第11話 爆速踏破
「ん? なんかうるさくない?」
後ろが騒がしい気がする。
「そうだね。何かあったのかな。聞いてくる?」
ガラシア君が言ってくれたが。
「いってくる!」
と、判断が早すぎるレインが走っていった。
「ちょ!?」
待ってくれと言いたかったが、既に彼女の姿は無かった。
「あ、あれ? 慌ただしいな。レインが何でいねえんだ」
よだれが出てるナオは寝ながら歩いていた。支えだったレインがいなくなったので、起きるしかなかった。
「後ろに行っちゃった」
「は? 何があったんだよ。めんどくせー」
レインが目を擦る。
「皆さんお静かに。モンスターは出ていませんから安心してください」
先生の声で皆が落ち着く。
皆も後ろの様子が気になって若干浮ついていた。
「少し止まりましょうか。後ろの先生と連携を取りますね」
全体の落ち着きを取り戻そうと、先生はゆっくり行動を促した。
◇
しばらくして。
「ちょっとちょっと。ブライン君。ナオ。ガラシア君」
レインが走ってきた。オレたちの輪の中に入る。
「後ろで何かあったの?」
「はぁはぁ。あのね」
息が上がってるのは珍しい。激しい運動でも息一つ乱れないのがこの子だ。
「あのね。マリアンナがいなくなったって」
「「「え?!」」」
どうやって? ここ一階層だったら、そんなトラップはないぞ。
「黒い光が出て、彼女が消えたんだって。そばにいた生徒も一緒に」
「・・・黒い光・・・」
トラップじゃないな。
ここのトラップは転送と同じだ。白い光でランダムにぶっ飛ばされるのがオチ。
黒の光は狙いがあるな。誰かの罠だ。
「聖女様だったら、連絡取れるんじゃないのかな。おらたちって」
「「「あ!?」」」
ガラシア君の言葉で、三人が気付いた。
「やってみよう。オレが連絡を」
生徒手帳で学生連絡を試みる。繋がった。
「マリアンナ! どうなってる。大丈夫なのか」
「・・・・あ。ブラインさんですね・・・・こちらは・・・・まだ・・・無事です」
無事は確認。しかし、これはあの時と同じで、そちらからの連絡の声を聞き取るのが難しい。
「何があった。飛ばされたのか」
「・・・こちらは・・・モンスターに囲まれて・・・今は、減らす作業をしてもらい・・・」
話は通じるけど、ラグが大きい。
会話が難しいな。
「どこにいるんだ。助けに行く!」
「・・・わ、わかりません・・・突然飛ばされてしまったので・・・・こちらがどこにいるのかは・・・」
そっちも緊急で飛ばされたんだな。
場所が分からないんじゃ、どこを探せばいいかわからないぞ。
「・・・あ!? き、切ります・・・ブラインさん」
「え、なんで。ま、待て。マリアンナ。何があったんだ。ちょ・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
返事が返ってこなかった。
目線を学生手帳から皆に切り替えると、全員こっちを見ていた。
「行ってくれるのか?」
「当り前だよ」「おらも」
「しょうがねえ。知り合いに死なれたら目覚めがわりい」
三人とも協力してくれるらしい。
オレは前へと走り出した。先頭の先生に話す。
「先生。すみません、緊急事態で先に進みます。あとで怒られるんで、今は先を急ぎます」
「え? ちょ。ブライン君。それに姫様も!?」
オレらって問題児だろうね。
特にオレはさ。一回学校で喧嘩してるって思われてるし。
◇
二階層。ここの地図はオレの中にある。実は三階層辺りまでは記録されている。オレが前に潜ってるからだ。
ここは急いでいける。
「いない」
一度行った場所。さらに知り合い。これなら探る事は出来る。
オレのマップは、知り合いがいれば、勘単に察知できるんだ。
「なんでわかるんだ」
ナオが聞いて来た。
「なんとなく」
皆は違うと思うんで誤魔化しておく。
「勘かよ」
勘じゃない。記録されているんだ。
とは言えないので。
「まあね」
で留めておく。
「なら先に行こう。マリアンナが危ないかもしれないからね」
レインは何も疑わずに信じてくれた。
階層を突破するのに最短距離。
オレのマップを参考にして一気に駆け抜けていった。
出てくるモンスターは全て彼女に任せる。
「アシッドレイン」
雨も出せるけど、今回は霧。それも最小限で出す。
魔力の消費を抑えた低コスト型の魔法で、彼女が出現モンスターを倒していった。
蝙蝠型やウルフ型、鉱石型のロックモンスターも出てくるが、全てが溶けていく。
特にスライムは無残だった。元々が溶けているようなモンスター。それが更に一瞬で溶けていく。
彼女の魔法はさすがの悪質性である。
◇
四階層。
ここからは地図がない。彼女の気配も察知が出来ない。
「んん、わからないな。ここからだと地図もないし」
「じゃあ、あーしに任せろ。洞窟型なら風が吹き抜けるはずだ」
学生ダンジョンは1~10までが洞窟ダンジョンとなっている。
一学年の優秀な生徒は、10階層にいるボスを倒せるくらいの実力になる。
それと大体三年次になると誰もがそこに到達することになるのが、ここの学校の教育の上手さだ。
「抜ける音はこっちだな。人の声も。戦う音もないから、誰もいないと思うな。あーしらの近くはな」
彼女は左の道を指差した。
「走るけど、途中で止まるぞ。行き先と索敵をする」
「「「うん」」」
ナオが司令官となってくれた。
彼女は非常に優秀な部隊長なんだ。
基本行動が指揮官なんだよ。
「止まれ。静かに」
先頭を走る彼女が、後ろのオレたちに手で止まれと合図を出した。
動きを止めて耳を澄ませている。
「いないな。あと、こっちだ。いくぜ」
彼女が道を進んでいくと、出口を発見。五階層の入り口だ。
「早いな」
「いいや。まだまだだわ。本来はもっと早く移動してえ。今、どれくらい経った。連絡が着いてからだ」
「三十分くらいかな?」
ガラシア君が答えた。
「ちっ。襲われてるなら、疲れが出る頃だ。どこまでも長く続く戦闘。それは疲労困憊に繋がる」
三十分経っても、オレたちの方に疲労はない。
ナオもレインもまだまだ元気だった。
「じゃあ、ナオちゃん。急ぐ?」
ガラシア君が聞いた。
「いいや。これ以上のハイペースは駄目だ。ペースは一定が基本だ。こっちが疲れ切って救いに行ったら、ただの迷惑だからな。体力は保ちつつが救助の鉄則だ」
「そうなんだ」
参考になるわ。
ナオと友達になってよかった。
ゲームでもなっておけばよかったよ。
そういえば、この子は西火の楽山のメンバーなんだもんな。
あそことは協力したい所だしね。
リミットタウンの領主としてね。
「それじゃ進む。休憩もこのくらいでいいだろ。レイン。次も行けるか?」
「大丈夫。余裕はあるよ」
「それじゃ、いくぜ」
この速度を保てているのは、レインのアシッドレインのおかげだ。
彼女の魔法が強力だからこそ、モンスターが出てきても、歩みを止めずに先に進めている。
◇
階層突破を繰り返して8階層目。
ナオが止まる。
「音がある! 戦闘音だ」
「ほんと?」
ガラシア君が聞いた。こういう時に一番に聞いてくれるので、誰よりも心配してくれるいい子なのだ。
「もしかしたらだ。期待はしないが・・・・ガラタン。今日って他に人は入ってないんだよな」
「うん。ダンジョン見学の時は、二、三年生は進入禁止になってるよ」
「なら、可能性は高いな」
今は一年生だけが、ダンジョン内にいる。
と思ってるのが皆だが、ここでオレは気付いた。
そういえば、シャオリンは?
今、ダンジョンに入ってるんだよな。
学年主任の先生と一緒に先に入ってるとかでさ。
どうなってんだ?
不意に思ったことに囚われないように、オレは思考加速で一瞬だけ考えていた。
「よし。音の方に急ぐぞ。あーしが先に進む。いいな」
「「「うん」」」
四人で行動を開始した。
◇
走り続けると、音が近づいているのが分かる。
金属音がするから武器での攻防の音だ。
だから・・・。
「マリアンナじゃねえ?」
ナオも同じ事に気付いていた。
彼女の武器は基本ステッキだったはず。
魔法を使用せず、物理をするとしたら打撃音だ。
「誰だ。この先にいるのはよ」
警戒を怠らずにオレたちは進んでいった。




