第3話 悪役令嬢の妹は、何令嬢?
22日目の夜。
ここが本格的な建築スタートの時だ。
リミットタウンに行かねばならない。
PCみたいな奴の中にメールが到着している。
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若様
大変な所申し訳ありませんが。
資材が更に運ばれてきました。
ルーフォン家が大量の支援をしてくれたようです。
どうしましょうか? 婚約の件もありますが・・・。
例の方もいらっしゃってます。
バーランド。
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というものが届いた。
ルーフォン家が最初の支援をしてくれる。
これは、ロッティが関係ない。
というか、ルーフォンの家は、この段階だとロッティの悪態について何も知らない。
だから無条件でこちらを応援してくれている。
ルーフォン家ってのは、ロッティが反転せずとも、家族全員がブラインを支援してくれる変な家なのだ。
まず、第一に何が変かというと、まあ、それは今リミットタウンに帰ると分かる。
「ルーフォン家の支援を受け入れるか、拒絶するか。ここでルートが別れるんだよな」
受け入れると、下僕ルートかロア王国内乱ルート。
拒絶すると、反転ルート。
これらに入るフラグになる。
まずは、帰るか。そこで決めよう。その場のノリがいいだろう。フラグはすでにどれを踏んで、どれを壊してるか分からないしね。
オレはリミットタウンに帰還した。
◇
「若様! お帰りに」
困り顔のバーランドさん。その理由はここにある。
「ええ。帰りましたが・・・いましたか。やっぱり」
そう帰ったと同時にオレは抱きつかれる。
「ブラインお兄様! うほほほ」
ブライン大好きっ子。
ロッティの妹『ジュリア・ルーフォン』がすでにここにいるから、バーランドさんが困っていた。
ジュリアは、ジルベルトの全妹。
なので、ロッティとは半妹である。だが、ここも姉妹間のわだかまりはない。むしろ仲が良い。
「うひょおひょお~~」
奇声を上げてオレの腕に顔を擦りつけている彼女は、ブラインがそばにいれば上機嫌になるという意味の分からないテンションの女の子だ。
「ジュリ。今日は何しに来たんだい」
とりあえず引き離す。彼女を持ち上げて、自分の正面に立たせた。
「カッコいいですわ。いつ見てもお兄様は素晴らしい。目の保養になりますわぁ」
見つめ合ってる目がハートになった。
ブラインの顔に心酔している。
「ああ。はいはい。それでジュリは何しに来たの。何もない場所なのに遊びに?」
「違いますわ。お兄様」
真面目な顔になった。領主代理としての立場を思い出したようだ。
「お父様の名義で、リミットタウンの一時的な再建に必要な資材を出したのですわ。それのお届けです」
「そうか。どれくらいなの?」
「そうですわね。家なら十軒。生産系なら二軒分くらいですわ」
だいぶ持って来たな。
チュートリアルで建てられる量じゃないぞ。
ここは、本来チュートリアル分の家二軒くらいが建てられる量を持って来るんだぞ。
それがその量だと倍以上の支援だ。どういうことだ?
「見返りは? お返ししないと駄目だよね」
「いりませんわ。わたくしたちとお兄様の間の出来事。無償の愛に決まってますわ」
それが一番怖いんだよ。それに愛ってなに? 愛って?
無償で貸し出す資材でよくない?
「いやいや。量がありすぎる。無償にするには量が多いよ」
「いいえ。お姉様がこれくらい出せとお父様に連絡してきたのです。本当はもっと運べと言っていたのですが、馬車やら何やらを総動員しても、資材を更に積めなかったのですわ」
「え。ロッティが?」
「はい。だから無償の愛でしょう。お兄様」
「・・・え?」
「だって、お姉様と結婚されるのでしょう」
「ん?」
「そしたら、お兄様の素晴らしいお顔を、私は毎日見られるのです。うへへへへ」
気持ち悪い笑いになった。
どんな妹なんだ。
つうか、姉が結婚したのに、その家に一緒に住む気満々なのかよ。この子。
「ジュリ。知らないのか。オレ、婚約破棄されたんだけど」
「ふえ?」
「オレ破棄されたんだ」
「なんと?」
耳が遠くなったらしい、聞こえてない。
「だから、破棄!」
「またまたぁ。御冗談を」
「いや、ほんとだから。破棄されたの」
「ブラインお兄様が?」
「されたの。さ・れ・た!」
「お姉様がですか!?」
「うん」
「あ、ありえません。お姉様は結婚が決まった時にはあんなに喜んでいらっしゃったのに。破棄するなんて・・・お兄様、浮気しました?」
「してないよ」
「え、じゃあ、じゃあ・・・なんで?」
「知らない。入学式で皆の前で堂々と宣言されたから」
「皆さんの前で!? 正式ですね。それだと」
「だろ」
堂々と宣言されたら、そうなるよね。
「これは、持ち帰らなければ。お兄様が本当のことをおっしゃってるのであれば、お姉様を問いたださないと・・・ああ、お父様が怒り狂うでしょう。家が一個無くなるかもしれませんね」
「そうなの?」
「当り前です。レッドピック家とようやく婚姻できるのですよ。わかりますか。婚姻は、我が家の宿願なのですわ」
「え?」
「お兄様。クロノ・ジャンでは結婚出来ないでしょう」
「それはそうだ」
男同士の親友だし。
「ダグノス・フィルド間でもです」
「それはそうだ」
親同士も男だ。
「だからこそのブライン・ロリヴァルドなのですよ。わたくしでもいいのに」
それは余計な一言じゃない。
「あ。ならば、お兄様。わたくしと結婚してください。どうです。あとあとで、美貌はちゃんとついてくるはずです。大きくなったら、美人になると思います」
小学生くらいの子が、グラビアポーズを決め込んでる。
それは愛らしくて、可愛いけど、綺麗だとかは思わないし、性的にも興奮しない。
オレはおっとりお姉さんが好きです!
しかし残念な事にいません、この世界に!
「はぁ。そうですか」
ジュリアは、一歳年下だけど、小さな少女に見える。
彼女は、彼女の言う通りに美人になる。
ただし、二年後だ。
成長が遅かったらしい。発育も悪く、二年後にならないと彼女は大きくならない。
しかし大きくなったらビックリするくらいに別人になる。
作中トップクラスの美人になるんだ。
しかもカッコよさも出てくるのさ。お嬢様じゃなくて、この子は剣士がメインだからね。
「どうです。鞍替えは。お姉様よりも尽くします! ぜひ」
「結構です」
「えええええ。駄目ですか?」
「駄目です」
「そんなぁ」
このゲームで、ハッキリ好意を伝えてくるキャラはこの子くらい。
面白いくらいにストレートなキャラだ。
今も画面のまんまのノリの子だ。
「それで、君は資材を渡しに来ただけだよね」
「はい。それと、お父様からは町の様子とお兄様の近況を窺えとの話でした」
「フィルおじさんが?」
「ええ。お父様もお兄様の事を心配していました。でも領地を離れる事が出来ないので、わたくしを派遣したのです」
「なるほど」
ホントにさ。ルーフォン家はブラインについて過保護だよな。
そんな家なのに、ロッティの初期を悪役令嬢に設定するのは、斬新だよな。
「悲しそうだったら、わたくしが慰めろと。どうですか。わたくしと夜を共に」
「するか!」
何を教えてんだ。おの親父!!
「どうぞ」
彼女は両手を広げて、オレが飛び込んでくるのを待ち構えていた。
どんな子供だ。
「どうぞじゃないわ。ジュリはまだ子供でしょ。子供がそんなことしてはいけません」
「14です」
「子供だわ」
「結婚出来ます」
「出来るか!」
「知らないのですかお兄様。わたくしたち法律上もよろしいのですよ。ロア王国は13からです。男女ともに・・・」
「え? そうなの?」
「はい」
マジか。そこは日本基準じゃないのか。
知らなかった。つうか、こんなところ知るわけないか。ゲームに関係ないもんな。
「産めるよね。早めの結婚! です」
ちょっと風邪薬みたいに言わないでくれる?
産めよ。増やせよの世界じゃねえだろ。
いや、その感じだと、後継者を早よ作れって事か。
「結婚なんてまだまだ先だよ。オレにはやらないといけない事があるからね」
「お兄様?」
「オレは、この町を大きくして、街に戻す。そして、守ってみせるのさ。オレが大切にするもの全てをね」
「・・・お兄様・・・」
オレの言葉を聞いて大人しくなったかと思ったら。
「超カッコいいですわ。大好きです」
飛びついて、抱きついて来た。
ロッティとは逆の意味で疲れる女の子。
それがジュリア・ルーフォンである。




