エピローグ 王国側
ブラインが出て行った後の玉座の間。
「三子のマリンが、あの街から離れない理由が分かったな」
王が言うと。
「そうですな。付き従う価値がありそうですからね。あの当主殿ならば・・・」
ゴアが言った。
「あたしは詳しい流れを聞いてないんだが。三子のマリンは良いとして、他はどこ行ったのでしょうかね?」
トリスが聞くと。
「噂によると、二人は消えたとの話でしたね」
ラバンが答えた。
「「「消えた?」」」
ライトニング以外が言った。
「はい。三子のベルクとアスカは、ダグノス殿の死亡時に消えたらしいです」
「あのリミットタウンが壊滅した戦いでか」
王が聞いた。
「はい。そうです」
「真相は分かるのか?」
「いいえ」
「消えるとは・・・死んだとは別なんだな」
「そのようです」
王の質問に答えたラバンは最後に頭を軽く下げた。
「死んだって判断するのは難しいんじゃないですか。王」
「ん? トリス、何が言いたい?」
「あれは三子ですよ。ダグノスの三羽烏は、そんじょそこらの人間では絶対に殺せない。あたしや騎士団長殿でも苦戦は必須です。殺すとなれば、至難の業となる」
「そうなのか。ゴア」
王がゴアに聞くと。
「そうですね。それぞれ得意な分野が違いますから、苦戦は必須ですね。トリス殿が言うように殺すとなればなおさらです」
「そうか。そうだとすると互角・・・お前たちと互角に戦えるだけでも化け物ではないか」
王は二人の実力を想像して答えた。
次にトリスが言い切る。
「その化け物たちに対して、顎一つで動かせた。あのクロノが英雄だから成せる技だったでしょう」
「たしかに。奴が晩年に育てた人物として傑物だったな」
「ええ。リミットタウンの為だと言って、あっという間に冒険者ランクAに到達して、三人で荒稼ぎしましたからね。当時、10代前半一人と後半二人の若さでです」
かつて、マリンを含めた三子たちは、ロア王国内で冒険者パーティーを組んで大暴れした。
わずか一年未満で、ランクを最下位のEからAまで上げて、稼ぎに稼いだ結果。
リミットタウンを支える大活躍をしたのだ。
彼らが活躍した理由は、当時揺れに揺れてしまったリミットタウンを支える事にある。
ブラインを産んだ直後にダグノスの妻が死亡。そこからの不運は重なっていき、ブラインの兄グラスも死去。心痛によるダグノスの疲労が重なっていた所に追い打ちをかける出来事が、英雄の死だ。
これがトドメを刺すような形で、リミットタウンを襲っていたのだが。
彼ら三子の活躍により、何とか持ちこたえていたのである。
「猛烈な勢いで活躍してすぐに引退をしたからな。ギルドも驚いただろうな。期待の若手を失ってな」
「ええ。あたしらも驚きましたからね。あのまま行けば、Sランクも間違いないでしょうから」
「興味が無かったわけだ。あの男のメイドになることよりも・・・Sランクの名誉などどうでもいいとな」
ブライン・レッドピックのそばにいる事以外に興味がない。
そういう風にあの場で言い切った彼女に、皆が納得した。
「王。これでどのような人柄かは分かりましたな」
「うむ。宰相が見てから判断しろというのも、正しかったようだ」
「はい」
「チャンスはあるか」
「ええ。あるのではないかと」
「そうか」
王はトリスを見た。
「トリス。あるか?」
「姫ですか?」
トリスは、話の繋がりを理解していた。
「うむ」
「王。あの子が女と見られるでしょうか? 笑顔は良くても器量が・・・・・愛嬌はあっても、女としての魅力はどうも・・・」
「・・・・・」
それは難しい。王だって悩むところだ。
「それに姫にその気があっても、今の彼にその気があるのか。一度女性側から破棄されてますし、難しいですよね」
「娘にその気があるのか」
「ええ。あると思いますね。可能性はゼロじゃない。なあ騎士団長殿」
「え? 僕」
「あの場にいただろ。王子と姫の会話の場だ」
「ああ。いたね」
「可能性は無くはないだろ」
「・・・まあ、乗り気ではないだろうけど。まんざらでもなさそうだったな」
前のめりではないけど。かといって、全部お断りの雰囲気は無かった。
騎士団長も魔法師団長もそのような判断を取っていた。
「そうか。チャンスはアリか」
「しかしそうなると慎重に事を運ばないと駄目でしょうな。姫様はそこら辺が疎いですぞ」
宰相が言うと。
「そうだな。その通りだ」
父である王も頷くばかり。
「こっちが無理に動けば、あれは失敗しそうだ。あたしはその方がおもろいけど」
弟子が困惑する姿が見られそうで、なんだか面白そう。
トリスだけがベクトルの違う会話をしていた。
「トリス。そこは頼む。面白がらないでくれ。国家の大きな問題になるかもしれん」
「そうですか。わかりました。まあ、出来るだけ協力しますよ」
「うむ。頼むぞ」
国家の為。
ブライン・レッドピックをロア王国の柱の一人とする。
この時に決まった事であった。
「では彼の夏休み。そこが我々の正念場となるだろう。ルーフォンに負けてはならん。もてなしの準備をしよう!」
ブラインおもてなし計画が、彼が知らぬ間に始まっていた。




