↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
リミットタウン 限界の町と瀬戸際の君  作者: 咲良喜玖
聖女の始まり

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
43/46

第6話 見えない部分がある

 天才を見つけた日の晩御飯。

 たまたまだけど、いつもの面子で食事が出来た。

 

 「へえ。そんなことがあったんだ。で、誰だったの?」


 レインが聞いて来た。


 「わかんない。逃げられたからね」

 

 オレが答えると。


 「ハハハ。それってブラタンが怖かったんじゃねえのか。眉間にしわでも寄ってたんだじゃねえの」

 

 ナオが冗談めいて話しかけてきた。


 「かもね」


 たしかに、ジッと見てたから、怖い顔だったかもしれない。


 「自立式の魔法・・・・・まさか、あの子の事でしょうか」

  

 マリアンナの頭の中で、誰かひとり思い浮かんだらしい。

 

 「まさかって。知り合い?」

 「いいえ、こちらとしたらその子かなって思っただけで。ブラインさんが、お相手のお名前を知りませんから、私が確証なんて持てませんよ」


 そりゃそうだわ。

 それはオレが悪い。


 「まあそうだよな。でも誰が思い浮かんだの?」

 「はい」


 マリアンナが、豆腐ハンバーグタワーを上から食べ始めた。

 大食漢だよな。やっぱりさ。ヘルシーなものを好むけど・・・。


 「私のクラスメイトのクレアさんではないでしょうか」

 「クレア?」

 「はい。クレア・ミカヅキさんです」

 「ミカヅキ!」


 まさか、先生の妹?


 「ミカヅキって・・・マリアンナさん。それって先生の妹さんですか」


 ガラシア君が聞いてくれた。


 「ああ。そういや、あーしらの担任。ミカヅキって名だったな」


 ガラシア君が言ってくれたおかげで、ナオが先生の名を思い出した。

 

 「そうなんですか。私はそこはわからないのですが。でも彼女は自立型の魔法を操ります。私の隣の席の子なのですが。いつもですけど、何にも持ちません。ペンも持たないのです」

 「ペンを持たない?」

 「はい。彼女は独特な子で、教室の黒板を映像として見たらすぐに魔法を唱えます。そこから見たものを一気にノートに書き記すんです。念写みたいに書き写すんです」

 

 物凄い量のご飯を食べ続けるノアが急に話しだした。


 「それは珍しい人だな。自分で何もせずにやる事をやる・・・それは確か。姫様。王宮にもそんな人がいますね」


 パスタを巻いていた手を止めてレインが答える。


 「うん。いる。私の師匠だ」


 え、トリスってそういう人なのか。

 オレそれ知らねえよ。そういう描写がないからさ。


 「姫様、つまりその子は・・・」


 言葉を止めたノアが言いたい事が分かった。

 つまりその子は、この国の団長と同じ領域の天才児だと言う事だ。


 「生活魔法で動かしていたんだけどさ。トリス団長って生活魔法を使えたんだっけ?」


 オレが普通に疑問を聞いたら、レインが答えてくれた。


 「うん。でも師匠は毒魔法の使い手だよ。だけど、生活魔法って微細な魔力コントロールがあれば誰でも出来るんだ。だからね。意外と生活魔法を覚えている人が戦闘系に行くと大活躍するって話もあるよ」


 なるほど。微細なコントロールが必要な生活魔法だからこそ、その繊細さを別の魔法に活かすって事か。


 「自立式の魔法の組み立ては、感覚じゃないと駄目なんだよ。命令を一個ずつ丁寧に詰め込むと脳がパンクして魔法が上手く発動しないんだって。繊細なコントロールが必要なのに、命令は大雑把じゃないと駄目なんだ。自立式って」


 脳の負担を軽くしないと発動できないってわけか。

 

 「それでボクの師匠は、自立式を3個まで同時に出来る。真剣にそれだけの事を考えたらもっと出来るんだろうけど、それ以上だと疲れるからメンドイって言ってやらないんだけど。ブライン君が言ってた子。凄いよね。10個なんでしょ」

 「うん。それくらいを同時に編んでいた。それも空中に持っていって、彼女が離れても編み続けていたよ」


 だとすると、トリス以上の魔力コントロールを持っている子となるな。

 

 「それだとやっぱり、ブラインさんが見たのはクレアさんの可能性がありますね」


 マリアンナがバケツ一杯の杏仁豆腐を食べている。

 食堂のどこに置いてあったんだ。その食べもの!


 「クレアさんは、椅子を引くのも。カバンから道具を出すのもしまうのも。自動です。それにそれらを一度に同時に動かすこともできますから。たぶんクレアさんだと思います」


 それは、感覚派の超天才児って事だな。


 「そうなんだ」


 オレが納得すると、ナオが聞いて来た。

 

 「ブラタン。それがどうしたんだ? そいつが気になるのか」

 「え。いや、気になるっていうかね。編み物が得意って事は服飾が得意なのかなって思ったんだ。ほら、前にレインが言ってたでしょ」

 「え。ボク?」


 パスタを一口食べたレインがキョトンした顔をした。

 

 「うん。君が杖だけじゃなくて服も欲しいって言ってたからさ。リミットタウンに服屋さんでも作ろうかなって思ったんだよ」

 「そうなんだ。ごめんね。ボクのが我儘みたいになっちゃったかな」

 「いいや。そうじゃないんだ。君の言葉を参考に、町に職人を呼ぼうと思っただけさ」

 「そっか。じゃあ迷惑じゃないね」

 「そうそう」


 意外と気にするタイプの人なのか。

 お気楽そうだけど、気を遣うタイプなんだな。


 「それで、どうせだったら腕の良い人が良いかなってなったら、そこにとんでもない人がいたって話さ」

 「そうですか。それならば、一度遊びに来てください」

 

 マリアンナがご馳走様でしたと手を合わせた。

 とんでもない量を完食している。

 

 「ん。君の教室にって事?」

 「そうです。いつもそちらにお邪魔しているので、こちらに来てください」

 「あ、確かにそれもありか」


 二日に一回の割合で、マリアンナは1ーAに来る。

 ついでにその割合で、ノアも来る。

 だから同じクラスみたいな感覚に陥る事もあるのだ。


 「ええ。ぜひ来てください」

 「そうしようか」


 オレが答えた後に、いつもの面子も答えた。


 「ボク、いくよ」

 「おらも」

 「あーしはいいや。寝る」


 三者三葉の答えだった。


 ◇


 次の日。

 お昼休憩中の食事後。

 1-Cの教室にて。


 「皆さん、こちらです」


 マリアンナが教室の中に入れてくれた。

 周りの意識がこちらに集中しているのが分かる。皆がちらちらこっちを見ている。


 「ボク。ここ」


 マリアンナの前の席が空いていたから、そこに彼女が座った。


 「オレは立つよ」

 「おらも」


 二人でマリアンナの隣に立った。


 「これでお話しできますね」

 「「「うん」」」

 「初めてですよ。会話になるの」

 「ん? どういう事。いつもオレたちの教室でしてるだろ」


 オレが聞くと彼女が小声でオレたちに言ってきた。


 「はい。こちらの教室内じゃ、まともな会話をした事ないんです」

 「「・・・」」

 

 そいつは悲し過ぎだろ。

 オレとガラシア君は何も言えず。


 「そうなんだ。でも興味はありそうだよ」


 レインはキョロキョロしだした。

 周りの目がこちらをチラチラ見ている事を確認している。


 「ええ。興味までなんです。私の事は腫物みたいで」


 触れられないってわけね。

 聖女様って知ってるしな。

 まあでもまだなんだよ。候補ではあるんだけどさ。

 学生からしたら聖女様に見えるもんな。


 「それでこの子か」


 オレたちが集まっても、彼女は席に着いたままでいる。

 そばかすがチャーミングな茶色の髪の毛の女の子。

 ジッとしているのは考え事をしているらしい。黒板を見つめて、目が離れない。


 「・・・ど。どうなってるんだろう・・・き、気になる」


 これはまさか。

 この子、またあの特別教室で編み物をしているのか?

 遠隔魔法で縫っている可能性があるな。

 よそ見もせずに集中してる。

 

 「ねえ。君」

 「・・・・こ、これかな・・・」

 「ねえ。君。クレアさんって言うのかい」

 「・・・は、はい・・・クレアです」


 目がこっちを向いてくれないが、答えてはくれた。

 一歩前進だ。


 「すまない。握手いいかい」

 「・・え、握手?・・・ど。どうぞ」


 許可をもらって握手した。

 戦闘系じゃないのなら、ステータスはそんなに強くないはず。

 調べる!



――――――――――――――――――


 クレア・ミカヅキ。女性15歳。職業魔法使い。


 HP    21

 MP   532

 攻撃力    2

 防御力    7

 魔攻    52

 魔防     7

 速度    81

 精神力  288

 知力   199

 運     84


 スキル 天糸(てんし) 

     ――――

     ――――

     織物Ⅹ

     素材消費軽減Ⅹ


――――――――――――――――――

 

 ん? 見えない箇所がある。

 今までになかった事だ。

 それにこれは・・・天糸ってなんだ。

 待てよ。オレって、こっち系の能力には詳しくないんだ。

 鍛冶ならまだ分かるんだけど、服なんて気にした事が無かったからな。

 敵の攻撃なんて全部パターンを覚えて躱せばいいと思ってたから、防具系に気を付けてなかったんだよ。

 

 さらに調べるでいけるか?

 辞書の機能があったはず。


 天糸(てんし)


 糸を操る事に長けている。

 魔法で自動的に操る事も可能。糸の強化・弱化。双方の変化をさせる事が可能。

 これにより柔らかく編んだり、硬く編んだりできる。

 伸縮性を生み出して、防具の強化に役立たせる事も出来る。



 お。調べる事が出来た。

 えっとつまりだ。この能力で彼女は自動化してるんだ。 

 感覚的にってのは、スキルの事だったんだ。

 なるほど、ここの世界の人はスキルに詳しくないと説明できないもんな。パッシブ系は特に。

 ナオが珍しいんだよ。特性を完璧に理解しているのがさ。

 


 「君凄いな。今もここで編んでるわけか」

 「・・・う。うん・・・これをこうしてなはず・・・」


 集中してる。まったく目がこっちを向いてくれない。

 これが先生の言っていた変人か。


 「ブラインさん。彼女でしたか」

 「ああ。この子だ。一度に操ってるっぽい。ちょっと行ってくる」

 「あ。私も行きます」


 とマリアンナがオレに付いてくると、ガラシア君もレインもついてきた。


 ◇


 特別教室の扉を開けると、あらビックリの光景が広がる。


 「やっぱり。まだ編んでるんだ」


 空中にある編み物が6つ、もしかしたら昨日で4つは編み終えたのかもしれない。

 数が減っていた。


 「す。凄いです。これを私のいる・・・離れた教室から操っているんですね」


 マリアンナが編み物を見つめて言った。


 「おら、初めて自立式の魔法を見た。鍛冶じゃありえないね」


 そうだ。鍛冶は人の手が当たり前だもんな。

 工程をスキルで短縮できるけど、魔法ではできないものだもんな。


 「これ。ボクの師匠と同じだ。遠くのものを運ばせてる時の魔法に似てる」


 珍しく真顔のレインは、師トリスに似た魔法だと言い切った。

 ということは、あの子は超天才と同じ魔法感覚を持ってる子なんだ。


 「防具としての服じゃなさそうですね。可愛らしいデザインです」


 マリアンナが自分のそばのセーターを見て言った。


 「そうかな。こっちは防具じゃないかな。ボク、これに似たのを魔法師団で見たことがある。ローブの下地に似てる気がするんだ」

 「ローブですか」


 レインが指差した白の布地。それをマリアンナが見る。


 「・・・教会?」

 「マリアンナ、教会ってなんだい?」


 オレが聞くと彼女は振り向いてくれて、丁寧に説明してくれる。


 「あ。はい。これは聖教会の下着に見えるのです」

 「これが下着!?」

 「はい。皆がこれを纏い、身を清めるのですよ。聖なる力に近づくには、聖なるものを纏うべきだとの教えがあります。聖教会にはですね」

 「へえ」

 「それで今も私着ていますよ。ほら、似ていませんか」

 

 と胸元のものを見せようとしたので、レインが慌てて止めに入る。


 「待って。待て待て。待って! どうして男の人に見せるの。危ないよ」

 「え。何がですか?」

 「肌を見せちゃ駄目!」

 「別に裸を見せるわけでは・・・」

 「それでもだーめ!」

 「そうなんですか」


 明るいレインよりも、真面目なマリアンナの方がぶっ飛んでる。


 「駄目だよね。ブライン君」

 「え・・・それはそうだね」


 本当は惜しいけど、倫理観的にはそうでしょう。うんうん。本当は惜しいけど・・・本当はね。


 「ねえブライン君。今ちょっと惜しいって思ったでしょ」

 「え? いやいやいや。そ、そんなことはないよ」

 「ほんと~」


 疑いの目を向けられてしまった。咄嗟に目を逸らして別のものを見る。

 

 「じゃ、じゃあこっちはどうかな。これなんだろうね」


 誤魔化して別の服を見たオレだった。


 

 

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。