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リミットタウン 限界の町と瀬戸際の君  作者: 咲良喜玖
聖女の始まり

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第2話 勝負へ

 マリンさんと一緒にリミットタウンに帰還したのち。

 速攻で学校に戻る。

 ちょうどお昼で、皆は昼食時間だった。


 戻って早々だが、担任の先生の呼び出しを受ける。


 「ブライン君。急にお休みとは何ですか」

 「申し訳ないです。リミットタウンに緊急事態が起きまして」

 「あなたの領地で?」

 「はい」


 嘘じゃない。

 あれに対応してなければ、リミットタウンは消えてると思う。

 

 「どんな?」

 「ええ。恐ろしいモンスターが森に誕生してまして。それの戦いで、自分が出向かないといけませんでした」

 「恐ろしいモンスター?」

 「ええ。非業のマシューです」

 「は?」

 「あれが復活していたらしく、エルフたちと協力して撃破しました」

 「・・・え!?」


 先生が前のめりになった。体よりも首が前に出てる。


 「嘘じゃないですよ。ほら。これ」


 アイテムボックスからオレは非業のマシューの戦利品を一部取り出した。

 マシューの尾。

 包まった小さな尾がマシューの尾だ。

 あれだけの巨体なのに、尾は小さくなって戦利品となる。

 非売品扱いになる為に、市場には回らない。

 Gの価値もないらしい。

 と言うか価値をつけられないって聞いた事がある。

 でもこれを筆にすると、魔力伝導率が良いと言われている。

 魔導書を作成する事の出来る筆になるらしい。

 一流の錬金術師に作ってもらうと、さらに効率化するみたいだ。


 「・・・ど、どどおおどおどおおど・・ほほ本物ですね・・これは、マシューの尾です。筆になる奴ですよね?」

 「そうですよね」


 1ーAの先生は、エリファ・ミカヅキと言って、戦闘系の先生ではなく、生活魔法の先生。

 だから、こういった道具関係に詳しい。


 「す、凄い。本当に倒してきたんですね。え、エルフは、戦利品をもらわなかったんですか」

 「はい。なんか、トドメを刺したのがオレだから、オレで良いってなりまして。この他にもいくつかあったんですけど、全部オレのものになっちゃってます」


 そうなんだ。エルフたちは、全部オレに渡してきたんだよ。

 倒したのはオレだって言ってね。

 でも、それはさすがにないのよ。

 あれは総力戦だった。

 誰一人欠けても勝てない戦いだったんだ。

 エルフたちに。マリンさん。そしてリスベル。

 彼女の覚醒がなければ、確実にオレは死んでいた。

 結構がけっぷちにいたんだよね。オレってさ。

 一歩間違えていたら、僅か2ターン目で死んでるのさ。

 オレ史上最速で死んだわ。

 新記録達成だったよ。はははは。って笑ってる場合じゃないや。


 「なんともまあ・・・そ。そうですね。今回は不問にしますよ。領地が危ないのであれば、サボりとは違うようですしね」

 「はい」


 この学校にはこの対応がある。

 領主権限という制度だ。

 例えば国家に危機が訪れた時には、王族の人間は休学又はお休みが勝手に出来る制度。

 貴族も同じ要領で、自分の領地に異変や機器が訪れた時に、制度を利用して休める。

 これは後からの申請も可能。

 急遽である事が多いから、事後申請が基準となっている。


 「では、また普段通りに学校に通うと言う事ですよね。そうですよね。ブライン君」

 「はい先生。今後もお願いします」

 「はい。では、事情を聞いたので、教室に戻っても良いですよ」

 「ありがとうございました」


 先生はオレが職員室から出るまでの間、手を振り続けてくれた。

 かなり穏やかな先生である。


 

 ◇


 教室に戻ると、彼らもいた。

 

 「ブライン君」

 「ガッチャン。親父さんは? 逃げてないよね」

 「う、うん。いるよ。明日に学校に来てくれるって」

 「よし。明日が勝負だ。いいね。ガッチャンも勝負だからね」

 「え。よ、用意が出来たの?」

 「まだ。でも物は用意できた。だから口で勝負だ」


 明日は交渉。交渉戦が開始されるんだ。

 リミットタウンにはその戦いがある。


 「おいブラタン。まじで、商会と戦う気か」

 「うん」

 「いいのかよ。あれに勝ってもよ。目をつけられたら」

 「いい。オレは、ガッチャンの親父さんに賭ける」


 君の心配は凄く分かる。

 リーヴァのリファング商会と敵対した場合。

 今後の装備類一式はあそこで揃えられないって事だ。

 特に汎用性のあるものを大量に得る事が不可能となるのさ。


 それでも、オレはその権利を捨てる。

 ガッチャンの親父さんの鍛冶師としての腕に賭ける!

 良質な武装で、それらの上を行くのさ。

 耐久値だって違うんだぞ。ガッチャンの親父さんが作れば長持ちは確実だ。

 だったら、これはお金の節約にも繋がるのさ。


 「ブライン君・・いいのかな。君に迷惑が・・・」

 「いい。そこは気にしなくて良いって前にも言ったよね」

 「うん。でも」

 「大丈夫だ。オレは親父さんにめっちゃ働いてもらうから心配しないで」

 「う。うん。わかったよ。心配しない」

 

 リミットタウン強化計画の柱の一つにする。

 ランパートの工房を中心の一つに据えるんだ。

 こっちで用意した戦士たちの各々の武具の強化が成されれば、皆も死なないで済む可能性が高まるはずだ。

 生き残る率は高めないとだめだ。

 リミットタウンの防衛時の生存率を100%に近づけてみせる。

 とにかく生きてもらうためにも、彼の力をもらおう。

 今まではリファングに頼っていたんだ。

 でもリファングでも守り切れない時は多々あった。

 だったら、リミットタウンで作ってやるわ。

 最高の武器と防具をさ。


 「ふふふ。いいの。ブライン君?」

 「ん?」


 笑いを堪えられない。レインは口元を抑えて聞いて来た。


 「王国でも、リファングを重宝してるよ」

 「それを聞くって事は、君はオレの動きに反対って事か」

 「ううん。ボクはね。面白いと思ってる。大手を蹴るんだね」

 「ああ。蹴る」

 「そっか。それって大丈夫?」

 「うん。心配せずに君も見ててくれ。オレが勝つ」

 「そうだね。ブライン君なら面白い結果を作りそうだ」


 そう。オレが勝つ。

 どこが何を言おうとも、オレは絶対に守ると決めているからな。

 リミットタウン。エルフ。そしてオレが大事にする仲間をね。


 「明日が勝負だ。そのために今日は早めに帰るね」


 と言ってオレは休み時間を終えた。

 授業が終わり、色々と準備をする。交渉準備である。

 そして、運命の次の日へ。


 ◇


 放課後。

 ガッチャンと二人で校門の前で待ったら、予定通りに来てくれた。


 「おい。事が片付いたら、本当にワイを雇うのか」


 親父さんが聞いて来た。


 「ええ。雇います。ただし。めちゃくちゃ作ってもらいますよ。いいすか」

 「注文はどんなのだ」

 「自由です。ジャンルだけ指定して、あなたには自由に作ってもらいます」

 「え?」

 「当り前でしょ。あなたは誰かに縛られるような鍛冶師じゃない。自由に最高のものを作ってもらいましょう。あなたの素晴らしい作品は、すんごい商人に売ってもらいますから」

 「は、は? 凄い商人?」

 「ええ。そこらへんは気にしないでください。オレに任せて」


 リミットタウンの領主のオレにね。


 「いきますよ。ファングの家に乗り込みます」


 借金を返せと言われた場所にオレたちは向かって行った。



 ◇


 店に行くと。ガラの悪い人間に出てきた。彼はすぐにガランドーの顔を見た。

 舌打ちと悪態の二重苦だ。


 「お? ちっ。屑の鍛冶師が来たぞ。金を返すつもりねえ屑だ」

 

 ガランドーが答えに困るので、オレが出て行く。


 「金は返す。返す先の人間に会いたい。あんたじゃないだろ」

 「あ?! なんだこのガキは」

 「責任者を出せ。ブサイク」


 オレは挑発満載で言い返した。

 腹立ったので、これくらいがちょうどいい。


 「てめえ。死にてえようだな」

 「殺せるなら殺してみろ。お前程度じゃオレは殺せねえけどな」

 「なんだと。このガキが」


 胸ぐらを掴まれた。拳を引いたので、パンチをしてくると予測。そこで。


 「ほい」


 敵のパンチよりも先にオレの頭突きを喰らわせる。

 思考加速の力を使って、肉体加速の影響下にあるオレの方が速く動ける。

 人間程度であれば、この差はデカい。

 あのマシューのような化け物には通用しない戦法だ。

 ほんの僅かな差くらいしかない対人戦では、この肉体加速戦法が通用するよな。

 これリーチの差のおかげかな。

 手を伸ばせば触れられる範囲の方がより恩恵があるわ。


 「ぐあ。く、クソガキが」

 「やめなさい。バロア。工房内ですよ」


 奥から人が出て来た。落ち着いた雰囲気の男性がこちらを見る。


 「あ。リーヴァ様?!」

 「下がりなさい。私はそちらの男性らを招き入れますので・・・どうぞこちらに」


 落ち着いた男の名はリーヴァ。

 ロア王国では蹄王と呼ばれる男だ。

 ほとんどを牛耳っている。


 「く。貴様ら。運が良かったな」

 

 と負け惜しみを言ってきたので。


 「そっちがな」


 と言い返しておいた。

 変な所で負けるのは嫌いなんでね。言い返しておく。


 「どうぞ。こちらですよ。ガランドー殿」


 この時の目が厭らしい。やはりこの男には裏があるな。

 実際に対面すると分かる。

 立ち絵では見抜けない。何かがある気がする。

 

 奥の部屋は豪華絢爛。

 煌びやかな装飾品ばかりが壁に並んでいる。

 自己顕示欲が前面に出た部屋だ。

 

 豪勢な部屋の中心にあるソファーにオレたちは座った。 

 そこからすぐに始まった。

 

 「それで、当然借金の話ですよね。子供まで連れてくるとは、覚悟が決まったようですね。ガランドー」


 これが開始の合図であった。

 ガランドー攻防戦だ。


 

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