第1話 今後に期待
子供たちを連れていく前に、一時王都で休ませることとした。
安い宿の大部屋を借りて、15人の子供を見る事になった。
凄く小さな子は少ないので、皆大人しい。大体10歳前後の子だ。
その子たちが静かに寝ている間、オレとシーアは話し合いをしていた。
「シーア。この子たちは知り合い?」
「いいえ。たまに話すだけで」
「そうか。鉄格子でもバラバラだったんだな」
「はい。別な檻に入れられてたので、そんなには会話なんて」
「そうか。まあ。ここからだな」
家族として動くには、核となる子が必要だ。
「シーア。悪いけど、君がリーダーみたいになってくれるかい。取りまとめしてもらえる助かる。同じ立場だった子が良いと思うんだ」
「わかりました」
オレが上から命令するよりも、彼女がワンクッション入れてくれたら助かるはずだ。
この子たちにとっても。
「若様」
「はい! どうでした」
マリンさんが部屋に戻って来た。
「養子の件は、承諾されました。今回宰相殿が手伝ってくれたようですよ」
「だよね。誰かが手伝ってくれないとこの早さ・・・まあ、そいつは助かったね」
あの人って、こういう事に協力的な人だっけ?
まあいいか。
「それで若様」
「はい?」
「どのように連れていきましょう?」
「だよな。それが問題だよな」
大問題だった。15人は大所帯過ぎる。
王都からリミットタウンまで安全な航路は鉄道だけ。
だけど。
「若様、鉄道は莫大な資金が掛かります」
「そうだよね」
マリンさんも同じ意見だった。
「私たちは歩きますよ。お兄様」
「駄目!」
「え!?」
「危ない。それはマリンさんも危なくなる。それだけは駄目だ」
「・・・マリンさんも?」
「ああ。オレは学校に戻らないといけないし、戦うのがマリンさんだけになるから、君たちも危険だけど、マリンさんが危ない」
マリンさんには生きてもらわないと駄目だ。
ブラインの大事な人なんだからな。
「そうですか・・・そうなると、馬車などの移動も危険だと」
「そうなる」
馬車もマリンさんの負担がデカい。
結局馬車でも護衛対象が多すぎるからな。
「若様。私は・・・」
「無理は駄目。絶対に駄目。許可しません」
「ですが」
「禁止です。あなたの命が大事だと、オレは言ってます!」
「わ。若様ぁ・・・」
いちいち泣きそうになるのはどういう事。
オレって、そんなに君を泣かせるような事言ってないんだけど。
『コンコン』
「「「ん!?」」」
ノックが聞こえた。
「どうぞ?」
マリンさんがドアを開けるとそこにいたのはジュニアだった。
『・・・・・』
現れても無口。
正直、何しに来たんだと思う。
カンペみたいに、紙を出し始めた。
『兄さん! これ見て』
見てるわ! あんた喋んないからね。
『自分。許可が出ました』
何の?
『リミットタウンに修行に行ってもいいらしいです』
は? なんだそれ?
『自分、修行をつけてもらいたいです。マリン殿にです!』
・・・。あ、そんなこと言ってたな。
オレがゆっくり彼女に目を向けると、マリンさんもゆっくりオレから目を離した。
言ったが手前、気まずそう。
「君がリミットタウンに来る? そんなの親父さんが許さないでしょ。君は近衛軍の長の息子だぞ。一人では危ない。あんな何もない所に呼ぶのも、こっちとしたら無理があるんだよ!」
何かあったら責任問題になる。
オレは、こんな大物は預かりたくない!
『いいえ。お前が守って来いと言われました!』
「は?」
『活躍して来いと言われたので大丈夫です』
いや、たしかに・・・。
兵士として計算すると、めちゃくちゃ戦力になるわ。
『お願いします。アニキ!』
アニキってなんだ!
なんか兄弟が増えたぞ。
「いや。あのね。それ本当なの。許されたの?」
『はい!』
こいつが言ってる・・・じゃないや。
こいつが書いてるだけってないか!?
「本当?」
『はい』
「じゃあ、会わせてもらえる? 親御さんに挨拶させてくれ」
これで確認しよう。勝手に連れ出したってなったら、ヤバいからな。
『わかりました。もう一度父に!』
と書いて彼はダッシュで移動していった。
◇
一時間足らずで、再び訪問してきた。
『いけますアニキ!』
「君のお父さんの所?」
『はい』
「じゃあ、案内お願いするよ」
『はい!』
「マリンさん。ここで待っ・・」
「駄目です。私も行った方が危険ではないでしょう。お守りします」
「・・・いや、別に。でも、子供たちが・・・」
二人で移動するとなると、子供たちが残されるわけで。
「私に任せてください。お兄様。起きたら対話もして、落ち着かせますので安心を」
「そうか・・・じゃあ、出来るだけ早く戻ってくるよ」
「はい」
シーアに子供たちを任せた。
◇
もう一度王城に。
王が自室で休んでいるらしく、近衛の仕事も部下が部屋の前に立つ事で、長はお休み。
ライトニングは、自分の仕事部屋で休憩していた。
お茶を飲んでいる彼の元にオレは案内された。
『・・・・』
ジュニアが顔を見せて、数秒後。
『・・・・』
ライトニングが黙って頷いた。
「???」
オレにはさっぱりわからないけど、二人の間では意思疎通が出来ているらしい。
『アニキ! どうぞって言ってます』
「今ので?!」
さっぱりわからなかった。
『こちらに』
「ありがとう」
正面に座ると、ライトニングが。
『・・・・・』
黙ってコップを渡して来た。
何も入っていないんで、不思議に思ってると。
急須を差し出して来た。
『・・・・・』
お茶を注いでくれる。
正直に言おう。何をするかくらいは言ってくれ!
『・・・・・』
注ぎ終わると、右手を前に出して、どうぞとジェスチャーした。
「あ、ありがとうございます」
一口飲む。
めちゃくちゃうめえ。
ビックリするくらいの美味しさで、目玉が飛び出るかと思った。
「う。うま・・じゃないや。美味しいです」
『・・・・』
ニッコリ笑って頷いた。
感情表現はしてくれるらしい。
「あのすみません。お話があってですね。あの息子さんを、リミットタウンに送り出すって本当の話ですか?」
『・・・・』
うん。
に見える頷き方だ。
「いや、それは危ないかと思いますよ。オレの町は、何もなくてですね。襲撃に遭ったらと思うと。息子さん、最悪亡くなるかもしれませんよ」
『・・・・』
首を横に振った。
「それでも大丈夫だと?」
『・・・・』
頷いた。
「いやいやいや。大事な息子さんですよね」
『・・・・』
頷いた!
「ですよね。だったら、オレの町での修行は危険度が高すぎますって。もう少し安全な場所でもいいのでは?」
『・・・・』
あれ? 動き出したぞ。
ジュニアを呼び出して、カンペの紙をもらった。
ペンで書き始めた。
この親子、話せよ!!!
訪問者が目の前にいるんだよ。
家族間ならいいけど、他人には分かりやすいコミュニケーションを取ってくれよ。
『可愛い子には旅をさせよ』
ん?
『獅子は我が子を千尋の谷に落とす』
はい?
『若い内に苦労をした方がいい』
なんだ?
ことわざ??
最後のは違うよね。
『だから、外で修行をさせる』
話が繋がってるんだ。
『ブライン殿・・・英雄が育った環境こそ、我が息子にとっても最高の環境かと』
だからって、あんな町に?
『よろしくお願いします。遠慮せずに厳しく指導をお願いします。マリン殿がしてくれると聞きましたから、マリン殿にも』
ライトニングは、オレに頭を下げてから、マリンさんにも頭を下げた。
「そう来ましたか。ふぅ。ならば、こっちもですね。覚悟を決めますよ。ジュニア!」
『はい!』
「いいんだな」
『はい!』
「わかりました。ライトニングさんがそうおっしゃるなら、ジュニアを最強に仕上げますよ。マリンさん。そのつもりでいきましょう」
「はい! おまかせを」
オレが立ち上がって、彼に宣言する。
「こうなったら、ロア王国一の戦士にしちゃいますからね。いいですか。ライトニングさん」
オレが手を出すと。
『無論。異議なし』
と彼が言ってから握手をしてくれた。
話せるじゃん!!!
と思ったのは、言わないでおこう。
良い雰囲気の所に、水を差すからさ。でも話して欲しいよ。




