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リミットタウン 限界の町と瀬戸際の君  作者: 咲良喜玖
英雄の孫

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第1話 姫様っぽくなくても、姫様は姫様

 防衛戦翌日。

 お昼休み前の学校に到着した。

 

 「ブラタン。学校に来たんか。じゃあ終わったんだな?」


 襲撃が始まり、終わった。それを察してのナオの一言だ。


 「まあ終わったね」

 「そうか。あいつらって役に立ったか?」

 「うん。まあね」

 「んだよ。それ。なんかさ。もっと話す事ないのかよ」


 彼らで守れたんだから、嬉しそうにしろよってことだろう。

 いや、嬉しいんだけど。

 ちょっとな。彼らに取ったら嬉しい防衛じゃなかったからな。

 オレが喜ぶわけにもいかない感じなんだよな。


 「まあ。あとで知られて怒られるのも嫌だからさ。教えておくわ」

 「は? なんだよ」

 「ちょっとさ。ナオには悪いんだけど、あの子たちクビにしたんだ。ごめんね」

 「は? あいつらを? どうして」

 「うん。修行させることにした。ナオは気を悪くしないでほしい」

 「は、修行!?」

 「彼らはね。後でとんでもない強さになるから安心してくれ」

 「????」


 どうなるかは彼ら次第だけど。

 エルフたちが鍛え上げるから、傭兵ってよりかは、レンジャーになりそうだけどね。

 ナオはこの後しばらく悩んでいた。


 その間に、ガラシア君が話し相手になってくれた。


 「ブライン君。親父が無茶言ってない?」

 「ん? 急にどうしたの」

 「あのさ。もしかしてアズマ棒をおねだりしてないかな」

 「あれ? どうしてそれを。聞いてた?」

 「やっぱり!」


 ガラシア君がプンスカ怒り始めた。


 そのために事情を聞いたら。

 親子の会話の中で、アズマ棒の燃焼力が悪くなってるという会話があったらしく。

 その交換をしたそうな雰囲気を感じ取ったガラシア君が、我儘を言ってそうだと察したそうなのだ。

 直接は言われなくても、領主のブラインに言ってそうだと、予測できたらしい。

 

 「つうか。親父さん、持ってたんだ」


 ガランドーがそもそもアズマ棒を持っていた事実を知らないオレだった。


 「うん。昔買ったって言ってた」

 「お金ないのに?」

 「そうなの。お金ないのに、あの人道具だけは、一流を揃えたがるの! だから余計に!」

 「・・・だから貧乏?」


 オレは苦笑いするしかない。ガラシア君のテンションが高い。


 「そうなんだぁ。酷いでしょ」


 酷いってよりかは大変そうだな。苦労してるなガラシア君さ。


 「そういえば姫様は? レインがいないね」


 レインが見当たらない。

 いつもなら四人で一緒にオレの席に回りにいるから、気になった。

 

 「休みだって。ブラタンと同じくらいの時に王都に帰ったんだぜ」

 「王都に?」

 「なんか緊急の会議が入ったって話だったよね」

 「そうなんよ。あたし二人きりだったぜ。なあ、ガラタン」

 「うん」


 二人きりでも仲良さそうだ。男女コンビで気まずくないのがいいな。このパーティー!


 「この時期に? レインが? う~ん」


 過去を思い出しても、この時期に王都での会議は記憶にない。

 何が起こったんだ。

 緊急の会議って早々やるもんじゃないからな。

 国家体制? 国家危機? 継承問題?

 緊急会議って起こるとしてももう少し先だからな。


 「なにがあったんだろ」

 「だよなぁ。それが気になるよな」


 友達を心配しているのは、ナオも同じだった。



 ◇


 彼らが姫を心配している頃。

 ロア王国王都ラスターにて、王家と重要家臣が集まり始めていた。


 自室から会議室に歩く途中のレインは、後ろを歩く女性に話しかけている。

 

 「ボクも招集? どういうことなの。カプナ!」

 「はい。姫様にも知っていただきたいと団長が緊急で連絡を入れました」

 「お師匠様から直接だったのね」

 「はい」


 ロア王国魔法師団副団長カプナ・ジョーショー。

 二人いる副団長の片割れだ。


 「会議室にいけばいいんだよね」

 「そうです」

 「何があったんだろ」


 彼女は、ドレスを着て姫の振る舞いをしつつ会議に出る女性じゃない。

 戦闘服で正装して、国内でも自分が戦う姿勢を見せる女性だ。

 

 会議室の途中、曲がり角を曲がった先に、漆黒の服を着ている女性が立っていた。

 ロア王国の魔法師団の正装は黒。騎士団は白と決まっている。

 

 「レイン」

 「あ。お師匠様」

 「久しぶりだな」 

 「はい!」

 「守ってやるからついてこい。あたしが先だ」

 「わかりました」

 

 颯爽と歩く姿が様になる。姫を従えても違和感のない女性。それが師団長トリスだ。

 

 「何があったんでしょうか。お師匠様」

 「まあ、行けば分かる・・・ところで、学校はどうだ」


 会議室到着までの間。

 世間話をしようとしたトリスに親心のような優しさが垣間見える。


 「学校? ボクの学生生活が気になるんですか?」

 「お前は嫌々行っただろ。駄々こねて、カプナを困らせたではないか」

 「・・・そんなことありましたっけ?」

 「あっただろ。なあ。カプナ」


 と聞かれても、カプナは目を背けた。


 「ど。どうでしたっけ? わ、私は覚えてませんね」

 「ふっ、よかったな。部下に愛されてるな」


 二人の後ろで慌てるカプナの様子を見て、トリスは苦笑いをした。


 「レイン。あそこは色んな人間が集まるぞ。ロアのみならず、他国の人間に触れあう貴重な機会だぞ。誰かに、出会えたか?」

 「他国はまだありません」

 「そうか。珍しいな。お前のような人間にはな。付き纏ってくる人間がそっちからやって来ると思ったのだが・・・先手で自分を売り込もうとする輩は現れるはずなのにな」

 

 人脈を得るのに適した場所であるのが、アーケミア特別支援学校だ。

 だからこそトリスはレインを送り出した。

 本来は王都で魔法師団と共に成長させても良かったのだ。

 それをわざわざ学校に行かせる理由がある。この他にも、彼女を学校に行かせた理由はあるにはあるが、主なものは彼女の心の成長がメインだった。


 「ボクのそばにいるのは、ボクが見つけた人です。誰も寄って来てません」

 「なに? お前が集めたんじゃないのか? 見つけた?」

 「はい」

 「姫の威光を使わなかったか」


 姫を表に出せば、寄ってくる人間はいくらでもいるだろう。

 トリスの発言の意味は、そういう意味だった。


 「はい」

 「じゃあ、お前。誰を見つけたんだ?」

 「ブライン君です」

 「・・・ほう」

 「知ってるんですか?」

 「レッドピックか」

 「そうです」

 

 トリスは、次の曲がり角を先に曲がる。


 「お師匠様、知り合いなんですか」

 「いいや。あたしは知り合いじゃねえ」

 「は?」


 あたしはの『は』が気になった姫だった。


 「ちっ。デカブツが先にいたか。とっとと、中に入ってろよな」


 会議室の前に、巨大な男が立っていた。

 白き鎧を身に纏い、大きな盾と共にいる男だ。


 「ん? おお! トリス殿。久しぶりだな。貴殿が会議に出るのも珍しいじゃないか」


 通常、トリスが会議に出る事がない。

 トリスは、副団長のカプナかオルタに会議の代理をしてもらう事が多い。


 「相変わらず声がデカいぞ。騎士団長殿。ここは廊下。しかも会議室の表なんだ。静かにしたまえ」

 「そちらこそ相変わらず手厳しいな。ガハハハ」

 「だから黙れよ。お前」

 「黙ったら僕ではないね」

 

 ロア王国騎士団長ゴア・ラインガルド。

 王国最強のタンク。近接戦闘でトップクラスの実力者だ。

 一人で数十体のモンスターを引き付ける事が出来る。

 その際に一切の傷を負わずして戦う事が出来る怪物だ。

 大きな体に大きな盾が特徴なので、遠くから彼を見ても一発で彼だと分かってしまう。

 声も大きいので、なおさら彼は目立ってしまう。

 息子のノアと違うのは、その声の大きさの部分だ。

 控えめな性格の彼とは真逆の大胆な男として知られている。

 

 「ゴア騎士団長。おはようございます」


 二人がこれ以上会話すると、言い合いになりそうだったから、レインが続けて挨拶をした。


 「姫様。会わない間に、こんなにも凛々しくなられて」

 「あの・・・つい最近に会いましたけど?」

 「あれ、そうでしたか?」

 

 レインとゴアは、40日前には会っている。

 入学祝いのパーティーでである。


 「ゴア騎士団長はすっかり忘れているのですね。残念です」  

 「ああ。申し訳ありません。僕のこのバカ頭では、日付の概念が無く。今なのか。さっきなのか。すでに分からないのです」

 

 ゴアは鳥頭だ。

 三歩歩くとほぼすべてを忘れるくらいに。


 「まあいいですよ。ゴア騎士団長は? 中には入られないのですか?」

 「ええ。僕も今入ります。すでに、皆さんが中にいまして。最後の姫様をお待ちしてました」

 「あら。そうでしたか。ボクが最後でしたか」

 「はい。ではどうぞ」


 扉を開けてくれたゴアは、最後の姫が来るまで待っていた。

 騎士団長として護衛の任も兼ねて、要人たちを待っていたのである。

 

 こうして、ロア王国の会議が始まった。

  

 

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