第7話 喧嘩内容が・・・
「それはお待ちください。会長」
返事をしたのはオレじゃない。ジルベルトだった。
「ん? なぜジルが答えている」
「ブラインには先約があります」
「先約? 何の事だ」
「ブラインの夏休みの予定は決まっています。我がルーフォン家に来るという約束です」
「なに!? それは何だ。結託でもするのか」
その言い方。
さっきまでの会話の流れを汲むと、やっぱり英雄を取り込む気か。みたいな感じか?
「結託? いいえ違います。いつもの家族間の交友です。ルーフォン家は古くから、長期休暇になれば彼の家と遊んでいますから」
「は? そんな事していたのか」
そんな事してたの?
オレもそこを知りません。
「そうです。クロノ殿を失ってからその回数が減りましたが。今回はブラインが当主となって間もない状況。慰労を含めて、彼には休息を取ってもらいたいと、私の父。それにジュリアもそう思っています。おもてなしを全力でする気なんです」
ああ。そうなるとロッティ以外がって事だね。
ていうか、おもてなしって全力でするもんなんだ。
「お前は、ルーフォン家だとブラインが休める。そう言いたいのか」
うわ。切り返しがえげつねえ。
これだと王家を馬鹿にしたなって事だよな。
声は淡々としてるけど、ゲイルがちょい怒ってるよな。
「ええ。そうでしょう。勝手知ったる場所と、知らぬ場所。休める場所と言えば、我が家に決まっています」
お~い。言い切っちゃったよ。ジルベルト!
喧嘩を吹っ掛けてますよ。
なんで弱小貴族のブラインを巡って、大貴族と王家がバチバチになってんだよ。
というか、オレどっちも勝手知ったる場所じゃないんですけど。
両方の場所、絵だけでしか知りません。内部構造を詳しく知りませんよ。
「そんなことはない。王城もまた良き場所だ。なあ。レイン」
「え!? ぼ、ボク!?」
「王城も休める場所だよな」
「は、はい。そうですね」
二対一にして勝とうという魂胆か?
「ブラインをこちらに寄越せ。ジルベルト。今回は引け」
「いいえ。ここは引けません。我が家は、メイドや執事を含め。彼が帰ってくるのを心待ちにしています」
帰ってくるってどういう事。
遊びに行くじゃないの?
それに、メイドや執事も楽しみにしてるの?
「こちらだってな・・・・妹が心待ちにしている」
売り言葉に買い言葉か?
「え!?」
レインが驚いてるぞ。
そこのお兄さん。あなたの妹さんは、想定外だと顔に出てますよ。
「それは私の妹も同じです」
「お前の妹は婚約を破棄したではないか」
「その妹じゃありません」
その妹って・・・じゃあ、ジュリアって事ね。
たしかに、心待ちにしているだろうな。あの子ならさ。
「引かないな。ジルよ」
「ええ。引けませんね。会長」
オレとは関係ない所でバチバチに火花が散っているんですが。
オレはどういった立ち位置に入ればいんでしょうか。
これヒロイン的な立ち位置なの?
主人公なんだけど・・・。
「あの。すみません。オレ、両方に行きましょうか?」
「「ん?」」
「夏休みを半分に割って、オレがどっちにも行きましょうか?」
これしか解決案がないと思った。
「「それは駄目だ」」
息ピッタリだなこの二人。喧嘩してたんじゃないの?
「なぜです? それが一番良い案だとおもったんですけど」
「BB。それだと私の所に滞在する期間が短い」
それはそうだろうが。半分こって言ってんだよ。
なんかいつまでも平行線の会話してるからさ。
「それに君。考えたまえ。君の領土から、ジルの領土まで5日だ。君の領土から私の王都まで7日だぞ。ということは君の夏休みが移動ばかりになるぞ」
「それは・・・たしかに」
ゲイルの指摘が正しい。確かに移動だらけの夏休みだわ。せっかくの休みだしそれは嫌だな。
「ジルの領土と私の王都を往復しても時間はかかる。よって、君の一つ辺りの滞在期間だって2,3日になってしまう。それでは意味がない」
王子も長い滞在をしてほしいわけだ。
「えっと会長」
「なんだ」
「夏休みっていつからで? どれくらいになりそうなんですか?」
この世界の夏休みは曖昧だった。
オレの記憶通りにこの世界が進むなら、ここが固定じゃない。ランダムなはずだ。
この世界は、一年を400日。
春の節100日。夏の節。秋の節。冬の節。
と春夏秋冬で進む。
一年の始まりは冬の節。日本と同じシステムだ。
だから学校のシステムも春からスタートする。
ブラインの一日目は、春の節1日の事だ。
たしか、夏休みは春の節90日付近から、夏の節の30日辺り。
ここがランダムで、最長が43日くらいで、最短が22日くらいだと思う。
「まだわからない。先生方から連絡がないからな」
この段階では、まだ先生たちが決めていないのか。
じゃあどうする。
日数が多ければ、そのまま行けそうだったけど。
「わかりました。会長。王子としての権限で、オレに領主権限の休みをくれませんか?」
「ん?」
「夏休みに移動をしないために、これに記録します」
「君は・・・それを持っていたのか・・・」
帰還の腕輪を見せた。
これに場所を記録すれば、オレは飛んでいける。
移動時間は無しだ。
ゲームの世界で言う。ファストトラベルって奴だ。
「はい。なので、領主権限で休んでいる間に二か所をマークしておきます」
「それは・・・私からは薦めないな。学業を疎かにするのだろ」
オレを警戒していても。
意外とこっちに配慮してくれるのか。ゲイル。
「大丈夫です。遅れませんので」
学業が遅れるわけがない。
オレには何度も通って来た授業ばかりだからな。
「・・・わかった。中間テストを見ておこう。それで上位であれば私が命令をしたと出そう。王子命令で、君の特別外出許可とする」
「あ。ありがとうございます」
「うむ。見てみようか。君の実力をね」
と言われてしまったが、テストで実力を見られるのもな。
正直ズルみたいに感じるんだけど。
◇
教室に戻る途中。ジルベルトは、会長と話し合いをしているので、ついてこなかった。
おそらくあれは、どちらがどのくらいの滞在期間を得るかのマウント合戦だろうな。
話し合いじゃない。自慢し合いだろう。
「ぶ、ブライン君。夏休みになったら、ボクの家に来るの?」
「ん? ああ、たぶんそうなるよね。あの感じだとさ」
なんで、こんなによそよそしいんだろうか。
さっきからじゃなくて、ずっとそうなんだよな。
「ぼ、ぼぼぼ、ボクの部屋にも?」
「え?! お姫様のお部屋にオレが? それはまずいでしょ。王様に殺されるよ」
あの王様、どっちかというとレインを可愛がってるもんな。
「・・・そ、そうなんだぁ」
なんかがっかりしたぞ。
肩が明らかに落ちてる。
え、部屋に来てほしかったの?
いやいや、あの王様って君を溺愛してる方だから、男が入り込んだらぶっ殺されるって。
「いや。でも割とお邪魔するのも気が引けるな。オレ、貴族って言ってもほとんど一般みたいなもんだしね。リミットタウンも酷い有様だよ」
「か、関係ないよ! ブライン君はとっても立派な人なんだ」
「え?」
隣を歩いていたレインがオレの前に来た。
詰め寄られる。
「これからリミットタウンは大発展するんだ。君が領主なんだもん。確実な未来なんだよ」
そうか。レイン。君はオレの愚痴を気にしてくれたのか。
こんなに信頼してくれるわけだから、ちょっくら頑張ないとな。
「レイン。ありがとう。オレやるよ。でっかい都市にしてみせる!」
「うん!」
いつもの笑顔が最後に見えた気がした。
素敵な明るい笑顔だ。




