」
「え?!」
「あれ。会いに来てくれるわけではない? エリオンさんがそうおっしゃっていたので、つい」
上手い!
正直言って、交渉が上手くないか。
マリアンナ。その流れは、したたかだ。
「当然会いに行きます。すぐに行きますので、お待ちください!・・・・ちょっと、他の女の所に行くんじゃない・・・・当たり前だ。聖女様が来いと言ったらいかないとな。どけ。今から出る!」
向こうで、女性と喧嘩してる。
カッコつかねえ人だな。
でも聖女は信仰してるってわけだな。
「あれ? 声が・・・」
マリアンナが戸惑うと、エリオンが。
「もういい。あいつは外に出たな」
通信の終わりを告げた。
「これで良かったのでしょうか」
「たぶんな。どうだ。ブライン」
「ああ。助かったよ。会ってくれるみたいだし」
不安はあるけどな。
「交渉は任せるぞ。ブライン」
「よし、やってみよう」
謎の神父戦に向けて、気合いを入れたオレであった。




