第4話 探そう職人 新たなリミットタウンを生み出すために
解決した後、喫茶店にて。
「若様となられてからお会いするのも、一度くらいですかね」
「はい。ありがとうございます。モリーさん」
そこはオレにはよく分からない。
ゲームの描写がないから、返事だけは丁寧にしよう。
「バーランド殿から連絡が来た時は驚きましたよ」
「驚かせてすみません。あなたの力を借りたくて、急遽お願いしてしまいました」
「いえいえ。私らにとってクロノ様は英雄。そのお孫様のブライン様も同等の存在でありますから、協力も当然であります」
「はい。ありがとうございます」
ここら辺は、過去編というよりも、文章で記録が残ってたはず。
クロノって交友関係が分厚い人で、色んな人と友達になりやすい人らしく、出会ったが最後。全てが友人となるとか揶揄されるくらいに人懐っこい人だったらしい。
たしかそれが分かるのが、彼が書いた日記じゃなくて、親友ジャンの日記に書いてあった気がした。
ロッティ反転ルートだけで読める奴だ。
秘密の蔵に入れると読める日記であったな。たしかさ。
テリーとの出会いは、ロア王国の南東ハッサンであると書いてあったはず。
港町ハッサンに、テリーの商船が帰港する所で、波に飲まれ船が破壊されて、遭難しかけた際に、彼が救助へ向かった事で交友が始まった。
恩を感じたテリーがランド商会に直談判して、街専属の商売人になってくれたわけだ。
クロノが死んでからの付き合いは薄くなったと言われているけど、今のリミットタウンに残ってくれている商売人も、ランド商会の人だったはず。
名前はたしかハウゼンだったかな。
「ブライン様。私はお役に立てましたかね」
「立てたどころじゃありませんよ。恩人です。助かりました」
「そうですか。それならばよかった。我が父が返せなかった恩を少しでも返せそうですね」
サンダーランド家として、まだまだ恩を返すぞ。
ってニュアンスだよな。
「ガランドー殿も良かったですね。あなたも私共と同じようにレッドピック家に救われましたな」
「え。まあ。そうだな。正直助かった。どうしようもないと思ってたからな」
「あなたも忠誠を誓うと良いですよ」
「え?」
「彼に従う。そしてリミットタウンを盛り上げるとね」
「あ、はぁ」
「きっと良い方向に進むはず。我がランド商会が商会として一段上に上がったように。あなたも鍛冶師として名声を得られる可能性があるでしょう」
「そ。そうなるのかい? わいが?」
「ええ。当然の事です。あなたが良き物を作られた際には、我がランド商会が売り込んでみせましょう。それで必ず名声を得られるはずです」
「・・・・名声か。あんまり興味がないわな」
あなたなら、そう思うだろうね。名声が欲しいならもっとうまい具合に商売してるだろうし。
この人にとって全然いらねえんだよね。名声って奴がさ。
だったらあんな変な装備を作らねえもんな。もっと良いものを作るよ。
「ガランドーさんは、興味ないっすよね」
「ん。あんた分かってるのか」
「ええ。作るのが好きな人でしょ。あなたはね」
「そうなんだ。新作を作りたい! もっと面白いものをだ」
ほら生粋の職人なんだ。金や名誉も興味がないくらいにね。
「それでいいんですよ。申し訳ないモリーさん。変なものが出来上がるかも知れませんが、その時の売り込み。お願いできますか?」
「そ、そうですか? 変なものですか」
「ええ。それで、商品が完成したらですけど。獣王国。和大陸。これら辺りに売り込んでもらえます」
「リアリディ大陸にではなく?」
「ええ。他の大陸がいいです」
オレはこれで外貨を稼ぐ。
それにダイナガルトにもロアにも、この人の装備は出したくないからね。
出来たら別大陸から資金をもらう。
「その時の売り上げの三割持っていていいです」
「え? そ、そんなにですか」
「ええ。売れるんだったら売り切って儲けちゃってください」
「わかりました。お任せください」
ガランドーの工房は、リミットタウンの名物にしようとは思うけど、稼ぐ時の主軸にはしない。
装備関連では素材の入荷も難しいし、価格の変動もしやすいから、安定的に収入を得られないからね。
「任せましたよ」
モリーさんは胸を叩いてお任せと言って、ここから去っていた。
次の為の準備をするらしい。
忙しない人なんで、これはしょうがない。
たまたまここの近くにいてくれたから、今回は会えただけだった。
ランド商会は世界を股に掛ける大商会なので、もしかしたら別大陸に移動する所だったかもしれない。
「ブライン君。ほ、本当にありがとう。おら、学校に行けるんだね」
「うん。そう。オレと一緒にね」
「やった。やった! ありがとう」
「うんうん。よかったぁ」
ガラシア君と通える嬉しさよりも、正直に言うと今は安堵が強い。
マシュー撃破の末の出来事だから、余計にそう感じる。
「すまんな。息子の友達」
「あの、ブラインです」
「そうか。ブラインだったか・・・いや、領主殿か」
「そういえば、来てくれるんですもんね」
「もちろんだ。わいもそっちにいこう」
「よし。じゃあ、お手紙を書いておきますんで、リミットタウンのバーランドさん。マリンさんに会ってください。工房の準備はもう少し先となると思いますが、必ず作りますんで。ご安心を」
「ん。何から何まですまんな」
「大丈夫ですよ。これからめちゃくちゃ作ってもらいますから」
「ああ。まかせろ」
こうして、ガランドーを手に入れた。
おそらくだけど、この人がこの世界の最強鍛冶師だと思う。
リーヴァのスキルを遥かに凌いでいるし、まだ見ぬ人がいるかもしれないけど、オレが見かけた鍛冶師の中では最高の人だ。
ちょっと変わってるけど、まあ大丈夫でしょう。
リミットタウンの装備を一新してくれる可能性がある。それも良い方向にね。
◇
そして15日目。
怒涛の展開が続きまくったオレは日常に戻った。
朝の授業前。
お隣の席のナオが話しかけてきた。
「ガラタンの件。解決か?」
「うん。した」
「そうか。さすがだな。ブラタン」
「まあ、何とかなったってのが結果だけどね」
「それでもすげえぞ。リファングと喧嘩したんだろ」
「喧嘩?・・んんん、あれは喧嘩か? ニュアンスがちょい違うな、脅しかな」
「は?」
「喧嘩っていうよりかは、脅した」
「うそだろ。マジか」
大手に喧嘩を吹っ掛けたんじゃなくて、脅したのかよ。
若干ドン引きしているナオだった。
「それはさすがだね。ブライン君」
レインがガラシア君の席に座ってこっちを見ている。
イスの背もたれの方に体を預けている形だ。
「お。レイン。聞いてたの」
「うん」
「いや、でもさ。これでガッチャンも楽しくここに通えるよね」
「そうだね。ガランドーさんが働くんだもんね」
「まあね。まだ工房がないけどね」
「あのさ。それさ」
「うん?」
レインがオレの机の上に殴り書きのメモを置いた。
「これどう? 承諾してくれる」
「どれどれ」
文字を読む。
口で伝えて来ないのは、何か聞かれたらまずいのか。
『工房の為の資材搬入の許可をください』
と書いてあった。
「どういう事?」
オレが聞いた。
「ボクも珍しい装備がほしい」
「ん?」
話が繋がらない。
「だから、ボクも珍しいのが欲しいんだ。君のそれみたいな」
彼女は、オレの春の目覚めを指差した。
「これ?」
「うん」
つまりだ。えっと、珍しい装備が今すぐ欲しいから、工房を作るための資材をリミットタウンに運んでもいいかい。って事?
「ええっと。それって君のポケットマネー?」
「うん! 安心して。国家は関係ないよ。エヘヘヘ」
レインの個人でのお金で、援助するって言ってんだな。
マジか!
願ってもない事だが、それって良いのかな。
友人にお金を借りるみたいな事だよな。
「借金じゃないよ。ボクの我儘!」
貸付じゃないって事か。
投資だけど見返りは装備で、お金は返さなくて良いって事か。
「そっか。じゃあ、お願いしようかな。いいかな」
「ほんと。いいの」
「むしろ悪い気がするのはこっちなんだけど。いいのかな?」
「いいよ。ボクも装備欲しいし。特にさ、杖か布が欲しい。身軽な奴」
「そっか。それ聞いてみるね」
「お願い」
ガランドーって鍛冶師だけど、そっちの装備も作れるもんなのだろうか。
杖はいけそうだけど、待てよ。
身軽な奴って事は、裁縫がメインになるだろ。
それって、鍛冶師の仕事じゃないよな。部類的には服だよな。
「わかった。でも布は難しいかもね。鍛冶師だし」
「あ、そっか。んんん。そうだよね」
「いや、オレ探してみるよ」
鍛冶の工房を作るんだから、職人系の人を集めたっていいよな。
町の中に作った事が無かったけど職人街みたいなのを作っても良さそうだ。
時間が出来たら探してみよう。




