第14話 雷光のジュニア
「ここですね」
到着と同時に声が聞こえてきた。
「なんだこのガキは。いつまでここに居るつもりだ」
中の大声は、少年に向けられた可能性が高い。
「急いだほうが良さそうです。はい!」
入口のドアを蹴破ったマリンさん。ワイルド入場だ。
「・・・・」
「このガキ。な。何だお前ら」
オレたちが建物に入った時には、男性が少年の胸ぐらを掴んでいる所だった。
少年を殴ろうと動いているから、マリンさんとオレが戦闘態勢に入った。
足に力を入れる。
「まあいい。この生意気なガキから」
男の右ストレートが少年の顔に・・・。
と思われた瞬間、少年が消えた。
「「は!?」」
オレとマリンさんが思わず驚く。消えた少年の移動位置がまさかの天井だった。
逆さの少年が、上から落ちていく。
「雷光剣」
「ぐあっ!?」
彼が地面に着地すると、地面がバチバチと言った。
男は無残にも斬られながら焼かれた。
この所業。オレは知っている。
「まさか・・・子供を助けに行った少年ってのは、ジュニアだったの?!」
ライトニング・ジュニア・ノヴァール。
ブラインの一個下の世代。
雷光剣・別名ライトニングソードの使い手。
雷魔法を使用した体術が得意な子だ。
動き全てが雷光の動き。斬るのも、殴るのも、蹴るのもだ。
スキルで動くわけじゃないから、MPさえ切れなければ、無限に雷の速さと強さで動き続ける。
Tier2キャラ最強と謳われる子だ。
「・・・・」
そして無口。父同様無口!
オレたちの方を見たけど、何も話さない。
気まずい!
「あなたが少年・・・ということは、他が敵ですね。やります」
マリンさんは彼を察したので、ジュニア以外を攻撃し始めた。
オレもそれに合わせて周りの大人たちを殴る。
おそらくステータス的には弱いけど、オレの中途半端だけど連撃会心ビルドが嵌ってるみたい。
敵の三体くらいを倒せた。
それでもそっちは凄いことになっている。
「ふぅ。雑魚ですね」
倒した敵で山が築かれている。
マリンさんは、ジュニアが倒した方を見た。
「あなたの方は・・・うん。素晴らしい戦士です」
バッサリと敵が無残に倒れている。
痺れながら斬られる経験などないだろう。
敵は呻き声を微かにあげていた。
「・・・・・」
なんか紙を持ってる。
文字も小さめだな。
『お姉さん凄いね』
やってる事はえげつないけど、正直可愛いと思った。
もう一つ来た。
『下にいるみたい』
「少年がですか?」
この時点で感知の力を持っているのか。
ジュニアは、生命感知と呼ばれる技を持っていて。
雷を微細に操って、返ってくる反応を見て、生命を見極めるんだ。
探知も出来る完璧な人間。一人で解決できる能力と言える。
そうなると、マリンさんも似ているかも。
彼女も一人で感知可能だ。
『わからない。でもいっぱいいる』
「いっぱい? それよりあなたは誰ですか?」
たくさん? どういうことだ。
少年が攫われたって、一人の話だよな。
『ライトニング・ジュニア・ノヴァール』
「ライトニング・ジュニアさんですね」
それで名前言うんだ。
口の方が良い様な気がするけど。
『お兄さん。お姉さん。もいく?』
「もちろん」「私もいきますよ」
紙にいつ書いてるんだろう。会話にラグが生まれない。
『じゃあ、ついてきて。感知してる』
「「了解」」
◇
彼についていったが、道がない。
地下に人の気配を感じているらしいが、道を感知出来なかった。
『どうしよう。わかんない』
と来たので。
「わかりました。私に任せてください」
マリンさんがトライアングルを出した。
「音標」
ポワワワワワっと音が反響する。
オレの耳にはその音しか聞こえないんだが。
彼女には別に聞こえるらしい。
「こちらですね。音が吸い込まれています」
「吸い込まれている?」
「ええ。返ってこないんです」
「なるほど。そういうことか」
下に音を打って、想定した音が返ってこないのなら、そこが地下へと進む道って事か。
「ここです。これを剥がします」
一階の隅。トイレの脇にある。クローゼットの様な小部屋の下が地下への階段のある場所だった。
『凄いお姉さん。こんな場所を見つけるなんて。自分には無理だ』
「まあ。あなたは人を対象とした索敵タイプで、私のような捜索タイプではないのですよ。私はこういう事の為に、こちらのスキルを取りましたから。ええ、彼らとは違う探索方法を得ないといけませんでした」
彼ら?
三子って言ってたもんな。
残り二子がいるって事だよな。
その人たちかな。もしかして、いつも言ってるベルクとアスカかな?
「いきますよ。中には相当数いるんですよね」
『いる。数が多い』
「わかりました。若様。これ以上はき・・」
危険だからやめろと言いそうだから、その先の言葉に蓋をする。
「いきますよ。オレだって心配ですからね」
「・・若様。わかりました。一緒に行きましょう」
「当然ですね」
下に降りた。
◇
「こ、これは・・・」
地下は鉄格子だらけ。
人を入れた檻だらけだった。
「痛めつけられてる子がいる」
痣だらけの子が倒れていた。
「そんな・・・酷いな。これは」
信じられない場所だ。このゲームには、こんな闇があったのか。それとも現実になったから、こんな事に?
とにかく酷い場所だ。
「奴隷市場に売る気ですね。こちらの子は・・・」
マリンさんが見つけた子供には、腕に押し印があった。
消えない痣みたいだ。
「奴隷市場? マリンさん、なんですそれ」
「子供たちを売るんです。闇ギルドなどの裏の人間にですね」
「人身売買?」
「そうです。そういうことをする輩は、世界にはいるのですよ。人種は問いませんしね。こちらの子も対象です」
マリンさんが指差した子は、獣人だった。
「獣大陸からも!?」
「そうです。国も場所も関係がありません」
「馬鹿な・・・」
マジで許せねえ。
こんな可愛らしい子まで奴隷にする?
獣人族の猫の女の子だぞ。この子は。
猫耳がついているし。
「誰だ、俺様の城に来たのは。この地下には許可なく入れんのだぞ。部外者は!」
白髪の若い男性が奥にいた。
寝癖とよだれみたいな痕が口元にあるからさっきまで寝ていたみたいだ。
「お前がここの責任者か」
「ん? ガキか。侵入者がガキとは、上は何をやっていたんだ」
「おい。お前がここの責任者か」
「なんだこいつ。勝手に盛り上が・・・」
ブチ切れてるオレは、既に龍麒を解放。
最速の動きで、黄龍・龍鯨を繰り出していた。
敵の頭を叩くつもりだったが。
「ふん! 聞き分けのねえガキだ」
「なに!?」
手首を掴まれて、攻撃を止められた。
「クソガキが侵入してんのは、なんでだって聞いてんだよな。こっちはよ」
「ぐはっ!?」
腹への一撃が今までもらった中でも、強い一撃だった。
九の字に折れ曲がって、ぶっ飛んだ。
「若様」
マリンさんがオレを心配して駆け寄って来た。
そして、オレたち二人の前にはジュニアが立つ。
「なんだ。ガキの次もガキか。クソ。邪魔だな。どうせだったら、そっちの女に来てもらいたかったぜ」
「・・・・」
「話せよ。クソガキ」
「・・・・」
ジュニアは話すことがない。
オレが見てきたジュニアは、十本の指で足りる数での会話数だった。
だから話す気がない。そういう人なんだと思っていたが。
「終わらせる・・・こんな場所はロア王国にいらない」
雷光のジュニアが話した。
初めて会ったその日に、声が聞けたんだ。




