↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
リミットタウン 限界の町と瀬戸際の君  作者: 咲良喜玖
死なせるな リミットタウン防衛戦

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
62/87

第10話 ターニングポイント

 「金ぴかのパンツ!」


 オレの相手はオークペロトン。どうやら亜種らしい。

 パンツの色が金色。

 普通の奴は、赤か青らしい。両隣の戦場のオークを見たら、ちょうどその色だ。


 「豪勢なだけだよな。見た目・・・」


 そうパンツだけが違うだけで、顔も同じ。持ってる武器も大体同じ。

 それのどこが亜種なのか。

 オレにはさっぱりだ。

 

 だって、オレが出会った亜種ってさ。種類がまったく違うみたいに変化するんだ。

 特に変化が激しかったのは、クレイムドラゴンって奴が印象にある。

 通常形態が、背中の翼が虹色に光るグレーのドラゴン。

 亜種は、背中自体に翼がないドラゴンになって地を這うトカゲみたいになるんだ。

 でもめちゃくちゃ強い。

 地上戦の強いドラゴンって逆に厄介だ。

 飛んでくれた方が、攻撃パターンが読みやすいんだ。

 飛んだら次これ。飛んでないなら次の攻撃はこれ。

 この予測が立てやすいからね。


 ってことは。


 「こいつの攻撃は!?」


 違うものなのか。


 オークペロトンの一撃は、こん棒の叩きつけ。

 動きは鈍い。通常の奴と変わりがない。隣の戦場の奴と同じ速度だ。


 「躱してみるか」


 オレのステータスでも躱せる。こん棒が目の前を通り過ぎていった。

 しかし、違いが起きる。

 

 「!?」


 抉れた。地面に大きな穴が出来上がる。こん棒から伝わるエネルギーの違いがあるんだ。


 「パワーが違うのか! この亜種は」


 見た目や行動パターンが変化するタイプじゃなくて、ステータス変化が起きている亜種って事か?

 このゲーム、今はそうじゃないけど。

 リミットタウンって、奥が深すぎる。あんだけ遊んだのに、まだまだ発見する事ばかりなのがすげえわ。


 「ぐあ! が・が・が・が!!!」

 

 地団太を踏み始めた。オレが攻撃を躱したから、苛立ったらしい。今ので、殺せると思ったのかもしれない。

 

 「怒んなって、お前の動きが速かったらよかったよな」


 速度系の亜種だったら厳しかったけど、パワー形で助かった。

 これなら、オレの攻撃が!


 「ほい!」


 パンチを繰り出してみたが、攻撃が効いた気配がない。

 手の感触的に、分厚い筋肉で弾き返された感覚がある。

 

 「ん? まさかこいつ。攻撃防御特化型か」


 オレが自分の拳を見つめて戸惑っていると、オークがほくそ笑んだ。にんまり笑って嬉しそうな顔をした。

 

 「は!? こいつ、オレの攻撃が痛くもかゆくもなくて、馬鹿にしてきたんだな」


 腹立つモンスターだな。

 マシューの方がまだマシだわ。

 

 「オレは一応。お前の数十倍は強い。あのマシューを倒したことになってんだぞ。ここで苦戦するわけねえだろ」


 龍麒を出して、技を出す。

 数の多さ。腕の回転力で勝負を決める。


 「いくぞ。黄龍麒麟拳。黄龍・龍鼠(りゅうそ)百陣形」


 オークに密着して攻撃を連打する。オレの龍麒はまだ倍化が出来ないから、攻撃力100の連打攻撃だ。

 

 「おおおおおお。ぶっ倒れろ」

 「ぎゃぎゃぎゃぎゃ・・が?・・ぎゃぎゃぎゃ・・・が?」


 笑いと疑問の二択の敵の声。

 これは意味が分かる。

 こいつにダメージが入っている時と入っていない時があるんだ。

 オレの連撃会心ビルドは完成形じゃない。その途中段階だ。

 二分の一の確率でクリティカル攻撃が入るから、こいつに防がれたり、貫通したりを繰り返している。


 完成形だったら、オレの百連打で1万のダメージが入っただろうけど。

 今はその半分の5千くらいだろうな。

 運が良かったらさ。


 「ぎゃおあらぐど」


 余裕な表情オークがたたらを踏んだ。

 仁王立ちからの変化は、HP大幅減少の動きだろう。


 「そんじゃ。まだまだ技的には未熟だけど、必殺を出そう」


 師シャオリンから教わった黄龍麒麟拳でも攻撃力重視の大技だ。

 

 「黄龍麒麟拳。黄龍・龍象破《りゅうしょうは》」


 龍麒のエネルギーと近距離で大放出する技だ。

 魔王と戦った時のシャオリンが出した必殺技で、当たれば大ダメージ間違いなしの博打系の技でもある。


 なにせ。


 「隙がデカいからな!」


 モーションが大きめなんで、敵に逃げられないようにしないと駄目だ。

 当て感も大事な技である。


 「消し飛べ。オーク!」

 「ぎゃおおおおおおお」

 

 素で勝った。

 これは初めてかもしれない。オレだけで強敵に勝つなんてなかった気がする。

 今まで誰かがいたから勝てた戦いだらけだった。

 それが、今ぶっ倒せてる。亜種って奴を・・・。


 実感するわ。成長って奴をさ・・・。

 ただのチュートリアルバトルなのに。


 「ぎゃおおおおお」


 右からも。


 「おおおおおおん」


 左からもだ。 

 オークの絶命の声が響くことで、双方の勝利を確信した。


 「お。さすがだ。皆さんやりましたね」

 「若様こそ素晴らしい戦果で」

 「いえいえ」

 

 マリンさんの後にカールが。


 「別に敬語はいらねえっす。領主さん。俺っちたちそんなに歳が離れてないからさ。戦ってる時みたいでいいっすよ」

 「そう。私もそっちが楽」

 「そう? わかった。君たちにもナオみたいに話しかけるよ」

 

 二人が頷いた。


 「さて、こっちの二人が問題か」

 

 一人は錯乱。一人は混乱。

 状態異常で言えばそういう感じだ。


 「あああ。自分が。先頭で」


 ラグナルは剣を振り続けている。誰もいない場所に向かってだ。錯乱して見えない敵と戦っているな。


 「わ、私。どうしたら・・・」


 こっちは地面に小さくなって縮こまっている。

 混乱状態だ。

 

 「二人ともナオがいないと、これが普通なの?」

 「いいや。もうちょい抑え目っすね」

 「そうなんだ」

 「今回は少し無理をしたから、こうなった可能性が大きいっすね」

 「無理ね。そうか。責任感から来てるのか。ナオの分を背負ったって感じかな」

 「領主さん。俺っちら、学園都市にいたじゃないすか」

 「うん」

 「あれ。弱い奴から実験してたんす」

 「それって、そうか雑魚モンスターから試していたのか?」


 実力をじゃなくて、こういう風にならないように気を付けるためにか。

 ナオのそばにいたかったんじゃなくて、結構考えられていたのか。


 「そう。それに隊長がそばにいると思えば、落ち着いてくれるもんだと思ってたっす。なあ。ルーナ」

 「・・・」


 ルーナが同意の為に頷いた。

 

 「でもここまで来たら・・・やっぱりこの二人は傭兵に向いてないっすかね」

 「・・・」


 悲しそうな表情のルーナがユーナの不安そうな顔を見ている。双子ならではの心配だろうな。同じ仕事をしていたいのだろう。


 「どうだろう。マリンさんはどう思いますか?」

 「そうですね。向いてはいないでしょうね。錯乱と混乱。最悪の状態になっていますから」


 冷静な彼女は、二人の状態を淡々と調べていた。

 じっくり顔を見ている。

 

 「しかし。ここならば、鍛錬を続けるのもアリかもしれませんよ」

 「ん?」

 「若様、今すぐエルフと交渉しましょう」

 「エルフ?」

 「はい。若様じゃなくても、人間が森に自由に入っても良いかと話し合いをしましょう」

 「まさか・・・森で?」

 「ええ。森で訓練をすれば、この子たちは成長するかもしれません。本人のやる気次第ですが・・・」

 「なるほど。森ですか」


 マリンさんが提案しているのは、ギランバニアの森でのサバイバル訓練だ。

 モンスターがいつ出るか分からない状況に加えて、生き残る訓練を同時にする。

 そうなれば、状態異常なんて引き起こしてる暇がない。

 荒療治をするってわけだ。


 「メイドのお姉さん」

 「ん?」

 「ユーナを治せるの?」


 ルーナがマリンさんの袖を引っ張って聞いた。

 

 「ええ、可能性はあります」

 「どれくらい?」

 「半々でしょう。やる気があればですが」

 「それなら・・・・聞いてみよう」

 

 ルーナがユーナの顔面にパンチを決め込んだ。


 「いだ!? な、何するのよ。ルーナ!」


 殴られた事で顔を赤くしたユーナが怒った。


 「ユーナ。またなってた。今の戦い、覚えてる?」


 なるほど。記憶喪失みたいになるのか。

 そもそも覚えていない状態になっちゃうのか?


 「え・・あ!? お。終わったの?」


 周りを見てモンスターがいなくなっている事に気付いた。

 彼女はこの戦い自体をあんまり覚えていないんだ。


 「そう。戦いは終わった。私たちと、メイドのお姉さん。それに領主さんが一番強い亜種を倒したの」

 「・・・・ま、また役立たずだったの私?」

 「うんそう!」

  

 ハッキリ伝えた方が優しさだ。

 ここで慰めたら悔しいし恥ずかしいもんな。


 「・・・あ。ラグナルも・・・」

 「ああ。こっちもっすよ。ほい」


 カールが平手でバチコンッとラグナルの頭を叩いた。

 たんこぶが出来上がる。


 「いっ!? は!? じ、自分は・・・」

 

 こっちも気付いたらしい。錯乱状態からの解放だ。


 「そっか。そうだな。オレが聞いてみよう。二人のやる気があるなら、彼らに任せる」

 

 オレはラグナルの手を引いて、ユーナの隣まで歩かせた。

 二人を並べて二人の肩に手を置いた。

 

 「今のさ。治す気があるか。あるなら、オレは手伝う」

 「治す・・・それは自分のあれですか。焦るとつい分からなくて」

 「私も。怖くなって全然戦えない・・・」

 

 二人は自分に起きている現象を理解はしているらしい。

 それなら、あとはやる気だろう。


 「どうする。君たちがこれから先も傭兵をやるなら、きっと克服するべき事だと思う。ナオと一緒に戦いたいならなおさらさ」


 たぶんナオの事が大好きなんだよ。

 この人たちさ。 

 だから諦めないで、克服しようと努力をしていたんだ。


 「・・・・はい。治せるのなら。自分は・・・が、頑張りたいです」

 「私も、ルーナと一緒に・・・戦いたい」

 

 二人の意思を聞いたので、オレがお節介を焼くことにした。

 

 「わかった。大変だろうけど頑張るなら、エルフたちにお願いしてみる。彼らならば、君たちを変える事は出来るだろうから」


 ギランバニアの森のエルフたちは、肉弾戦が得意だ。

 それに戦闘方法は、五感で戦う事が多い。

 彼らの感覚を学べば、冷静さも学べるはずだ。

 それに優しくもあり、厳しくもあるから、きっと良い方向にいくはず。

 森の環境だって傭兵の戦いに向いているからね。索敵の緊張感は森の中だからこその緊張感を学べると思う。


 「「はい」」


 真剣な表情で、二人からの返事が返ってくる。傭兵を失う事になるリミットタウンだけど、オレは、この人たちには強くなってもらいたいから、送り出すことに決めた。

 エルフに鍛えてもらうべきだと判断したのだ。


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。