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リミットタウン 限界の町と瀬戸際の君  作者: 咲良喜玖
怒涛の十日間

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8/28

第8話 初めての友人

 学校の初日。

 ゲームで言ったら、1ターン目の最初の二歩目。

 ここなんて、普通にゲームをしていたら、まったく気にしない部分だ。

 まず最初に行われるチュートリアルの一環として、オリエンテーションが組み込まれている。

 ここらが説明の部分で、それらが終われば、ブラインの予定を組んで実行ボタンをポチ!

 そしたら、ここって飛ばされるイメージがあったから、今がまさに、この世界で生きているんだという実感が湧くところだ。

 時間が飛ぶことはない。

 現実の世界と同じ感覚で、オレは生きている。

 


 これからへの迷いと期待の狭間の中でオレは、授業の準備や食事などを済ませてから、学校に登校する。


 ◇


 「マジか・・・なんで?」


 教室に入る手前で、ポツリとつぶやいた。

 オレの新たな人生には困難がくっついてくるらしい。

 彼女が先回りでオレの席の前にいる。どうやらしばらく待っていたようで、こちらを発見するとぱぁっと明るい顔になった。


 「おはよう!」


 ここは我慢して席に着くしかない。

 カバンを自分の机の上に置いて、出来る限り彼女の方を見ないで、カバンから教科書などを出した。


 「おはようございます」


 人として、返事だけはする。いかに死神が相手でも、それだけは忘れちゃいけない。人間性を捨ててまで生き延びようとは思わないからね。どうせ死ぬなら人として死にたい。

 まあさ。死神にも挨拶するなんて、オレはお人好しかもしれないよね。


 「ブライン君!」

 「なんでしょう」


 彼女の声の大きさと、彼女の顔が目の前に来たので、ついついカバンの中身を全部出しちゃった。目の置き所に困る。

 出来る限り目を合わないように黒板の方を見た。


 「ボクとパーティーを・・・」

 

 ほら来た。ヤバい。それ以上会話したら、断りづらくなるぞ。

 止まりなさい姫様! 血気盛ん過ぎますぞ。血眼になってまでオレを誘おうとしてますぞ。

 諦めなさい。前からお断りしてますからね。

 

 「ああああ」


 オレの前の席の人が叫んだ。


 「「え!?」」


 オレも驚いたが、オレの方を見ていた彼女も驚く。

 二人で前の席の人を見た。


 「初日から忘れちゃった・・・どうしよう?」


 前の男の子が、キョロキョロしだした。

 オレと目が合う。


 「あ。君・・・ブライン君!」

 「どうも」

 

 ゲーム時代でも知らない子だ。オレ、主要人物以外ってあんまり覚えていないんだよね。Tier4くらいまでなら覚えてるんだけど、完全モブだな。この子・・・。

 えっと、会話が一瞬出来たから、調べるコマンドが発動できたのか?

 とりあえず見る事が出来るな。  

 調べると人物図鑑に記録された。

 相変わらずゲーム時代からここだけは超便利だ。

 


 ガラシア・ランパート。

 職業は戦士。

 でも取っているスキルが戦士系じゃない。

 鍛冶のスキルが並んでる。

 火加減・鍛錬・打ち直し。

 それぞれのランクがⅡまでいってる。鍛冶の初心者じゃないな。



 「ブライン君。ペンって余ってる?」

 「ペン?」


 急に何の話?


 「おら、ペンを忘れちゃったみたいなんだ。昨日の夜から机の上に置いてさ。今朝の準備までしてたのに、置いたままにしちゃったみたいなんだよ。貸してちょ」

 

 ああ、なるほどね。

 筆記用具を持って来なかったのか。

 

 「いいよ。自分のを貸すよ。ちょっと待ってて」

 「ありがとう」


 オレの机の中にしまった用具箱を出す。

 ちなみに余裕で貸せる。ペンは四本も持って来ているからね!

 

 「はい。どうぞ」

 「ありがとう。助かったよ」


 赤い髪がボサボサになっていて、寝癖のようにはっちゃけている髪型の青年。

 体も小さめで、戦士になるには辛い所だろう。

 それでもこの学校で頑張ろうとするなんて、偉いな。


 「あれ? 姫様? なんでこんなところに」


 さっきから姫様が近くにいるのに、まったく気付いていなかったらしい。

 のんびりしてる。この子は癒しだ。

 友達になろう!

 違う。ぜひ友達になってください。

 死神たちから離れるためにも、オレはTier1とは違う友達を作っておかないと駄目なんだ。


 「ボクは、ブライン君を・・・」


 誘おうとしているんだけど、っていう発言が出てくる前に。


 『キーンコーンカーンコーン』


 チャイムが鳴った。

 予鈴の合図だから、ここから席に着かねばならない。

 なので、口を尖らせた姫様が。


 「ブライン君。また!」


 ちょっと不満そうな顔で、力強く伝言を言い渡してきた。

 またというのが厄介だ。

 次があるらしい。


 「はぁ。またか」

 「ブライン君。そんなに姫様が嫌なの?」

 「ん? 自分が?」

 「うん。昨日もそんな感じだったよね。素っ気ないから、嫌いなのかなって」

 「いや、嫌いじゃないよ」

 「じゃあ、なんでそんなに冷たいの。おらと話す時は普通なのに」

 「まあ事情が事情でね・・・」


 というか。

 この子、鋭くない?

 のんびりしてる感じがあるけど、ちゃんと人を見ているな。


 「事情ね・・・その謎の事情で近寄りたくないのかな?」

 「まあ、大きく分けるとそうなるね」


 近寄りたくないというよりかは、死にたくないに近い。

 彼女は可愛い子だし、出来たらそばにいたら嬉しいけど、死にたくないが勝ります。


 「じゃあ、おらが手伝ってあげようか」

 「手伝うって?」

 「ほら、友人がいれば、諦めるでしょ。姫様ずっと君を勧誘しようとしてるもんね。おらと組んでれば、誘わないんじゃない」

 「いいの。でもガラシア君が大変になるんじゃないか」

 「そんな事はいいよ。でもね。おらね・・弱いんだよ。ごめんね」

 「大丈夫だ。自分も雑魚雑魚だ」


 まだステータスが宜しくない。

 雑魚に変わりがないんだ。この子とそんなに変わりない。


 「それ、昨日も言ってたね」

 「そう。雑魚雑魚なのよ」


 いずれは強くなるつもりでもね。今は雑魚だと受け入れておくべきさ。


 「ハハハ。雑魚雑魚コンビで行こう」


 明るい彼も確かに雑魚だ。

 基礎ステータスが、オレとほぼ変わりがない。


 ガラシア・ランパート。男性15歳。職業戦士。


 HP    77

 MP    11

 攻撃力   17

 防御力   24

 魔攻    21

 魔防    16

 速度    24

 精神力   63

 知力    83

 運     71

 スキル 0/10 

 成長P   51


 戦闘スキルなし。

 パッシブスキルなし。

 内政スキルあり。

 火加減Ⅱ

 鍛錬Ⅱ

 打ち直しⅡ

 目利きⅣ


 

 友達みたいな知り合いになると、相手の能力まで分かってしまうシステムは、今後も役立つだろう。

 今までの出来事を生身で体感してきたけど、どうもこれだけはゲームっぽさを感じるな。

 唯一のゲームっぽい部分だと思う。


 それにしてもガラシア君か。

 ゲーム時代でもあまり記憶がないな。

 前の席にいたのだって・・・ああ、でもたしかに開始時点で赤い髪の子がいた気がしたけど、でもその後で見たっけ? 赤い子なんていたかな。

 ゲーム本編で絡んだのを見た事がないや。

 まあ、もしかしたら、ゲーム時代もこういう部分を大切にするべきだったのかも。

 それに、ゲームとは違う流れを作り出さないといけなからちょうどいいと思う。

 彼との縁は、大事にしていこう。


 「これからよろしく」

 「うん。おらの手帳出すから、交換しよう」

 「交換?」

 「情報交換。生徒手帳を並べると、共有できるんだよ。同じパーティーになるのって、これで申請するらしいんだ」

 「へえ」


 そんな事が出来るのか。

 あれ? オレって、そこの部分を読み飛ばしてたのか?

 実は、ゲーム時代にはない展開にワクワクしていたりする。

 案外面白いものだな。新たな展開ってさ。


 「おら。ここじゃ友達いないから、初めての友達だ。ありがとう」

 「いやいや。こちらこそ助かったよ。自分も知り合いが・・・」


 いるにはいるけど、あれじゃどうしようもないや。


 ここで普通の子と知り合えるのは助かる。

 モブって大切だよね。

 オレも現実世界じゃモブっぽいから、こういう人がいると安心するわ。


 「おら、鍛冶師なんだ。武器とか防具で困ったら相談に乗るよ。親父にも相談できるよ」

 「へえ、親子で鍛冶師なんだ」

 「うん。でも実家は商売で負けた鍛冶師だからさ。腕は良くても、お店はてんでダメダメ。貧乏なんだよ」

 「そうなんだ」


 鍛冶師で有名なのは・・・。

 王都にあるリファング商工会が一番かな。

 蹄王リーヴァがいる所で、あそこには彼をはじめとして有数の鍛冶師がいて、有名な武器や防具のほとんどがあそこで生成されていて、個人でも町でも、あそこに買い付けに行くのが、このゲームの定番だった。

 そういえば、町や村での鍛冶ってあんまり儲からないし、良質の武具って作りにくいんだよな。

 たしか、設備投資と職人をしっかり用意すれば、強武具を作れた気がしたけど、そこまでの経費がな。かなり高いんだよね。

 鍛冶の建物からして、費用が高いから、外から買い付けした方が安上がりだったりしてさ。

 あんまりメリットがない。

 だから、リミットタウンで生産するって、他との違いを生み出しにくいんだよな。

 

 でも親父さんの腕が良いってことはさ・・・。

 うちのリミットタウンに来て、作ってくれたりしないかな。

 強武器とかを自前で作るのもありかもしれないよな。


 「じゃあ、ほとんど自分と同じだね。自分の町もボロボロだもん」

 「リミットタウンの事だよね」

 「あれ、知ってたんだ」

 「有名だよ。襲撃事件があったんでしょ」

 「まあ、そうなんだよね。なんで知ってるの?」

 「それはね。みんな同じだと思う。ロア王国の人なら新聞で読んでるんじゃないかな。一面に書いてあったよ」

 「そうなんだ」


 それで故郷の壊滅が、全国的に周知されているってわけか。

 なるほど。これが序盤の評判値の上がりにくさなんだな。

 ゲーム時代の設定って、ここにあったのかもしれないな。

 裏設定かな?

 あの会社、設定資料集とか出してないから、よく分からないんだよな。

 きっと設定資料集を出しちゃうと、真エンドが簡単になるから出してないんだよな。


 「だから腹が立つ人が多かったんじゃないかな。あの時さ」

 「あの時? ああ、ロッティの事か」

 「うん。君が大変なのは皆知っているからね」

 「そっか。ありがたいね」


 そうだ。それが理由か。

 ロッティにあれだけ言われたのに、他の学生たちがあれこれブラインに言ってこなかったのって、ゲームの進行にとって、必要ない事だから余計な描写を入れないのかと思っていたけどさ。

 どうやら違うみたいだ。

 まさか、ここにも理由があったとは。

 今、体感している現実と、あのゲームがリンクしているのなら、リミットタウンってさ。

 相当な数の裏設定があるんじゃないか。

 色んな所を作り込んでから、ゲームにしてるのか?

 とんでもないスタッフだな。やっぱり変態集団だ!


 「ブライン君。お昼になったら、一緒にどこかで食べようよ。たぶんさ。お昼も姫様が君のところに来るよね」

 「そうだね。逃げよっか」

 「うん。そうしよう」


 モブにもモブの意地がある。

 オレも実生活じゃ、そっち側の人間だから。

 気が合いそうだ。


 ◇


 学校の授業は、ゲーム時代で学べることと人間としての基礎の事だった。

 この世界の歴史。

 現実世界の中学生くらいの国語。

 小学生程度の数学。

 これらが現実感があるものだけど、難しくはない。

 オレでもやれる範囲だ。


 次にスキル、魔法などの戦闘系の物から生活系の物まで、色々なものを勉強していくらしいが、オレはやり込んでいるから大丈夫。座学はほぼ勉強しなくてもいけそうだ。


 次に選択授業について。

 やってもいいし、やらなくてもいい科目。

 主に内政職を勉強するらしく。

 鍛冶師や錬金術師、薬師などになりたい人向けの授業が多めらしい。

 オレには基本関係がないが、勉強しておいて損はなさそうだ。ゲーム時代とは違って、ターン制よりも時間もあるし、面白そうでもある。


 最後に実技。戦闘訓練の事だ。

 模擬戦闘を繰り返して、熟練度をあげていく。

 このゲームの成長は、経験値で勝手にレベルアップしていくんじゃなくて、熟練度で得ていって、それを自分の意思で割り振っていくスタイルだ。

 強敵や特定の出来事でも、熟練度は得やすくなっているので、何事も経験が大事という事だ。

 戦い以外でも経験値を得られるのは、独特な成長システムと言えるだろう。

 噂だと、交渉だけで、ブラインを成長させた人がいたらしいしね。


 「まあ。こうなると・・・オレは」


 授業中、先生の説明を聞いていると、ガラシア君が振り向いて来た。


 「お昼ご飯。どこで食べる? 教室にはいない方がいいよね」

 「・・だね。屋上にでも行こうか」

 「それありだね。屋上にしよう」


 人懐っこい子と友人に慣れた有意義な学校初日の午前であった。

 

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