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リミットタウン 限界の町と瀬戸際の君  作者: 咲良喜玖
死なせるな リミットタウン防衛戦

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第1話 |西火の楽山《ヴォルテクス》のナオ

 色々な事があった20日目の夜。ベッドに横になって考える。


 2ターン目が終わった段階なのに、死地を乗り越えてる数が変だ。

 魔王との出会い。

 魔族との戦い。

 マシューとの戦い。

 ネクロマンサーとの戦い。

 四回も死にかける事があった。

 

 この人生がゲームと同じであれば、残りのターン数は驚異の238ターン。

 なんと2380日もあるのだ。


 ・・・・。

 ・・・・・・・。


 おいおい、あと何回。

 オレは死にかけたらいいんだ。

 ちょっと待ってくれ。困難がやってくるのが、すげえハイペースな気がする。

 これから日数が経過するたびに、ゲームと同じように後半が苛烈にでもなったらだ。

 オレは死ぬかも知れない。

 

 ゲームの序盤より中盤。中盤よりも終盤。

 いずれも後ろの方が苦しい状況となる。より一層の厳しい戦いが待っているはずだ。


 そうだわ。こうなると、本当に死だな。

 もっと難しい状況がやってくるに決まってるんだからな。


 それで、その状況を想像すると、オレのステータスが絶対的に足りない。

 困難を乗り越えるには、このステータスでは絶対に足りない。

 超人クラスの力が必要だ。

 

 ということで、オレの熟練度は・・・・。


 450!?


 技を覚えるのに100以上使ったのに、450になってる。

 ってことは、変なネクロマンサー奴との戦いに、ガーバインとの対話も熟練度の中に入ってるんだな。

 

 ついに基礎を上げる時が来たか。

 オレの次の困難は、必ずやってくる出来事の一つ。

 リミットタウン防衛戦だ。

 これにオレも直接戦うとなると、基礎ステが重要だ。

 今までは皆がいたから勝てた。

 バフやデバフで、実力差をカバーできたからな。

 しかし、次回の戦いは、領主としての初の戦争だ。

 頼もしい味方がいない。一人の決戦。

 リミットタウンにも仲間が少ない。ほぼ一人の決戦。


 だから基礎がないと駄目だ。負けてしまう。


 「考えないといけないな。ポイントを残しつつ、ちょこちょこ上げておこう。はぁ。どうしよう。町に壁も出来てないのに・・・それに建物を建てられるのは明後日だろ。22日目だ」


 施設を作り上げるイベントが22日目にある。

 ここから8日後に戦い。

 チュートリアル防衛戦争。

 オーク・ゴブリンの襲撃があるはずだ。


 ダイナガルト王国とロア王国の境目のリミットタウン。

 襲撃イベントは様々だ。モンスター。人。怪奇。色々な襲撃者がいる。

 でも今回は分かりやすい相手。しかも出現位置も分かりやすい。

 

 リミットタウンがあるアールナ大平原は巨大な平原。

 この平原のど真ん中の位置の西側ギランバニアの森寄りにあるのがリミットタウンで、そこはマジで守るにはかなり難しい位置にある。

 だから思う。凄くないか。クロノってさ。

 あの人の時代も結構な数の襲撃があったって聞くから。

 この難しい立地で、都市を守り切っただけでも英雄だと思うよ。

 ほら、父親の時代で全部崩壊しちゃってるから、なおさら思うんだよ。

 クロノの凄さをさ。



 「えっと、襲撃を思い出せばさ。たしか、ダイナガルト側の異変を察知しないと駄目だ。28日目に赤い月が出る」


 あれが警報みたいなものだ。

 赤い月が出た時はモンスター襲撃が始まる予兆。

 この期間が敵を察知する機関とも言える。

 どの敵がやってくるか調べていく期間と言えるんだ。


 ほら、モンスターに応じて、対応を変えないといけないし、用意しないといけない装備もあるからだ。

 魔法が強い敵。物理が強い敵。

 これらで防衛設備が違うし。

 魔法に弱い敵。物理に弱い敵。

 これらでこっち側の攻撃手段が違う。


 色んなことに対応しようとすると、用意するものが違ってくるんだ。

 だから領主たるもの、その見極めも大切って言える。

 皆を守るためには、なんでも利用して、命を大切にしないといけない。


 「しかし今回は100%で壁が間に合わない。どうしよう。誰で守る・・・」


 これが問題だ。

 防衛設備が完璧じゃない状態での襲撃。

 誰に守ってもらうかも重要と言える。

 いつもは、傭兵に頼むんだけど、この傭兵には良し悪しがある。

 お金がないからクソ安い奴しか雇えなくて、当たり外れがデカい。

 外れだとマジで弱いから、勝手に死なれる可能性がある。

 そんで死なれると、これもお墓行き、奴の養分になる。

 ネクロマンサーに餌を与える事になってしまうんだ。

 リミットタウンで、死んでもらったらさ。困るんだよ。

 あいつ、絶対それを狙ってるからな。

 

 「良いのを雇うってなると。お金がな・・・・あ。そういえば」


 ナオが話せるって言ってたか。

 相談してみようかな。明日にでも。


 と色々と思考加速で考えていたオレは、スキルが消えると同時に眠りについた。 

 疲れが溜まっていたのだろう。

 スキルが終わってからが一瞬だったので、気絶みたいになったと思う。

 とんでもない一日であったのは決まりだな。



 ◇


 21日目。

 朝の授業前。

 隣の女の子は寝ている。口をポカーンと開けてる。


 「ほぁぁああああ」


 何か言っていた。意味のない言葉だ。


 「ナオ。ちょっといいか」

 「・・・・はぁぁああああ」


 話しかけても起きない。口は開きっぱなしだ。


 二つ授業が終わった後。

 隣の女の子は寝ていた。目が開いて。普通に起きてるくらいに目が開いてる。


 「・・・・・」

 「ナオちょっといいか」


 これは授業中も寝ていたらしい。

 目を開けて眠る事で、寝ていないアピールをしているようだ。

 

 昼食タイム。

 ようやっと起きている。


 「ナオ」

 「うん」

 「話、いいかな」

 「なに?」

 「あのさ」 

 「うん」


 寝てるな。これ、返事をして寝てる。

 意識があんまりここにない。


 「西火の楽山(ヴォルテクス)の事なんだけどさ」

 「なに!? 団長か?」

 

 起きた。身内の話になると、目が覚めるっぽいな。


 「団長じゃなくてもいいんだけど、協力って仰げるのかな」

 「協力・・・ああ、町の防衛の事か。何かあるのか」

 「そろそろさ。町が襲撃に遭いそうなんだよな」


 なんでわかるんだよ。

 ってオレなら思いそう。だから、ナオも思いそう。


 「は? 何かあったのか」


 やっぱり、そう思うよな。

 彼女の『は?』にその思いがあるな。


 「うん。予知夢でさ」

 「またそれか・・・でもブラタンの夢当たるもんな・・・」


 半信半疑だけどブラインが言う事だから当たってるのかも。

 ナオの感覚だと、これくらいの感じかもしれないな。


 「西火の楽山(ヴォルテクス)に力を借りたいって事か」

 「そう。今どこにいるの」

 「団長は、向こうにいるみたいだ」


 彼女は北を指差した。

 

 アーケミア特別支援学校は、学園都市にある。

 そしてこの学園都市の状況は、ギランバニアの森と近しい状況であって。

 リアリディ大陸の東。ダイナガルトとロア王国の境にある都市となっている。

 ここは、両国にとっての治外法権。さらに全ての国を受け入れる体勢を取っている。

 だからこの学校の人間は、どこの出身か分からないくらいにバラバラだ。

 別大陸の人間だって入学が可能となっている。

 ミルス帝国、和大陸、獣王国。これらからも入学者がいる。

 オレの代だと少ないんだけど、来年にはそこから重要人物たちが入学してくる。

 下の世代はツワモノと物語が拡張していくキーマンが入ってくるんだ。


 

 「向こうか。じゃあ無理だな」

 「お願いは出来るぞ。連絡を取ろうか」

 「今?」

 「ああ。ほれ。聞いてみよう」


 西火の楽山(ヴォルテクス)の通信機器はペンダントだった。 

 紫の宝石が目立つペンダントを使って彼女は連絡をする。


 「おい。ダンチョ!」

 「ほ~い・・・な~んだな。その声、ナオかい」


 すげえのんびりした声が聞こえてきた。


 「あのさ。あーしの友達が困ってんの。傭兵割引してくんない」

 「いいよ~」

 

 即答したぞ。悩まないのか。


 「誰に言えばいい? 誰なら融通してくれるんだ? ダンチョ。こっちいないだろ」

 「そっち? ああ、学校方面ね」

 「そおそお」

 「僕そっちにはいないね。今、ダイナガルトの北にいるからさ」

 「北部戦線か?」


 北部戦線とは、ダイナガルトの北にある戦地だ。

 北にある大陸『獣王国』の襲撃から身を守るための場所。

 だから、攻撃が来ないのなら、ただの広い敷地である。


 「うん。なんかやたらと魔物が多いんだよね。戦争じゃないのに戦争みたい」

 「そうなんか」

 「うん。強さよりも多さが厄介だ。本隊が苦戦するくらいだからさ」

 「そうなのか」

 「だから一番、二番も使おうと思ってる」

 「本体に、第一。第二もか!? そいつは総力戦だな。それじゃあ、無理か」

 「いいや、新人なら使っていいよ。君の第三分隊。それ使いなよ」

 「あーしの? あれ解散したんじゃねえの。あーしが学校にいるんだぞ」

 「解散してないよ」

 「あいつら、どうしてんの」

 「学園都市の近くにいるんじゃないかな。君を慕ってるからさ。近辺で傭兵業するって言ってたからさぁ」

 「あーしの近くに?」

 「いるんじゃない。あの子ら、君を信頼してるからぁ」

 「ちっ。あいつら。自分の事をしろよな」

 「ハハハ。またまたぁ。君、嬉しいんでしょ。照れない照れない」

 「うるせえ。ダンチョはそこで仕事でもしてろや」

 「あ。恥ずかしさを誤魔化してるな」

 「うっせえ。ボケ」

 「お!? ちょいちょい。連絡くれて、せっかく話せたのに・・・待て、切ら・・・」


 団長さん、ここで連絡を切られるのがわかってるから、止めようとしている。

 だけど、ナオはぶち切りした。


 「クソが。団長め」

 

 照れ隠しナオは顔を真っ赤にしていた。

 仲間が信頼してくれている事が嬉しそうだった。

 

 「んじゃ、ブラタン。こっちで連絡とってみるわ」

 「協力してくれるのが、ナオの部下って事? いいの?」

 「ああ。あいつらも二年は経った。新人じゃねえから大丈夫だぞ」

 「そういう意味じゃなくてね」


 実力がまだ足りないんじゃないかとオレが聞いたわけじゃない。

 ナオの部下を使ってもいいのかって事なんだが。


 「君の部下を大変な目に合わせるけどいいかなって事だ」

 「ああ。大丈夫だ。なんとかすると思うぞ」


 大丈夫みたいだ。

 あとは会ってみないと駄目か。


 「連絡を入れるから、明日にでも会おうか。集めるわ」

 「ありがとう」

 

 ナオにお願いをしてみた結果。

 西火の楽山(ヴォルテクス)の協力を得られるらしい。

 あとは彼らに会い、そして防衛を上手く回すだけだ。

 問題の日まであと少しだからな。


 

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