第15話 一番金がねえのに この世界で一番大変な人物らしい
13階層。
「そこを左です。そしてその先にいます」
聖女の探知で、敵を見つけた。
11階層から20階層まで。
学生ダンジョンは森林ダンジョンになる。
ギランバニアに近い環境で、森の中をウロウロしないといけない。
似たような木々が鬱蒼と生い茂るので、方向感覚を失いやすい。
道も入り組んだ場所もあったりして、ここからは迷う者も増えてくる。
でもオレはマップ能力があるので大丈夫だし、今回はマリアンナが逆探知してるから一回も迷わずに進めた。
道を曲がって足を止める。
シャオリンが首を傾げた。
「人? どこに?」
誰もいなかった。だが、マリアンナが。
「あそこです」
木の影に人がいると指差した。
「了解。引きずり出すお! 黄龍・龍鷹爪」
初手、問答無用の攻撃。
今度は広範囲に威力をぶち上げた一振りだったので、辺り一帯を吹き飛ばした。
敵の姿を丸裸にするためだ。
「ぐああああ」
草木が吹き飛び、ヒョロヒョロの男も吹き飛んだ。
「「「「いた!?」」」」
全員で敵を発見。ネクロマンサーだ。
「あれだ。拘束しよう」
オレが言った直後に、背後から声が聞こえた。
「はぁはぁ。つ、疲れたぜ。なんだかわかんねえが。あれを捕まえればいいんだな」
ここまで追いかけて来たオラシオンが遅れて登場した。
今まで一度もオレたちの速度に合わせられなかったので、彼は移動能力がないみたいだ。
「せ、先生?」
「ああ。まかせとけ。魔の牢獄」
敵の頭上から、魔法の檻が落ちた。
「ありがとうございます。先生」
オレは檻に近づいた。皆もその後を続いている。
「これが敵の正体か。あんたは何者だ。何でマリアンナを?」
「貴様! 明星め。聖女を守るとは・・・邪魔をするのか」
「あんたも明星って・・・」
色々整理したいな。オレの事を明星って言う奴が多すぎる。
「邪魔もなにもな。何でマリアンナを狙った。誰からの指示だ」
「いうわけがない」
「セシオか?」
「知るか。そんな奴」
「じゃあ、フリオネか?」
「誰だ。何の事を言ってる?」
冗談を言っているような雰囲気じゃない。
本気で知らないようだぞ。
主が違うのか?
こいつの単独の意思・・・それを感じない。独立してる雰囲気がないから、誰かからの命令なはずだ。
「じゃあ、マリアンナを狙ってる理由はなんだよ。そいつらが主じゃねえんだったら、お前が狙う理由がねえ」
オレも焦って言葉遣いが荒くなってる。
でもここは聞き出したい事だ。
「そいつを殺せばたんまりと褒賞金が手に入るんだよ」
「褒賞金?」
「ああ。聖女に懸けられた値段は、1億だ。どうだ一生遊んで暮らせるぞ。お前も殺してみるか? 隣にいるんだ。すぐに殺せるぞ」
1億だと。
誰が出せるんだ。そんな金額。個人じゃ無理だ。
それに莫大過ぎて、嘘くさい。
「誰が殺すかボケ。こちとら、この子の友人なんだぞ。大切な友人の命が、たったの1億の価値なわけねえだろ。1兆でも足りん。1京でも用意してこいよ」
友達は金銭じゃねえ。ふざけんじゃねえぞ。
「ブラインさん」「ブライン君」
オレの後ろで皆がオレのことを呼んでいる気がした。
大袈裟だったかな。やり過ぎだって言いたかったのかも。
「金じゃない? ああ、ああ。金持ちはこれだから困る。貧乏人にはてめえらの気持ちは分からんな」
「金持ちじゃねえわボケ。オレのどこが金持ちに見える。所持金もこの間に使って300Gしかねえし。町だって1000Gしかねえ」
ボロボロなんだよ。こっちはよ。
領主だからって、学生だからって、金持ちだって思われても困るわ。
貧民街の人間の方が、金持ってる可能性だってあるんだよ。
今のオレの所持金だとな。
「は? 俺よりも貧乏なのかお前」
「そうだ。自慢じゃねえが、アーケミアで一番金がねえ!」
たぶん!
「くくく。こんな奴に俺は負けたのか。聖女も殺せずに・・・ああ、くそ。俺よりも下の奴に!?」
失礼な奴だな。
誰が下だボケ。
「んで、そんなお前の事情が聞きたいわけじゃない。あんたは誰に命令された。ネクロマンサーなんて珍し過ぎる」
ジョブのネクロマンサーは、ちょっとやそっとじゃなれないジョブだ。
1万人いて、一人もいないなんてざらだと思う。割合はもっと少ないと思うんだ。
それが、ここにいてだよ。
さらに、オレが思いつく奴もいる。まだ一人いるのは確実になった。
こいつがあれじゃないんだったら、複数いることになる。
「お前。ガーバインを知らないか?」
「・・・・・」
分かりやすいほどに黙る。お喋りが一気に黙った。
「知ってんな。教えろ。お前が居所を知る者の一人だな」
「だ、誰の事だ?」
「ガーバイン・メクサス。最強のネクロマンサーだ」
「・・・し、知らん。俺はそんな奴知らん」
町で、ある一定数の死者が出た時、リミットタウンはネクロマンサーに襲われる。
首謀者がどこにいるかもわからずに、ブラインはとんでもない集団に襲われるんだ。
ネクロマンサーの操る死体の限界は100体だと言われているのに。
奴は1000以上の死体を一気に操る事が出来る。
しかも遠隔でだ。
だからオレは物語の終盤になると、必ずと言っていい程そいつを探す。
だけど見つからなかった。でも探しに探した結果、容姿の特徴と名前だけは見つけた。
ガーバイン・メクサス。
半眼のおかっぱ男性。
そいつが一度も見つからないんだ。
でもそいつは、常にじゃないだろうけどオレの事を見ているはずなんだ。
何らかのアクションを起こすタイミングを見計らっている気がする。
「ガーバインはどこだ!」
「・・し、しら・・・がはあああ・・・ええあ・あ・・あ・てゃ・っやあらが・・・」
男が狂いだした。
言葉じゃない。呻き声のような音を出した。
「ブライン・レッドピック。我を探す気かな」
声が深い。低い。これは別人だ。まさか生きた奴も操れるのか。
「て、てめえ。まさか、ガーバインか」
「死者をもっと・・・もっとだ。たくさん生み出してくれ。明星よ」
「なに!?」
死者を生み出せ?
「頭の足りない聖職者どもの計略に乗り、聖女を殺す千載一遇の好機だったが・・・明星、貴様が邪魔をするとはな」
「お。おい。お前も!?」
こいつもマリアンナを狙った?
何のためにだ。
「貴様が希望などではない事を我が証明してやる。貴様を殺すのは魔族だけではない」
「なんだと」
その光ってなんなんだ?
オレが世界の希望の光じゃないって事か?
「貴様は死を乗り越えられない・・・・クククハハハハ」
「待て、消えんな」
笑い声が遠退いている。
消える気だ。
「がはっ!?」
男が最後にとんでもない量の吐血をした。
これは・・・。
「これで殺せんのか。あいつ。遠隔で人を殺せるのか。操るだけじゃないのか・・・・」
怪物だ。ただものじゃねえ。
「君。何があったんだ。これは。何があればこんな風な」
「先生。すみません。オレもわからないです。ただ・・・聖女を狙うのはよく分からない奴らだらけって事ですね」
「???」
問題は山積みだって事だけは分かった。
それは、マリアンナの問題だけじゃない。
オレの問題もだな。
ガーバインは、オレを見ている。どこかでな。
そんで、オレのそばで、死者が出るのを心待ちにしてるって事だな。
死を乗り越えられないって言葉の中には、オレ以外の死も含まれているはずだ。
リミットタウンには、隠されている何かがある。
開発者たちは、簡単に生きる事を許さないんだ。
主人公に大きな負担を強いるんだな。




