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リミットタウン 限界の町と瀬戸際の君  作者: 咲良喜玖
死なせるな リミットタウン防衛戦

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第5話 日常

 23日。24日。25日。


 三日連続でオレに起こった事は、なんと日常だった。

 ここに来ての日常は癒し。

 疲れた体を癒せる癒しのひと時だ。


 オレの日常は、こういうタイムスケジュール。


 朝起きる。

 ドアを開けると、三分の一の確率でナオと会う。

 他の確率の時は、大体寝ているらしい。

 

 朝食を食べる。

 大体のメンバーが集まってくる。

 オレの朝食時間に合わせて、彼らが来るような気がしている。

 わざわざこの時間で食べていると思う。


 学校に登校。

 席に着けば、いつもの四人。


 午前の授業を受ける。

 午前中は特別学習以外の基礎学習をする。

 スキルや技。歴史。戦闘方法などだ。

 ここらへんは、オレには必要ない。

 全部見てきた事だからだ。


 昼食。

 オレのパートナーはガラシア君で、彼を基準に食べる人は増える。

 レインが来たり、ナオが来たり、ここは色々だ。


 午後の授業。

 最初の一回だけが通常授業。

 そこからが選択授業をするので、勉強する子としない子がいる。

 オレはしない。

 一年次の選択授業はほとんどが意味がない。

 オレが学習するような内容がない。

 なのでオレは個人で放課後が始まるので、ここで大体シャオリンと修行する。

 だからここが選択授業のような形だ。


 夕方。

 こちらも自由。何をしても良いので、寝たい所だ。

 しかし、オレには時間がないので、考え事をしている。

 今後のリミットタウンに、個人の成長。これらをきっちり考える時間だ。

 ほいほいと熟練度を使わないようにするための戒めの時間とも言える。


 夜。

 リミットタウンからの連絡を確認。

 バーランドさん。マリンさん。

 二人からの連絡がたまにある。

 たわいのないものが多いが、建物の状況や住民の動向などが加わるので油断は出来ない。



 という25日目夜までを過ごしたわけだ。

 

 こうして机の上にいて、ゆったりしているのは久しぶりだ。

 ここで寝られるのも久しぶりなわけで。

 成長させようかで・・・。

 ん?


 オレの学生手帳が鳴った。


 「はいはい。どなたですか」

 「・・・う、うちです」

 「ああ。君は」


 あれからクレアとは友達になった。 

 マリアンナが彼女の動きを全て許した事で、皆もわだかまりがなく。

 エリオンはちょっと警戒していたけど、護衛対象の彼女が許しているのだからいつまでも許さない訳にはいかなかったようだ。

 オドオドしているがクレアは意外と話が分かる人だった。

 変な子だって先生は自分の妹の事を言っていたけど、話せば案外普通の子だった。

 むしろ、マリアンナの方がおかしい面がある。


 「何かあった?」

 「・・・あ、会えますか?」 

 「今?」

 「はい」

 「どこで?」

 「話を聞かれない場所がいいです」

 「それは・・・じゃあ。ナオの部屋に来られる?」

 「ナオさんの?」

 「ああ。場所を送るからそこにいってくれ」

 「わかりました」


 オレの部屋への引き入れはまずい。

 女の子を招き入れるなんて、何を言われるか分からないからな。

 だったら、ナオの部屋だ。

 隣だからすぐにいける。


 それに分かりやすい反応が来るはず。

 しばらくして。


 「うおい! 何してくれてんじゃ。ブラタン!」


 という連絡が来た。

 隣からの大声だけど、声はしっかり学生手帳から聞こえるので、この寮の壁は防音が働いているようだ。

 

 「はいはい。今から行くからそこ開けて」

 「無理だ。狭くてガラタンは入れねえ」

 「狭い?」

 「人三人なんて、入らねえって」

 「え。三人くらいは余裕で入るでしょ」


 寮の部屋は、頑張れば五人くらいはなんとかなる。

 ちょっと呼吸が辛いかもしれないけどね。


 「入らねえって無理だぜ」

 「それはおかしい。ちょっと!」

 「おい待て。くんな」


 とオレは無視して彼女の部屋をノックした。


 「くそ。きやがった」


 彼女の部屋に一歩入ると分かる。

 たしかに無理だ。

 どうやって生活してたんだこれは・・・。


 「あ。あの・・・こちらでよかったんでしょうか」


 ちょこんと座っているクレアは、ベッドのど真ん中にいる。

 そこしか座れるスペースがないからだ。

 こちらの部屋。

 とにかく脱ぎ散らかっている。服がゴミのように散乱している。

 小さいけど一応はクローゼットもあるのに、至る所に服が散乱している。

 机にも置いてあるので、勉強していないのは確実だ。


 「ナオは、服が好きだったんだな」

 「あ?」

 「こんなにあるのも凄くないか」

 「ああ。唯一の息抜きだ」

 「でも片付けるのは苦手?」

 「はぁ。そうなんだよぉ。誰か片してぇ。ユーナか、ルーナがいればやってくれるんだけどよ」

 「そういう事か」


 この人、掃除類は他人任せで生きてきたんだ。

 仲間に助けてもらいながらの生活だ。


 「じゃ、じゃあ。うちがやってもいいんですか」

 「「え?」」

 

 オレとナオが彼女を同時に見る。

  

 「う、うちが魔法で。こんな感じで・・・」


 魔法でクローゼットを開いて、そこに地面に散らばる服を選別して、クローゼットの中にしまうものと、洗濯するものを分けていく。

 汚れている服も一緒になってる時点で、どんな状態でここにいるんだ。ナオは!


 「そ、それで。うちが・・・洗濯してもいいんですか」

 「洗濯も出来るのか。クレタン!」

 「で、出来ます・・・こんな感じです」


 洗濯って洗剤が必要なものだと思っていました。

 でもこの世界の洗濯は、魔法で綺麗に汚れを除去していくみたいです。

 これはどういう原理だ。

 消去? ゴミや汚れを消し去ってるのか?

 そういや建築もどうやってるんだろう。

 魔法で何でも出来るから理論なんて気にしてもしょうがないのかもな。

 

 「おおおお! すげえ。クレタン。神だぁ。ありがとうぉ。めちゃくちゃ困ってたんだ」

 「え。あ、はい」


 ナオに抱きつかれて困惑している表情のクレアだが、それでも魔法を止めずにいる。

 自立式の魔法で発動しているんだ。


 「次もお願いできるか!」

 「え!?」

 「ぜひお願いしたい。あーしには、クレタンが必要だ!!」

 「あ。は、はい」


 頼られて少し嬉しそうなクレアだった。


 部屋が広くなったので三人でいられることになった。

 オレが机の方の椅子に座り、ナオとクレアがベッドに座った。

 女の子二人だから、余裕だ。


 「それで、何でクレアはオレに連絡を?」

 「それがですね。う、うち、教会にいってみたのです」

 「「なに!?」」


 それは勇気がありすぎる。

 敵が、彼女をどうするか・・・って生きてるから大丈夫だったんだよな。


 「それで・・・」


 話を聞くに、彼女はスレスレの攻防をしていた。



 ◇


 教会の神父に挨拶をする。


 「神父さん。セシオ様は今日はいらっしゃいますか?」

 「ああ。クレアさんですね。今日は見かけていませんね」

 「そうですか」


 神父はそう返事を返した所だったが。

 教会の扉が開くとすぐに。


 「お。ちょうど来てくれたようですよ。クレアさん。あちらに」

 「え!?」


 後ろを振り返るとセシオがいた。

 相変わらず高級そうなローブを身に纏っている。

 彼女は走ってセシオの元に近づいた。


 「君は・・・」

 「セシオ様。こちら、ありがとうございました」


 クレアはロザリオを見せた。


 「・・それは・・な?!」


 セシオは何かに驚いた。


 「ロザリオがあったおかげで、うち助かりました。魔物に襲われたのですが、守ってくれたんです」

 「そ。そうか。それはよかったな」

 「はい。ですが、これ、砕けてしまった部分があるので、お返しします。申し訳ありませんでした。せっかく頂いたのに壊してしまったようです」

 「お。おお。そうだな。しかし命が無事でよかった。なによりだ」

 「ありがとうございます」


 と自分で壊したものを送り返した。


 「セシオ様。うち。両親を追うのはやめます。魔物に襲われて、生死の境に立ったことでわかったんです」

 「?」

 「生きろ。って事だと! たぶん、うちの親も。お姉ちゃんも・・・今を生きろって言ってたんです」


 今まで死んだような目だったのに、今のクレアの目には生気があった。

 目力はとてつもない力強さで、大神官であるセシオが気圧された。

 

 「そ。そうか。君のご両親も納得したのか」

 「はい。そうです。なので、これからも教会に来ますが、頼らないようにします。それに勉学に励むので、白い布も時間があったら作りますので、すみません」

 「・・・わ。わかった。が、頑張りなさい」

 「はい。ありがとうございます」


 と言ってセシオに決別宣言をして来たのだった。



 ◇


 「つまり、君が言いたいのは」

 「はい」

 「セシオとガーバインに繋がりがない・・・だね?」

 「はい。たぶんそうだと思うんです。うちらが襲われた詳細を知らないようでした。あの顔だと」


 ナオが呟く。


 「つうことは、奴は、大量の魔物を誘き寄せるだけで、聖女が死ぬって思ったのか。見習いだからそこまで強くないと思ったのか? バカタレだな」

 

 聖女の実力を見誤ってるじゃねえか。

 ナオの言いたい事だ。


 「うち。あの人に会ったら怒っちゃってて、ついつい突き放しちゃったんですけど。良かったんでしょうか」

 「良いと思うぜ。あーしらが後で乗り込むにしても、クレタンはセシオから離れていた方が良いと思う」

 「・・・そ、そうですか? 本当に?」


 敵のそばにいて、内情を調べた方が良かったんじゃないか。

 そう思ってるみたいだけど、オレもナオに賛成だ。

 スパイをするにはこの子だと危険すぎる。嘘が下手だ。演技が出来ない気がする。


 「いらねえよ。それに三年後くらいなんだろ。ブラタン。教皇戦はよ」

 「うん。大体そのくらいだと思う」

 「じゃあ、ほとぼりが冷めそうな一年後。あーしらが二年次になったら、教会に入ろう。内部を探るぜ! それまではマリアンナを見ておこう。守っていこうぜ」

 「・・は、はい」


 ナオなら出来る気がする。

 この子は意外としたたかだぞ。

 傭兵団の隊長を任されるだけあってさ。


 「だね。気を付けてないと。マリアンナはいつ襲われるか分からないからね」

 

 そうだ。学校でも注意しておかないと、いつどこで誰に襲われるか分からないぞ。

 オレもだけど。


 「んで。それが悩みだったのか。クレタン」

 「あ。はい。そうです」

 「なぁんだ。あんま気にすんなよ。気楽に行こうぜ。あーしら、友達だしよ。一人で悩むなよ。皆で考えようぜ」

 「はい。ありがとうございます」

 「うし!」

 

 ナオが立ち上がった。良い事言ってると思ったが。


 「じゃあ。今後もよろしくだぜ。あーしの部屋。定期的に来てくれ。片付けてくれよ」

 「え!? あ、まあ。いいですよ」

 「やった! 助かった・・・・あと三年もここにいたら、服に埋もれて死ぬかと思ってたぜ。ラッキー」


 片付けるって頭がないのね。君さ。

 折角良い事言ってたのに。台無しだった。


 

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