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リミットタウン 限界の町と瀬戸際の君  作者: 咲良喜玖
英雄の孫

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第10話 移動開始

 42日目。

 廊下にテスト結果が張り出された。

 皆がぞろぞろと集まっているが興味が湧かないので、オレは教室で静かにしているつもりだった。

 そしたら。


 「外にあるよ。いこうよ」


 楽しそうなレインは、皆の服を引っ張っていく。

 廊下に行きたいらしい。


 「あーしは別にいい」


 眠りそうな彼女は机に顔をつけている。


 「ええ。ガラシア君は」

 「おらは・・・名前ないよ」


 行っても自分の名前がない。

 成績が廊下に出されるのは、学年上位陣だけだ。


 「上位、気になるよね?」

 「うんん??? どうだろ。わかんない」


 ガラシア君は正直者だった。


 「ブライン君。行こうよ! 誰も行ってくれないんだ。行こうよ。行こうよ」

 

 彼女が肩を軽く押し続けるから、オレの体が左右に揺れる。


 「なんでオレ?」

 「行ってくれそうだから」

 「んんん。まあ、そっか。行こうかじゃあ」


 たしかにガラシア君もナオも興味無さそうだしね。

 オレが行ってあげるしかないか。


 「ありがとう! じゃあ、こっちだよ。右のほう!」

 「はいはい」


 彼女が先導してくれて、オレは廊下に張り出された一年生の成績を見た。

 

 

 ―――――


 中間テスト


 1位 300点 1-A ブライン・レッドピック

 1位 300点 1-B ミルティア・テルロー

 3位 281点 1ーC マリアンナ・クバン・アクア

 4位 277点 1-C クレア・ミカヅキ

 5位 275点 1-A ナオ・ケシガン


 ―――――


 「おいおいおい。ナオ!?」


 オレは自分の順位よりも、ナオの順位に驚いた。


 「ちぇ。ボク、頑張ったけどな。10位だぁ」


 と聞こえたので確認すると、261点で10位だった。

 この点数は、ゲーム時代と照らし合わせると高得点だ。

 レインは勉強を頑張ったみたいだ。

 いつもよりも順位が高い。


 「ブライン君。満点なんだ凄いね」

 「まあ。ありがとう・・・というか、ミルティアも・・・」

 「あ。そうだね。あの子、いつもいないけど、テスト受けてたんだ」

 「たしかにな」


 学校には来ているらしいし、寮にもいるらしいんだが、まったく見かけないんだよな。

 普段一体どこにいるんだ?


 「しかしこれで、会長の許可は下りるかな。下りるといいな」

 「兄上の?」 

 「ああ。領主権限の話さ」 

 「! そっか。ブライン君お休みするのか」

 「うん。いったん、ポイントを得にね」


 ファストトラベル位置を記憶しに行かないと駄目なのさ。

 有意義な夏休みを過ごすにはね。


 「ロッティの領土と、王都だな。あそこに行っておかないと駄目だね」

 「そっか。寂しくなるね」

 「え? そんな長い間いなくなるわけじゃ」

 「だって、10日はいないでしょ」

 「・・・たしかに、それくらいの期間はいないか」


 よく考えたら、大移動だ。

 一旦リミットタウンを経由するとしても、それくらいは掛かるか。

 

 「まあ、まずは会長に許諾を得ないとね。放課後に行くよ」

 「ボクも行こう。兄上が何を言うか不安だから」

 「え? 不安?」

 

 何を言うって、許可をくれるだけじゃ・・・ないの?


 ◇


 放課後にこの事実を伝え。オレは会長の許可を得た。

 出かけるための準備をして、この翌日に大移動の為にリミットタウンに帰還した。


 「バーランドさん。マリンさん。帰って来ました」

 「「おかえりなさいませ若様」」


 二人が頭を下げてくれる。


 「若様。急なお帰りですね?」


 バーランドさんが疑問に思ったらしい。それも当然だ。オレが連絡を入れてなかった。


 「あの。この腕輪にチェックポイントを増やす旅に出るんで、しばらく連絡をこっちにしてもらえますか?」

 「手帳の方ですか」

 「はい。学生寮の方に出しても、見られない状況が続くんで」

 「わかりました」

 「それで、何かあったらすぐにここに戻りますんで、安心してください・・・って何かありました?」

 「そうですね。目立った問題はありませんね。農業が軌道に乗ったくらいでしょうか」

 「農業・・・何か作れました?」

 「ええ。ハルチが育っていきましたね。出荷できるレベルくらいにまでたくさんできましたよ。エルフの方たちが土をくれましたので、スクスク育ったみたいです」


 ハルチは、ほぼほぼキャベツの事だ。

 黄色いだけで見た目がキャベツで、味もキャベツらしいけど、味わったことがないから分からない。


 この世界の農業は、面白いことに魔法で行なう。

 生活魔法の一種で、土を耕したり、スプリンクラーみたいに水をまいたり、更に生活魔法の中には、土に栄養を与える事も出来るらしく、それに凄い腕前の人だと、成長促進効果のある魔法を出せるって聞いたことがある。

 えっと・・・それはたしか一回だけ見たことがあって。

 いるんだよ。その人とさ。会ったことがあって・・・リミットタウンを成長させる人でさ。

 あれ? どこにいるんだっけな。

 まだ会えないんだっけ?


 

 「出荷するってなったら、えっとどれくらいの価値でしたっけ?」

 「今の所、一個10Gの価値ですね。良の判定をもらいましたから」

 

 それは安いのか? 高いのか?

 ゲーム時代だと、個別の商品の値段をあんまり気にしないから、よく分からない。


 「何個くらいを出せるんですか?」

 「300個です」

 

 3000G。

 まあまあだよね。前よりもお金が入るからいいよね。


 「それって、リミットタウンの分を確保してですか?」

 「はい」

 「わかりました。売っておいてください。資金を蓄えましょう」

 「はい。わかりました」


 リミットタウンも少しずつ強くしていかないと駄目だからね。

 3000Gでも、塵でも積もってもくれれば、いずれは大金に。

 結構なペースで生み出せた記憶があるから、どんどん積もってはいくはずだ。

 

 「若様」 

 「ん? マリンさんどうしました」

 「どちらへ行かれるのでしょうか」

 「ルーフォンと王家です」

 「遠出ですね」

 「ええ」 

 「私も一緒でもよろしいでしょうか」

 「マリンさんも?」

 「はい」

 「どうして?」

 「護衛します。若様一人。それでは何が起こるか分かりませんから」

 「いや、大丈夫だと思いますけどね」

 「では、どうやって移動する気でした?」 

 「列車ですね」

 「若様。今の所持金は?」 

 「500Gですね」


 大体ね。本当は431Gだけど。

 ごめんなさい。見え張りました。小さなプライドです。


 「若様。列車なんですよ。ウエストシティから、ルードックまで運賃がいくらだと思っていますか?」

 「あ…忘れてた」


 そうだったよ。列車って使用するタイミングがもっと後だから、お金に余裕がある頃だからさ。運賃を気にしていなかったわ。

 列車は高級品ってか。人々が滅多に使用しないから高いんだ。


 「列車だけで1万は掛かります。それで、ウエストシティから王都までは2万ほどですよ。合計で3万はないと移動が出来ません」

 「・・・・まさか、馬車? それはしんどいな」

 「だから私をお願いします。若様。私がお金を払いますので」

 「マリンさんが?!」

 「お任せを」

 「お金持ってるんですか?」

 「お任せを」

 「え? お給料だってまともに払えてないのに」


 今のリミットタウンで支払えてる額は、些細な額。

 それでもバーランドさんとマリンさんはここに残ってくれている。

 これは忠義の一点張りだろうね。

 

 「お任せください」

 「・・・わかりました。お願いします」

 「はい」


 少しだけ口角が上がって嬉しそうな表情になるマリンさん。

 ブラインの役に立つことが至福の時みたいな感じかな。

 

 「それじゃあ、まずは、ウエストタウンに行きましょうか。後は頼みますね。バーランドさん」

 「はい。お任せください若様」


 かなり早い段階だけど、列車での旅が始まった。

 

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